伊藤伸二の吃音(どもり)相談室

「どもり」の語り部・伊藤伸二(日本吃音臨床研究会代表)が、吃音(どもり)について語ります。

荒神山自然の家

第33回吃音親子サマーキャンプ 荒神山自然の家との打ち合わせ

 第33回吃音親子サマーキャンプの参加申し込みが届き始めました。参加費も、郵便振替で届いています。また、サマーキャンプの中で子どもたちと取り組むお芝居をスタッフが練習する事前レッスンも近づいてきました。そんな中、先日、会場である滋賀県彦根市の荒神山自然の家に行き、打ち合わせをしてきました。毎年、開催の1ヶ月前には、出向いて、職員の方と打ち合わせをすることになっています。
 大阪より涼しいだろうと予想していたのですが、その日、彦根の最高気温は35度、大阪より高かったです。
荒神山背景 自然の家に着くと、所長の西堀さん、所員の堀居さんをはじめ、自然の家のみなさんが温かく迎えてくださいました。1年ぶりの懐かしい再会でした。
 プログラムを説明し、参加者がまだ全然未定だと伝え、食事や備品などの提出書類などについて丁寧に説明を受けました。学校の林間学校と違い、僕たちの吃音親子サマーキャンプは、参加者数がぎりぎりまで分からないのが大きな、悩ましい特徴です。
 ここ荒神山でサマーキャンプを開催するのは、今回で25回目。どの所員の方よりも長く使わせてもらっています。そのことはよく理解してもらっていて、僕たち独自のプログラムを尊重してもらっています。全員が作文を書くための会場を確保してもらったり、ウォークラリーの説明をサマーキャンプ卒業生が、経験を活かして行いますが、そばにいて見守ってくださっています。
 荒神山自然の家は、以前は滋賀県が、そして彦根市が運営母体でしたが、経営難で、それぞれ手を離し、今は民間会社の運営となっています。存続が危ういときもあり、僕たちもなんとか続けてほしいとお願いをしたこともあります。
 荒神山は、吃音親子サマーキャンプにとって象徴的なシンボルです。せめてもう少しこのままでと願っています。
 温暖化の影響を受けて、年々暑くなってきているとのこと、生物の生態系にも変化があるようです。名前は忘れましたが、大きななめくじの姿を見ることがなくなったとのことでした。
 来月8月16日から18日まで、荒神山で繰り広げられるであろうたくさんのドラマを思い描きながら、打ち合わせが終わりました。「吃音さん」と呼んでくださる荒神山自然の家のスタッフの皆さんの温かい見守りの中で、今年もいい時間が過ごせそうです。
 参加申し込みは、書類提出の開催2週間前ぎりぎりの8月2日です。お待ちしています。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2024/07/08

第33回吃音親子サマーキャンプ、開催します

33回目を迎える吃音親子サマーキャンプのご案内

サマキャンの写真 ワークブック表紙 10% 今日から6月。「吃音の夏」と、僕たちが呼んでいるシーズンの到来です。
 吃音親子サマーキャンプは、今年、33回目を迎えます。
 ひとりで吃音に悩んでいたとき、同じようにどもる仲間に出会えた喜びは、何にも代えがたいものでした。その仲間といっぱい話し、いっぱい聞き、新しい価値観に出会い、僕もがんばってみようと行動を変えるきっかけをもらいました。もっと小さい頃に、子どもの頃に出会えていたら、そう思って、どもる子どもたちのためのサマーキャンプをしようと、吃音親子サマーキャンプを始めました。たくさんのどもる子どもたちに出会いました。連れてきてくれた保護者、手弁当でかけつけてくれたどもる大人やことばの教室担当者や言語聴覚士などの臨床家、大勢の力が 集まって、吃音親子サマーキャンプは、33年の歴史を重ねてきました。
 僕たちのキャンプの3つの大きな特徴は、吃音についての話し合いと、声や表現のレッスンのための演劇の練習と上演、そして親の学習会です。スタッフによる事前合宿も、演劇を担当してくださる渡辺貴裕さんのスケジュールに合わせて行います。若いスタッフが参加してくれます。

