もうひとり、吃音親子サマーキャンプになくてはならない人を紹介します。
東京学芸大学教職大学院准教授の渡辺貴裕さんです。
渡辺さんとの出会いは、僕たちが事務局をしていた竹内敏晴さんの大阪定例レッスンでした。1999年の春、竹内敏晴さんの定例レッスンを大阪市内の應典院で始めることになりました。渡辺さんはその頃まだ京都大学の大学院生でした。定例レッスンが始まってすぐだったと思うのですが、毎月第二土日のレッスンに参加するようになりました。そのとき、僕が「吃音親子サマーキャンプというのをしているんだけど、おもしろいから参加しない?」と声をかけたようです。僕は覚えていないのですが、渡辺さんがそう言うのですから、間違いないでしょう。吃音とは全く縁のなかった渡辺さんが、吃音親子サマーキャンプにスタッフとして参加するようになりました。その後、渡辺さんは、大学の先生になり、今は、東京学芸大学教職大学院の准教授です。
2009年6月の初め、竹内敏晴さんから、がんと診断されたと連絡が入りました。がんの痛みに耐えながら、吃音親子サマーキャンプの最後の芝居となった宮沢賢治の「雪わたり」のシナリオを書きあげ、7月、吃音親子サマーキャンプのための劇の演出・指導の事前レッスンを終え、9月にお亡くなりになりました。私たちの吃音親子サマーキャンプをとても大切にしていてくださったのです。
演劇活動は、吃音親子サマーキャンプの大切なプログラムです。僕たちだけではとても続けることはできません。困っていたとき、「竹内さんを引き継いで、僕が芝居を担当しましょうか」と申し出てくれたのが、渡辺さんでした。とてもありがたい申し出でした。 そして、2010年のサマーキャンプから、竹内さんが残してくださった台本をもとに、渡辺さんが構成・演出をしてくれています。スタッフのための合宿による事前のレッスンもしてくれています。渡辺さんは、スタッフが当日子どもたちに指導することを念頭において、その年の芝居につながるエクササイズをたくさん紹介してくれます。事前レッスンでのスタッフは、渡辺さんの魔法にかかったかのように、いつのまにか、渡辺ワールドに入り込み、芝居の中に入っていってしまいます。参加しているスタッフはみんな本当に楽しそうに練習しています。僕は、毎回、その様子を見て、これだけスタッフが楽しんでくれるのだからきっと子どもたちも喜んでくれるだろうと確信します。参加申し込みが少ないときは、スタッフのための吃音親子サマーキャンプもありだなとも思うのです。
今年、渡辺さんが竹内さんから引き継いで劇の演出・指導をしてくれるようになってから14回目のサマーキャンプでした。これは、竹内さんが演出・指導してくださった年数と全く同じです。
また、演劇だけでなく、2日目の午前中の作文教室でも、高校生や中学生の話し合いの場にも、渡辺さんは欠かせない存在です。
吃音親子サマーキャンプ史上、最初で最後の集合写真を撮ってくれたのも、渡辺さんでした。『親、教師、言語聴覚士がつかえる、吃音ワークブック』(解放出版社)の表紙を飾っている写真です。
渡辺さんの専門は教育方法学、教師教育学。演劇的手法を用いた学習の可能性を現場の教員と共に探究する「学びの空間研究会」を主宰し、授業や模擬授業の「対話的検討会」の取り組みなど教師教育分野でも活躍されています。あちこちの現場に呼ばれ、講演や演習を精力的に取り組んで、本当にお忙しい日々を送っておられるのですが、吃音親子サマーキャンプの事前の演劇レッスンと本番の3日間は、スケジュールを空けてくれています。
このように、吃音親子サマーキャンプにとって、なくてはならない、唯一無二のスタッフのひとりひとりが、それぞれの持ち場で動き、吃音親子サマーキャンプは、34年間継続してきました。
日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2025/09/10
