伊藤伸二の吃音(どもり)相談室

「どもり」の語り部・伊藤伸二(日本吃音臨床研究会代表)が、吃音(どもり)について語ります。

荒神山自然の家

第32回 吃音親子サマーキャンプ開催まで、1週間となりました

 第32回吃音親子サマーキャンプが1週間後に近づいてきました。今年も、関西地方を中心に、遠くは沖縄、鹿児島などの九州地方から、東京、神奈川、埼玉など関東地方から、山口などの中国地方から、参加申し込みが届いています。
 昨年は、吃音親子サマーキャンプの華であり、大事にしている演劇の稽古と上演が前年までの形ではできませんでした。当初は大きな声を出し、歌い、相手に伝わることばを吟味していくプログラムは抜いていたのですが、やはり、少しでも演劇をしたいと急遽小さな劇に取り組みました。みんな、大喜びでした。誰よりもスタッフが大喜びで張り切るのが、僕たちのキャンプの特徴です。
 今年は、全面的にコロナ前の形に戻しての開催です。同年代のグループに分かれての吃音についての話し合い、自分の声やことばに向き合うための演劇の練習と上演、親の学習会など、久しぶりのフルバージョン開催に向け、わくわくしながら準備をしています。
 演劇のためのスタッフの事前レッスンは、7月15・16日、大阪市内のお寺で行いました。そのレッスンに参加したスタッフは、そのときの映像を見ながら、それぞれ自主練習をしています。事情があり、今回、サマーキャンプに参加できない、サマーキャンプ常連スタッフは、演劇の小道具作りを申し出てくれて、サマーキャンプのあの場を想像しながら、せっせと小道具作りに励んでくれています。会場の荒神山自然の家に郵送してくれることになっています。それぞれが、自分の持ち味を出して、サマーキャンプにかかわってくれています。このようなスタッフのおかげで、サマーキャンプは、32年間も続いてきました。
 今年、初めて、事前レッスンに参加したスタッフから、手紙がきました。長くスタッフとして参加してくれている関東地方のことばの教室の担当者です。

 
念願叶って、事前レッスンに参加でき、幸せな2日間でした。帰り際に、坂本さんから「昨日より元気そうだね」と声をかけられました。充実した時間を過ごした満足感が表情や身体にあらわれていたのでしょうね。
 レッスンが始まって、身体を動かしたり声を出したりしたとき、身体は動かないし、声も出ないし、続かないしで、自分がこんなにも固まっていたのだと気づきました。でも、劇の練習を通して、楽しさが増してきて、事前レッスンに参加できてよかった、うれしいという気持ちが広がりました。事前レッスンの場は、サマーキャンプ当日と同じように、ぬくもりが感じられて、いいなと改めて思いました。すてきな機会を設けていただきました。サマーキャンプ本番も楽しみにしています。


 今年の吃音親子サマーキャンプは、初めて参加される方が多いです。昨年、初めて参加したという人も合わせると、全体の7、8割くらいでしょうか。フレッシュなキャンプになりそうです。これまでは、リピーターが多くいて、その中で初参加の方が自然と混じり合って、いつの間にかその人たちがリピーターになっていって…、そうして、サマーキャンプの伝統が受け継がれてきました。コロナ禍のため、空白の3、4年間ができたことがこんな所にも影響しているようです。
 サマーキャンプのもつ伝統は、それを目標としたわけではありませんが、いつのまにか熟成されていったように思います。話し合いのとき、ひとりひとりの語りにしっかり耳を傾けること、話す人は、自分のことばで自分の思いを伝えること、ただ共感するだけでなく、関心をもって聞き、質問してその人の物語の世界を広げていくこと、指示・命令のことばはできるだけ最小限にして、それぞれが時間を守って動くこと、強制はしないが、自主的に自分の課題に取り組むこと、精一杯表現すること、それらのことが自然にできていたように思います。鰻の名店が、伝統のタレをつぎたし、つぎたし、伝統の味を守ってきたようにして、吃音親子サマーキャンプは32年の年月を積み重ねてきたました。小学1年から高校卒業まで連続して参加していた、リピーターが全員卒業し、今年は、ベテランのいない初めてのキャンプになります。吃音親子サマーキャンプの文化を、一から作っていく再スタートの年になりそうです。その新鮮さを楽しみ、ドキドキを味わいながら、サマーキャンプの2泊3日を過ごしたいと思います。また、報告します。このブログを読んでくださるみなさんと、素敵な時間を共有できることを願って…。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2023/08/11