  あなたはひとりではない
  あなたはあなたのままでいい
  あなたには力がある

 このことを伝えたくて、続けてきました。

 今年の日程は、次のとおりです。
  日時 2024年8月16・17・18日
       16日13時から18日13時まで
  場所 滋賀県彦根市荒神山自然の家
  参加費 17000円(どもる子どもと大人も同額)   
同行のきょうだい 14000円
  内容  吃音についての話し合い
      ことばに向き合うための劇の練習と上演
      親の学習会

 詳しい案内と参加にあたっての注意事項、申し込み書等は、もうしばらくお待ちください。ホームページに掲載します。
 取り急ぎ、日程と場所をお知らせしました。
 みなさんのご参加をお待ちしています。
  
日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2024/06/01

「吃音の夏」のしめくくり 第32回吃音親子サマーキャンプ 一日目

荒神山 丘 吃音親子サマーキャンプが終わって早10日経ちました。
 会場である荒神山自然の家やその食堂への支払い送金や礼状、チャーターバスの支払い、参加者やスタッフへの礼状、劇の小道具の片付けや、朝のスポーツや遊び道具の片付けなど、準備と同様に、いろいろ思い出しながら、そして来年のことをイメージしながら、後片付けをしています。ぼちぼちと届くサマーキャンプの感想を読んで、10日前のさまざまなできごとを思い出しています。劇のせりふが口をついて出てきたり、あのときあの場面での発言などが鮮やかに思い出されたり、キャンプの余韻を楽しんでいます。

入所のつどい 8月18日(金)、キャンプの初日、2台の車に荷物を積み込み、荒神山に向けて出発しました。普段、僕は車の運転をするのですが、キャンプのときはどうしても睡眠不足になるため、車の運転を控え、大阪のメンバーに車を出してもらっています。高速を走っている頃、先発隊が電車で最寄り駅の河瀬駅に向かっています。自然の家に着くと、打ち合わせをはじめ、キャンプの資料集や劇の台本、スタッフの進行表の製本、シーツの配布、麦茶の用意など、参加者が到着するまでにしなければならないことがたくさんあります。打ち合わせは、僕たちがしますが、その他諸々の準備のため、先発隊が早く来てくれるようになり、本当に助かっています。
 チャーターバスは、自然の家への狭い道には入れず、こどもセンターに着きます。そこから自然の家まで歩きます。雨が降ったらいやだなあといつも思うのですが、僕の記憶する限り、雨が降ったことはなく、バス組が集会室に到着です。リピーターは、すでに河瀬駅で懐かしい再会をしているようです。今回は、初めての参加が多いので、少し緊張している様子も見られました。

開会のつどい開会のつどい 伸二up開会のつどい みんな 入所のつどいが終わり、36名(残念ながら直前に病気などで3人がキャンセル)のスタッフの打ち合わせをします。この日、初めて顔を合わせるスタッフも多く、自己紹介の後、少なくとも初日の分だけの打ち合わせをします。この間、待っていてもらって、全員が集合するのが開会のつどいです。
 僕は、ここで、2つの話をしました。これから始まる2泊3日のキャンプで心がけたいことを話しました。ひとつは、オープンダイアローグが大切にしている3つのことです。対等性、応答性、そして不確実性への耐性です。

 対等性…先生という呼び方はせず、子どもも大人もスタッフも、みんな対等に、みんなでつくりあげていくキャンプだということです。ボランティアとか、支援者という概念は僕たちにはないのです。遠く鹿児島や関東地方から交通費を使って、参加費もまったく同じの全員が参加者という立場を32年間貫いてきました。普段「先生」と言われているたくさんの人たちが参加していますが、「先生」と言わないことがひとつのルールになっています。
 対等だから、世話をしない、教えない、指示しないが私たちのルールです。