東京学芸大学教職大学院准教授の渡辺貴裕さんです。
渡辺さんとの出会いは、僕たちが事務局をしていた竹内敏晴さんの大阪定例レッスンでした。1999年の春、竹内敏晴さんの定例レッスンを大阪市内の應典院で始めることになりました。渡辺さんはその頃まだ京都大学の大学院生でした。定例レッスンが始まってすぐだったと思うのですが、毎月第二土日のレッスンに参加するようになりました。そのとき、僕が「吃音親子サマーキャンプというのをしているんだけど、おもしろいから参加しない?」と声をかけたようです。僕は覚えていないのですが、渡辺さんがそう言うのですから、間違いないでしょう。吃音とは全く縁のなかった渡辺さんが、吃音親子サマーキャンプにスタッフとして参加するようになりました。その後、渡辺さんは、大学の先生になり、今は、東京学芸大学教職大学院の准教授です。2009年6月の初め、竹内敏晴さんから、がんと診断されたと連絡が入りました。がんの痛みに耐えながら、吃音親子サマーキャンプの最後の芝居となった宮沢賢治の「雪わたり」のシナリオを書きあげ、7月、吃音親子サマーキャンプのための劇の演出・指導の事前レッスンを終え、9月にお亡くなりになりました。私たちの吃音親子サマーキャンプをとても大切にしていてくださったのです。
演劇活動は、吃音親子サマーキャンプの大切なプログラムです。僕たちだけではとても続けることはできません。困っていたとき、「竹内さんを引き継いで、僕が芝居を担当しましょうか」と申し出てくれたのが、渡辺さんでした。とてもありがたい申し出でした。 そして、2010年のサマーキャンプから、竹内さんが残してくださった台本をもとに、渡辺さんが構成・演出をしてくれています。スタッフのための合宿による事前のレッスンもしてくれています。渡辺さんは、スタッフが当日子どもたちに指導することを念頭において、その年の芝居につながるエクササイズをたくさん紹介してくれます。事前レッスンでのスタッフは、渡辺さんの魔法にかかったかのように、いつのまにか、渡辺ワールドに入り込み、芝居の中に入っていってしまいます。参加しているスタッフはみんな本当に楽しそうに練習しています。僕は、毎回、その様子を見て、これだけスタッフが楽しんでくれるのだからきっと子どもたちも喜んでくれるだろうと確信します。参加申し込みが少ないときは、スタッフのための吃音親子サマーキャンプもありだなとも思うのです。
今年、渡辺さんが竹内さんから引き継いで劇の演出・指導をしてくれるようになってから14回目のサマーキャンプでした。これは、竹内さんが演出・指導してくださった年数と全く同じです。また、演劇だけでなく、2日目の午前中の作文教室でも、高校生や中学生の話し合いの場にも、渡辺さんは欠かせない存在です。
吃音親子サマーキャンプ史上、最初で最後の集合写真を撮ってくれたのも、渡辺さんでした。『親、教師、言語聴覚士がつかえる、吃音ワークブック』(解放出版社)の表紙を飾っている写真です。
渡辺さんの専門は教育方法学、教師教育学。演劇的手法を用いた学習の可能性を現場の教員と共に探究する「学びの空間研究会」を主宰し、授業や模擬授業の「対話的検討会」の取り組みなど教師教育分野でも活躍されています。あちこちの現場に呼ばれ、講演や演習を精力的に取り組んで、本当にお忙しい日々を送っておられるのですが、吃音親子サマーキャンプの事前の演劇レッスンと本番の3日間は、スケジュールを空けてくれています。
このように、吃音親子サマーキャンプにとって、なくてはならない、唯一無二のスタッフのひとりひとりが、それぞれの持ち場で動き、吃音親子サマーキャンプは、34年間継続してきました。日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2025/09/10