吃音親子サマーキャンプ、会場の荒神山自然の家で打ち合わせしてきました

サマキャンの写真  7% 今日は、吃音親子サマーキャンプの会場である彦根市荒神山自然の家に行ってきました。
 サマーキャンプ開催1ヶ月前に行う打ち合わせのためです。雨を心配していましたが、出発のときは曇りで、途中、小雨が降りましたが、無事、荒神山自然の家に到着しました。着くと、所長の西堀さんが「お待ちしていました」と、にこやかに出迎えてくださいました。西堀さんは所員としてお世話になり、何年か前から所長としてお世話になっています。また、吃音親子サマーキャンプのことや僕たちのことをよく知っていてくださる堀居さんも、今日はお休みとのことですが、所員としていてくださることがわかり、安心です。変わらぬ温かい出迎えを受け、ほっとしました。
 打ち合わせは、活動プログラムに沿って行いましたが、学校の林間学校と違って、人数の確定が難しく、今年も今の段階では、全然参加人数が読めません。開催2週間前には確定することになっています。
 打ち合わせを担当してくださった方が、「昨日は、雷がすごかったんですよ」とおっしゃっていました。雷といえば、10年くらい前のキャンプのとき、天気が急変して、荒神山へのウォークラリーの途中でものすごい雨が降ってきたことがありました。別プログラム参加で、自然の家に残っていた人が車を出し、山に登ったみんなを迎えに行ってもらったことがありました。今では、笑い話になりますが、あのときは、もしものことがあったら…と思うと、気が気ではありませんでした。
 荒神山自然の家で、吃音親子サマーキャンプを開催するのは、1998年、第9回目からでした。あれから、25年、所員のどなたよりも、僕たちの方が、自然の家を知っているというか、古くから使わせてもらっています。吃音親子サマーキャンプといえば、荒神山です。
 ここでは、僕たちは、「吃音さん」と呼ばれています。「吃音さん」と、吃音に「さん」をつけて呼んでくださるのも、荒神山自然の家だけです。
 吃音親子サマーキャンプにまつわるたくさんのエピソードがあります。いつか、そんな話も、このブログでできたらいいなあと思います。

 今年の吃音親子サマーキャンプは、下記の日程です。
 どもる大人と、ことばの教室担当者や言語聴覚士が協同で行う、吃音親子サマーキャンプ。吃音についての話し合いと、自分の声やことばに向き合う演劇の練習と上演、親の学習会が主なプログラムです。学童期、思春期に、しっかりと吃音に、自分に、向き合うことの大切さを思います。
 今週末は、合宿で、プログラムの柱のひとつである演劇の事前レッスンを行います。
 キャンプ当日稽古をして、最終日にみんなの前で上演しますが、そのために、スタッフが事前に合宿でレッスンをするのです。遠くから交通費を使って多くの人が合宿に参加してくれます。その事前レッスンの指導は、東京学芸大学大学院准教授の渡辺貴裕さんです。今年の劇は、渡辺さんが「森は生きている」を選んでくれました。竹内敏晴さんの作・演出の作品です。コロナのために、この合宿による事前レッスンは4年ぶり。それを楽しみに全国から仲間が集まってきます。いよいよ吃音の夏の本番、間近です。
 32回という歴史あるこのキャンプに、どうぞ、ご参加下さい。お待ちしています。

日程 2023年8月18・19・20日
会場 滋賀県 彦根市荒神山自然の家(最寄り駅 河瀬駅) 
参加費 17,000円(大人も子どもも同額)
 詳しくは、日本吃音臨床研究会のホームページをご覧ください。お電話で問い合わせていただいても構いません。
  TEL 072−820−8244
荒神山 写真 渡辺さん
日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2023/07/13

吃音親子サマーキャンプ、今年は実施の方向です

サマキャンの写真  7% 先日、吃音親子サマーキャンプの会場である、滋賀県彦根市の荒神山自然の家に打ち合わせのため、行ってきました。
 2年間の中止を経て、今年、吃音親子サマーキャンプの開催を決めたのは、5月のゴールデンウィークが明けて2週間くらいが過ぎてからでした。連休後の感染拡大が大きいものではなかったので、これならいけるのではないかと判断して、「お待たせしました!」とお知らせしたのです。
 心配が全くなかったわけではありませんが、今年開催できないと、これまで1年ごとに子どもたちの成長を見守ってきたことが崩れてしまうとの思いがありました。あのとき、小学6年生だった子どもたちは、今年、中学3年生になっています。
 開催を決めたものの、参加者がどれくらい集まるか、何よりスタッフが集まって下さるか、不安はつきませんでした。これまでと同じような人数の申し込みが届いているわけではありませんが、人数に関係なく、本当に必要として下さっていた人たちが集うことになり、きっといい時間になるだろうと思っていました。
 ところが、ここへ来ての感染急拡大。覚悟を鈍らせるような数字ですが、行動制限はしないとの方針に、それならば、最大限気をつけて、予定どおり開催したいと思っています。今後の状況により、まだ流動的ではありますが。

 3年ぶりか、と荒神山自然の家が近づくと、懐かしい思いがよみがえってきます。ここは、みんながバスに乗って到着するところ、車で来る人たちの駐車場、ラジオ体操をする広場、3年前と変わらない荒神山自然の家が出迎えてくれました。
 うれしかったのは、その日、自然の家を利用していた人たちの様子でした。チアガールの練習のための合宿だとのことで、小学校低学年から高学年までの女の子が70人くらい、参加していました。キラキラ光るポンポンを手に、音楽に合わせ、体を動かしています。リーダーも指導者も、マスクはしていますが、とても楽しそうな表情です。音楽に合わせて、声も出していました。

 自然の家の所員さんの話では、会場として何も制限はしていない、主催者側に任せているとのことでした。もちろん、検温、消毒などの基本的な感染対策はきちんととり、食堂の利用人数も80人までとして、その上で、僕たちに任せてくれるというのです。いつものように、僕たちだけの貸し切りです。部屋は、全て自由に使っていいとのことです。ベッドや布団は、新しくなっていました。コロナの影響を受け、休館となったときにリニューアルしたそうです。見慣れたはずの会場が、僕たちのことを待っていてくれている気持ちになりました。

 実際、使用するにあたり、まだまだたくさん、細かいことを考えなくてはいけないだろうと思います。コロナ感染防止対策も、万全にしなければなりません。課題はいろいろとありますが、今後、よほどのことがない限り、実施の方向で準備をすすめます。
 これ以上の拡大にならないことを祈って、こんな状況の中、参加申し込みをして下さった人たちと、いい時間いい空間を過ごしたいと、強く思いました。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2022/07/25
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