 応答性…誰かの発言に対して必ず応答することの大切さを話しました。ちょっとした小さな声を聞き逃さず、丁寧に応答していく。話し合いを中心にしたプログラムを組む僕たちは、普段の行動のときにも対話を重視します。

 不確実性への耐性…僕たちは、「〜すべき、〜せねばならない」を、論理療法から学んだ「非論理的思考」として、もたないように心がけています。吃音親子サマーキャンプの3日間のプログラムはありますが、パスもありです。最初からそれを言うことはしませんが、劇をしたくない、山登りはできないという場合も、一応はすすめますが、最終的には本人の決定にまかせます。吃音親子サマーキャンプの目的は何かとよく聞かれることがありますが、目的やゴールはありません。ただ、ずっと続いているプログラムがあるだけで、キャンプで参加者がどのような経験をするかは、本人次第なのです。もちろん、話し合いもゴールはありません。この、どこへ行くか分からない、不確実なものに耐えていく、こうしなければならないというゴールはないこのキャンプをみんなで楽しんでいこうということです。僕たちは不安の中で始まり、最後には「今年もいいキャンプだった」と胸をなで下ろすのです。
 もうひとつは、トーベ・ヤンソンのムーミンの話からヒントを得た「三間」です。
 空間・時間・仲間、この3つの「間」を大切にしようという話です。このことばは、キャンプの間中、ずうっと、ホワイトボードに書いておきました。

出会いの広場2 プログラムのスタートは、出会いの広場です。集会室に全員が集まり、声を出したり、ゲームをしたり、歌を歌ったり、グループに分かれてふりつけをしたり、固かった表情が柔らかく、穏やかになっていくのが見えました。

話し合い1話し合い2 夕食の後は、第1回目の話し合いです。保護者は3グループに、子どもたちは小学校低学年と高学年、中・高校生は混合で2グループに、それぞれ分かれて、吃音について話し合いました。これまでなら、どのグループにも、リピーターがいて、その子たちが、話し合いをひっぱっていってくれていました。話したいことをいっぱい持って参加しているので、話がいつの間にか広がっていきます。初参加の子どもたちは、その輪の中にいて、自然と、他者の語りを聞くことになります。そして、いつの間にか、自分も語り出すという流れができていたのです。初参加者と二回目の参加者の多い今年はどうかなと心配でしたが、スタッフにリピーターが多いこともあって、また協力的な子どもたちが多かったこともあって、いつものような話し合いの場になっていきました。聞いてもらえるという安心感のある場で、子どもたちは、自分の本音を話していたのだろうと思います。対等性と応答性が保証されている中で、共に、不確実性への耐性を発揮していたのだろうと思います。
話し合い3話し合い4話し合い5話し合い6 僕が参加していたのは、小学校5、6年生グループでした。

 夜の8時、全員が学習室に集合します。事前レッスンに参加したスタッフによる劇が始まります。荒神山劇場のオープニングです。この日のために、小道具を作り、郵送してくれたスタッフもいます。今回どうしても参加できないから、せめて小道具作りで参加したいと申し出てくれました。車にたくさんの小道具、材料を運んで、その場で必要なものをつくってくれたスタッフもいます。7月に2日間の合宿で稽古をした、スタッフとしては本番の劇の上演です。いいお客さんのおかげで、多少せりふをとばしたり、間違ったりもしましたが、それもご愛敬で、今年の劇「森は生きている」を演じました。真剣にみつめてくれている子どもたちや保護者のおかげで、みんな役者になったつもりで演じることができました。一番心配そうに見ていたのが、演出を担当してくれている渡辺貴裕さんでした。出演者はみな、楽しんでいました。その様子はしっかりと観客の子どもたちや保護者に伝わったことと思います。
台本配布のとき こうして初日のプログラムが全て終了しました。上々の滑り出しです。自然の家に到着したときの、固かった顔が、緩んでいます。
 夜10時からスタッフの打ち合わせを行いました。それぞれのプログラムの中で気づいたことを率直に出し合います。気になった子どもの話が出ると、関連する話題が続きます。こんなことをしていたよ、こんなことを言っていたよと、自分が見聞きしたその子の話が出てきます。子どもを一面的にとらえてしまうことを防ぐことができます。それらを共有することで、子どもの見方が広がるのだと思います。翌日の打ち合わせをして、スタッフ会議は終わりです。参加者同様、初参加のスタッフの固かった表情もすっかり和らいでいました。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2023/08/31