さて、今年の事前レッスン、23人の参加でした。東京、埼玉、千葉、静岡、三重、愛知、兵庫、新潟、京都、大阪など、かなり遠くからの参加もありました。この事前レッスンを担当してくれているのが、東京学芸大学教職大学院准教授の渡辺貴裕さんです。渡辺さんは、吃音とは全く関係ありませんが、大学生の頃から今まで欠かさず、26年間、このキャンプに参加し、竹内敏晴さんが亡くなった後は、竹内さんのシナリオをもとにした演劇をスタッフが子どもに指導するための事前レッスンの担当をしてくれています。竹内さんが事前レッスンをしていた期間と、渡辺さんに代わって渡辺さんが担当してくれている期間とがほぼ同じになったということでした。これまた長いおつきあいに感謝しています。
演劇の事前レッスンの会場は、僕の両親が眠っている浄土宗・銀山寺というお寺の一角にある研修室です。1998年頃から、リーダー研修会やサマーキャンプの事前レッスンなどの会場として、使わせてもらっていたことが記録に残っています。
みんながいろんな役を交代でしていきます。途中でストップしては、小さなグループを作り、似た場面を演じたり、せりふの言い回しを考えたりします。すると、舞台の上で繰り広げられる世界が変わります。このエクササイズが、サマーキャンプ当日、子どもたちと劇を作っていく上でとても役に立つのです。
一日目は夜9時過ぎまで練習をし、その後、実行委員会をしました。二日目は朝9時から練習を始めました。土曜日、どうしても抜けられない用事があって参加できなかった人が、夜行バスでかけつけてくれました。午後、通し稽古をして終了。いつものように井上さんがその様子を録画してくれました。それをみんなで共有し、復習をします。当日までの自主練です。






2日目は、吃音講習会の顧問である国立特別支援教育総合研究所の牧野泰美さんの基調提案から始まりました。研修会が多いこの夏の時期、牧野さんが、この吃音講習会の日程を必ず空けておくというのはかなり大変なことだと思うのですが、牧野さんがいつも大切にしている「そばにいてくれるだけでいい」を実践するかのように、いつもそばにいてくれています。
渡辺貴裕さんのワークショップは、1日目に5時間、2日目に2時間、計7時間の長丁場でしたが、その長さを感じさせないくらい充実していました。次々に課題が出て、参加者はみな、考え、身体を動かし、感じ、話し合い…を繰り返しました。その場で感じたことを率直に表現し、その場で感じたことをもとに対話を繰り返しました。日頃と違う自分を発見した人もいたようです。

そして、ティーチイン。僕は、最終の時間、みんなで円く輪になって、2日間をふりかえる時間が好きです。いろんな場面が浮かんできます。
7月27・28日の2日間、千葉県教育会館で、久しぶりに講師を迎えて、第11回親、教師、言語聴覚士のための吃音講習会を開催しました。
講師の渡辺貴裕さんとのおつき合いは、25年ほど前に遡ります。大阪での竹内敏晴さんのからだとことばのレッスンに、レッスン生として参加していた、当時大学院生の渡辺さんに、吃音親子サマーキャンプに参加しませんかとお誘いし、渡辺さんが参加したことから始まりました。竹内さんが2009年にお亡くなりになってからは、竹内さんの代わりに、サマーキャンプの大事なプログラムである演劇の担当として、スタッフへの演劇指導の事前レッスンからお世話になっています。今年も、講習会のつい2週間前、吃音親子サマーキャンプの事前レッスンでお世話になったばかりでした。
そこで、実際に、2人組になり、どもる子どもと担当者になって、対話をすることで、参加者のもつ、どもる子どもの像が明確になるのではないかと思いました。
まさか本当に、夜の8時45分まで研修をするとは思っていなかったという初参加者もいましたが、プログラムに書いてあったとおり、きっちり8時45分までして、1日目を終えました。ハードな一日が終わり、心地よい疲れの中に、満足感もたっぷりでした。