第32回 吃音親子サマーキャンプ、無事、終わりました

荒神山 丘 台風がほんの少し早く抜けてくれて、無事、第32回吃音親子サマーキャンプを開催することができました。昨年、たくさんのリピーターが卒業式を迎えたことと、2年間の中断が影響して、リピーターが減って、初参加が多く、2回目の人と合わせると、8割くらいでした。
 これまで自然と培われていた伝統や文化がどうなるのだろうと、少し心配でしたが、新鮮な出会いを楽しみながら、「今までどおり」は通用しないので、丁寧に対応していこうと思っていました。
 始まってみると、確かに最初は固い表情の人も少なくなかったのですが、だんだんと、毎年のように和やかな雰囲気になっていきました。
 今年のプログラムは、コロナ前と同じ、フルバージョンで行いました。
 吃音についての話し合い、演劇、話し合いと話し合いの間に設けた作文、ウォークラリー、親の学習会、どれもサマーキャンプには欠かせない大事なプログラムです。親のパフォーマンスも、最初はリピーターが少ないので難しいかなあ、やめようかなあとも思ったのですが、やっぱりちょっと負荷のかかった課題に挑戦してもらおうと思い、設定しました。練習が始まると、いつの間にか、これまでどおり、わきあいあいで、話し、動き、笑い、みんなで作り上げていく姿を見ることができました。話し合いをしてきたグループだからこその結束力でした。これまで大切してきた伝統や文化は、しっかりと根付いていたことを再確認できました。

 スタッフは、当日、初めて顔を合わせる者もいる中、子どもに対する目が温かく、子どもを大切にすることが自然にできているのがよく分かります。ひとりひとりが、その場で、それぞれの役割を果たしていること、そしてそれを信頼する仲間であること、自然に育まれるその雰囲気がなんとも言えず、居心地のいいものでした。このスタッフのチームワークは、本当に不思議で、とてもありがたく、誇らしく思います。
 終わってみれば、今年もまたいいキャンプでした。
 大勢の人の力が集まって、サマーキャンプというすてきな空間が作られているのだと思います。
 感想文が届き始めていますが、いつも演劇のための事前の二日間、スタッフに演劇指導をしてくださる、東京学芸大学教職大学院の渡辺貴裕さんの感想をまず紹介します。noteからです。

 (https://note.com/takahiro_w/n/nccfd06b1b104 参照 2023年8月24日)
          子どもがもつ力に圧倒される
       〜第32回吃音親子サマーキャンプに参加して〜
                      渡辺 貴裕
 第32回吃音親子サマーキャンプ(主催:日本吃音臨床研究会)を終えた。
 どもる子どもと親が、琵琶湖畔にある荒神山自然の家に集まり、2泊3日を共に過ごす。
 どもる大人(成人吃音者)やことばの教室の教師や言語聴覚士などもそこにスタッフとして加わる。
 8月18日(金)〜20日(日)に開かれた今回、2000-2001年のコロナ禍による休止を挟んだ影響か、子ども&親のリピーター参加が減っていたが(初参加者率増)、それでも参加者は全体で80名ほど。大阪・兵庫を中心に、三重やら千葉やら神奈川やら鹿児島やら全国から集まる。
 学生時代から、かれこれ連続22回目の参加になる。なぜ私はこうして参加し続けているのか。 今でこそ竹内敏晴さんの後を継いで事前合宿でのスタッフ向け劇の指導を担当するようになってはいるが、元々はそうではないのだし、別に、演劇教育の専門家として参加しているわけではない。もちろん、吃音の専門家でもない。また、ボランティアとして他人の役に立つために、というのもちょっと違う。むしろ、「専門家」でも「ボランティア」でもなく、何も背負わない者としてその場に居て、それでいてかつ(あるいは、だからこそ)、子どもがもつ力に圧倒される、人間ってすごいなあとしみじみ思える、そんな経験を毎年できるから、私は参加し続けているのだと思う。
 1日目の話し合いでは(吃音の調子もあってか)一言もしゃべらなかった高校生の子が、2日目の話し合いでは、自分が就きたい仕事のこと、オープンキャンパスに行って「どもっててもその仕事でやっていけるか」尋ねたときのこと、なぜその仕事を目指すようになったのかといったことを、時々言葉が出なくなりながらも、話す。周りのメンバーは、それにじっと耳を傾ける。ごく自然に、けれども極めて濃密に、話すことと聴くこととが行われる。
 2日目朝の作文で、ことばの教室のこととキャンプのことを書いてきた小学生。どちらもすごく楽しい、特にことばの教室は、学校の中で一番楽しい時間だという。ただし、その楽しさは、椅子取りゲームとか、いっぱい「ゲームができるから」。「じゃあキャンプの楽しさは?」と尋ねてみると、その子いわく、「キャンプの話し合いでは、吃音でイヤだったこととか、みんなの、吃音への思いを聞ける」。「相手の気持ちを分かれて、うれしい」と。子ども自身が、吃音と正面から向き合うこと、仲間とつながることの価値を認識している。
 担任の先生への怒りを作文にぶつけた小学生もいる。「ゆっくり話して」と言ってくる先生に対し、「ゆっくり言おうとどもるもんはどもるんだから、そういう問題じゃない」。「知らないように知ってるように言うな」と。そうやって言語化できることの強さ。
 私自身、3日間というほんのわずかな間に、子どもへの見方をどんどん塗り替えられる。
 話し合いのときには引き気味で、あまり自分のことをしゃべらなかった子が、劇の練習のときには自分なりの工夫なり表現なりをバンバン入れて、周りの笑いと喝采をかっさらっていったりとかも。こんなふうに、子どもってすごいなあと思わされることの連続だ。それは、普段自分が背負っているものを降ろして、ただただ、人がもつ力の前に謙虚になれるということでもある。
 吃音のキャンプは他の場所でも行われるようになったけれども、こうした関係性をもてるのはなかなかないという。他だと、ことばの教室の教師なりの専門家が準備してプログラムを提供する、という形になりがちだし、成人吃音者が来る(招く)場合でも、「吃音の当事者や先輩の話を聞く」といったプログラムの一部に組み込まれてしまいがちだそう。それはそれでよく分かる。「教師」なり「専門家」なり、というのは、「ちゃんと自分が役に立たないと。何かやってあげないと」と思ってしまうものだから。
 一方、この吃音親子サマーキャンプは、「専門家」が何かを提供するという図式ではない(ことばの教室の先生も参加してるけれど、むしろ、自分が学びにきている気分だろう)。もちろん、支柱としての伊藤伸二さんの存在は大きいが、キャンプそのものに関しては、どもる子どもも親も(時には子どもの兄弟も)スタッフも一緒になって場をつくっていく。
 劇の練習のときのリードとか話し合いの進行&記録とか食事の準備とかシーツの管理とか、スタッフが担う役割はいろいろあるものの、スタッフみんなが同じように担うわけではないし(臨機応変に入れ替わりもするし)、親が担うものもあるし、名前がつくような「役割」ではないけれど、キャンプ卒業生でもある若手スタッフらがいきいきと人前でしゃべったり子どもとかかわったりしてさまざまなタイプの「わが子の将来像」を示すといった、私が決してできない類の「役割」もある。
 そんなふうに、参加者同士が固定的な関係に陥ることなく、一緒につくる。だからこそ、子どものすごさに圧倒されることが可能になるのだろう。自分の背負っているものを降ろすからこそ、純粋に、人のすごさを楽しめるのだろう。そうした時間をもてるのは私にとって貴重で有難いものだし、それは他の参加者にとってもそうなのかもしれないと、思う。


日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2023/08/24

第32回 吃音親子サマーキャンプ開催まで、1週間となりました

 第32回吃音親子サマーキャンプが1週間後に近づいてきました。今年も、関西地方を中心に、遠くは沖縄、鹿児島などの九州地方から、東京、神奈川、埼玉など関東地方から、山口などの中国地方から、参加申し込みが届いています。
 昨年は、吃音親子サマーキャンプの華であり、大事にしている演劇の稽古と上演が前年までの形ではできませんでした。当初は大きな声を出し、歌い、相手に伝わることばを吟味していくプログラムは抜いていたのですが、やはり、少しでも演劇をしたいと急遽小さな劇に取り組みました。みんな、大喜びでした。誰よりもスタッフが大喜びで張り切るのが、僕たちのキャンプの特徴です。
 今年は、全面的にコロナ前の形に戻しての開催です。同年代のグループに分かれての吃音についての話し合い、自分の声やことばに向き合うための演劇の練習と上演、親の学習会など、久しぶりのフルバージョン開催に向け、わくわくしながら準備をしています。
 演劇のためのスタッフの事前レッスンは、7月15・16日、大阪市内のお寺で行いました。そのレッスンに参加したスタッフは、そのときの映像を見ながら、それぞれ自主練習をしています。事情があり、今回、サマーキャンプに参加できない、サマーキャンプ常連スタッフは、演劇の小道具作りを申し出てくれて、サマーキャンプのあの場を想像しながら、せっせと小道具作りに励んでくれています。会場の荒神山自然の家に郵送してくれることになっています。それぞれが、自分の持ち味を出して、サマーキャンプにかかわってくれています。このようなスタッフのおかげで、サマーキャンプは、32年間も続いてきました。
 今年、初めて、事前レッスンに参加したスタッフから、手紙がきました。長くスタッフとして参加してくれている関東地方のことばの教室の担当者です。

 
念願叶って、事前レッスンに参加でき、幸せな2日間でした。帰り際に、坂本さんから「昨日より元気そうだね」と声をかけられました。充実した時間を過ごした満足感が表情や身体にあらわれていたのでしょうね。
 レッスンが始まって、身体を動かしたり声を出したりしたとき、身体は動かないし、声も出ないし、続かないしで、自分がこんなにも固まっていたのだと気づきました。でも、劇の練習を通して、楽しさが増してきて、事前レッスンに参加できてよかった、うれしいという気持ちが広がりました。事前レッスンの場は、サマーキャンプ当日と同じように、ぬくもりが感じられて、いいなと改めて思いました。すてきな機会を設けていただきました。サマーキャンプ本番も楽しみにしています。


 今年の吃音親子サマーキャンプは、初めて参加される方が多いです。昨年、初めて参加したという人も合わせると、全体の7、8割くらいでしょうか。フレッシュなキャンプになりそうです。これまでは、リピーターが多くいて、その中で初参加の方が自然と混じり合って、いつの間にかその人たちがリピーターになっていって…、そうして、サマーキャンプの伝統が受け継がれてきました。コロナ禍のため、空白の3、4年間ができたことがこんな所にも影響しているようです。
 サマーキャンプのもつ伝統は、それを目標としたわけではありませんが、いつのまにか熟成されていったように思います。話し合いのとき、ひとりひとりの語りにしっかり耳を傾けること、話す人は、自分のことばで自分の思いを伝えること、ただ共感するだけでなく、関心をもって聞き、質問してその人の物語の世界を広げていくこと、指示・命令のことばはできるだけ最小限にして、それぞれが時間を守って動くこと、強制はしないが、自主的に自分の課題に取り組むこと、精一杯表現すること、それらのことが自然にできていたように思います。鰻の名店が、伝統のタレをつぎたし、つぎたし、伝統の味を守ってきたようにして、吃音親子サマーキャンプは32年の年月を積み重ねてきたました。小学1年から高校卒業まで連続して参加していた、リピーターが全員卒業し、今年は、ベテランのいない初めてのキャンプになります。吃音親子サマーキャンプの文化を、一から作っていく再スタートの年になりそうです。その新鮮さを楽しみ、ドキドキを味わいながら、サマーキャンプの2泊3日を過ごしたいと思います。また、報告します。このブログを読んでくださるみなさんと、素敵な時間を共有できることを願って…。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2023/08/11

吃音親子サマーキャンプ、会場の荒神山自然の家で打ち合わせしてきました

サマキャンの写真  7% 今日は、吃音親子サマーキャンプの会場である彦根市荒神山自然の家に行ってきました。
 サマーキャンプ開催1ヶ月前に行う打ち合わせのためです。雨を心配していましたが、出発のときは曇りで、途中、小雨が降りましたが、無事、荒神山自然の家に到着しました。着くと、所長の西堀さんが「お待ちしていました」と、にこやかに出迎えてくださいました。西堀さんは所員としてお世話になり、何年か前から所長としてお世話になっています。また、吃音親子サマーキャンプのことや僕たちのことをよく知っていてくださる堀居さんも、今日はお休みとのことですが、所員としていてくださることがわかり、安心です。変わらぬ温かい出迎えを受け、ほっとしました。
 打ち合わせは、活動プログラムに沿って行いましたが、学校の林間学校と違って、人数の確定が難しく、今年も今の段階では、全然参加人数が読めません。開催2週間前には確定することになっています。
 打ち合わせを担当してくださった方が、「昨日は、雷がすごかったんですよ」とおっしゃっていました。雷といえば、10年くらい前のキャンプのとき、天気が急変して、荒神山へのウォークラリーの途中でものすごい雨が降ってきたことがありました。別プログラム参加で、自然の家に残っていた人が車を出し、山に登ったみんなを迎えに行ってもらったことがありました。今では、笑い話になりますが、あのときは、もしものことがあったら…と思うと、気が気ではありませんでした。
 荒神山自然の家で、吃音親子サマーキャンプを開催するのは、1998年、第9回目からでした。あれから、25年、所員のどなたよりも、僕たちの方が、自然の家を知っているというか、古くから使わせてもらっています。吃音親子サマーキャンプといえば、荒神山です。
 ここでは、僕たちは、「吃音さん」と呼ばれています。「吃音さん」と、吃音に「さん」をつけて呼んでくださるのも、荒神山自然の家だけです。
 吃音親子サマーキャンプにまつわるたくさんのエピソードがあります。いつか、そんな話も、このブログでできたらいいなあと思います。

 今年の吃音親子サマーキャンプは、下記の日程です。
 どもる大人と、ことばの教室担当者や言語聴覚士が協同で行う、吃音親子サマーキャンプ。吃音についての話し合いと、自分の声やことばに向き合う演劇の練習と上演、親の学習会が主なプログラムです。学童期、思春期に、しっかりと吃音に、自分に、向き合うことの大切さを思います。
 今週末は、合宿で、プログラムの柱のひとつである演劇の事前レッスンを行います。
 キャンプ当日稽古をして、最終日にみんなの前で上演しますが、そのために、スタッフが事前に合宿でレッスンをするのです。遠くから交通費を使って多くの人が合宿に参加してくれます。その事前レッスンの指導は、東京学芸大学大学院准教授の渡辺貴裕さんです。今年の劇は、渡辺さんが「森は生きている」を選んでくれました。竹内敏晴さんの作・演出の作品です。コロナのために、この合宿による事前レッスンは4年ぶり。それを楽しみに全国から仲間が集まってきます。いよいよ吃音の夏の本番、間近です。
 32回という歴史あるこのキャンプに、どうぞ、ご参加下さい。お待ちしています。

日程 2023年8月18・19・20日
会場 滋賀県 彦根市荒神山自然の家(最寄り駅 河瀬駅) 
参加費 17,000円(大人も子どもも同額)
 詳しくは、日本吃音臨床研究会のホームページをご覧ください。お電話で問い合わせていただいても構いません。
  TEL 072−820−8244
荒神山 写真 渡辺さん
日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2023/07/13

吃音親子サマーキャンプ、今年は実施の方向です

サマキャンの写真  7% 先日、吃音親子サマーキャンプの会場である、滋賀県彦根市の荒神山自然の家に打ち合わせのため、行ってきました。
 2年間の中止を経て、今年、吃音親子サマーキャンプの開催を決めたのは、5月のゴールデンウィークが明けて2週間くらいが過ぎてからでした。連休後の感染拡大が大きいものではなかったので、これならいけるのではないかと判断して、「お待たせしました!」とお知らせしたのです。
 心配が全くなかったわけではありませんが、今年開催できないと、これまで1年ごとに子どもたちの成長を見守ってきたことが崩れてしまうとの思いがありました。あのとき、小学6年生だった子どもたちは、今年、中学3年生になっています。
 開催を決めたものの、参加者がどれくらい集まるか、何よりスタッフが集まって下さるか、不安はつきませんでした。これまでと同じような人数の申し込みが届いているわけではありませんが、人数に関係なく、本当に必要として下さっていた人たちが集うことになり、きっといい時間になるだろうと思っていました。
 ところが、ここへ来ての感染急拡大。覚悟を鈍らせるような数字ですが、行動制限はしないとの方針に、それならば、最大限気をつけて、予定どおり開催したいと思っています。今後の状況により、まだ流動的ではありますが。

 3年ぶりか、と荒神山自然の家が近づくと、懐かしい思いがよみがえってきます。ここは、みんながバスに乗って到着するところ、車で来る人たちの駐車場、ラジオ体操をする広場、3年前と変わらない荒神山自然の家が出迎えてくれました。
 うれしかったのは、その日、自然の家を利用していた人たちの様子でした。チアガールの練習のための合宿だとのことで、小学校低学年から高学年までの女の子が70人くらい、参加していました。キラキラ光るポンポンを手に、音楽に合わせ、体を動かしています。リーダーも指導者も、マスクはしていますが、とても楽しそうな表情です。音楽に合わせて、声も出していました。

 自然の家の所員さんの話では、会場として何も制限はしていない、主催者側に任せているとのことでした。もちろん、検温、消毒などの基本的な感染対策はきちんととり、食堂の利用人数も80人までとして、その上で、僕たちに任せてくれるというのです。いつものように、僕たちだけの貸し切りです。部屋は、全て自由に使っていいとのことです。ベッドや布団は、新しくなっていました。コロナの影響を受け、休館となったときにリニューアルしたそうです。見慣れたはずの会場が、僕たちのことを待っていてくれている気持ちになりました。

 実際、使用するにあたり、まだまだたくさん、細かいことを考えなくてはいけないだろうと思います。コロナ感染防止対策も、万全にしなければなりません。課題はいろいろとありますが、今後、よほどのことがない限り、実施の方向で準備をすすめます。
 これ以上の拡大にならないことを祈って、こんな状況の中、参加申し込みをして下さった人たちと、いい時間いい空間を過ごしたいと、強く思いました。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2022/07/25
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