伊藤伸二の吃音(どもり)相談室

「どもり」の語り部・伊藤伸二(日本吃音臨床研究会代表)が、吃音(どもり)について語ります。

国立特別支援教育総合研究所

第11回親、教師、言語聴覚士のための吃音講習会、無事、終わりました 2

講習会10 2日目は、吃音講習会の顧問である国立特別支援教育総合研究所の牧野泰美さんの基調提案から始まりました。研修会が多いこの夏の時期、牧野さんが、この吃音講習会の日程を必ず空けておくというのはかなり大変なことだと思うのですが、牧野さんがいつも大切にしている「そばにいてくれるだけでいい」を実践するかのように、いつもそばにいてくれています。
 講師の渡辺貴裕さんが、「国立と名のつく人が、あそこまで言っていいの?というくらいの内容の話をされていた」と感心していましたが、僕たちにとっては、いつもと変わらぬ、ぶれない姿勢を示してくださっていたと思います。おもしろく、柔らかい、牧野節でした。

講習会9 渡辺貴裕さんのワークショップは、1日目に5時間、2日目に2時間、計7時間の長丁場でしたが、その長さを感じさせないくらい充実していました。次々に課題が出て、参加者はみな、考え、身体を動かし、感じ、話し合い…を繰り返しました。その場で感じたことを率直に表現し、その場で感じたことをもとに対話を繰り返しました。日頃と違う自分を発見した人もいたようです。
 学習・どもりカルタの読み札の中から1枚選び、それをグループごとに1つのシーンとして演じてみるという試みをしました。せりふはあってもなくても構わないとのことでした。グループごとに舞台で演じた後、観ていたみんなは、どの読み札かを当てるのですが、全てのグループに当てられないよう、でも、できるだけたくさん当てられるようにと、ちょっとした工夫が必要な設定でした。演じる方も、当てる方もみんな集中していました。どもりカルタが、あんなふうに立体的になるのかと、とてもおもしろかったです。
 2日目の牧野さんの基調提案の話を聞いて、その中のことばを拾って、その場面をシーンとして演じるという試みもありました。リアルなシーンになり、おもしろい体験でした。
 午後は僕と渡辺さんとの対談、そして、最後は、みんなで2日間をふりかえるティーチインでした。長いつきあいの渡辺さんですが、今回のように、1対1で話すことは、これまでなかったように思います。長くかかわってもらっている吃音親子サマーキャンプの話、出会ったどもる子の話、治る・治せると治らない・治せないの話、治してあげようとする善意の人とどう対峙していくかの話、マイノリティの人たちとの連携の話など、いろいろな視点から話しました。
講習会7講習会6講習会8 そして、ティーチイン。僕は、最終の時間、みんなで円く輪になって、2日間をふりかえる時間が好きです。いろんな場面が浮かんできます。

 すべてのプログラムが終わり、夕方5時、会場を後にしました。そして、その日、千葉でもう一泊した人たちと興奮状態で深夜まで「省察」していました。どもる子どもってどんな子?という原点に立ち戻る必要性も感じました。幸せで、楽しい時間を過ごして、夕方、大阪に戻りました。
さあ、次は吃音親子サマーキャンプです。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2024/08/01

国立特別支援教育総合研究所での研修

 神奈川県久里浜にある、国立特別支援教育総合研究所の講師として呼んでもらうようになって、30年以上になるでしょうか。コロナ前までは、久里浜まで出向いて、対面で、丸一日、吃音の話をしていました。対面で話せたのは、2020年3月まで。全国一斉休校が始まる直前のことで、久里浜が対面をやめるぎりぎりセーフで対面による研修を終え、乗った帰りの新幹線では、車両に僕ひとりだった光景は忘れられません。それ以降は、Zoomになっています。
 2023年度は、10月30日(月)の朝9時から午後4時過ぎまでの講義でした。90分の講義を午前に2コマ、午後に2コマ、計4コマです。最初はとてもZoomで4コマなんて無理だろうと思っていたのですが、なんとかなるものですね。少し慣れてきました。でも、やっぱり、僕は対面で、ひとりひとりの表情を確認しながら対話をして話をすすめる方が断然好きです。
 今回、事前にたくさんの資料を用意し、一通り読んでもらって、講義の当日を迎えました。当日用のパワーポイントも用意しましたが、まずは、事前の資料を読み、またこれまで受けてきた研修で感じたことをもとに、ひとりひとりから質問を出してもらい、それに答える形ですすめました。僕が話したいと思って、パワーポイントを用意した内容とほぼ共通の内容の質問をしていただき、僕が言いたかったこと、伝えたかったことを、受講者の方のニーズに沿った形で話すことができました。的確な、いい質問をしてくださった、今年の受講者の方に感謝です。
久里浜集合写真
・吃音とどもり、どう違うのか。
・吃音親子サマーキャンプの目的ときっかけについて
・幼児は、吃音を意識していないのではないかと思うが、意識させることは必要だろうか。
・幼児の吃音指導で、大事なことは何か。
・どもる人が吃音を隠さずにどもれるようになるには、周囲の理解が大事だと思う。世の中の人にどう理解してもらったらいいか。
・吃音の予防教育とは。
・資料にあった、健康生成論、レジリエンス、ポジティブ心理学について説明してほしい。
・通常学級の担任に、配慮をお願いするときに、注意した方がいいことは何か。
・子どもの吃音を治したいと思っている親に、どう寄り添えばいいか。
・自己肯定、他者信頼、他者貢献と、共同体感覚の関係について。
・竹内敏晴さんのことが出てきたが、演劇の手法を取り入れているのか。 

 これらたくさんの質問に、丁寧に答えていると、時間はあっという間に過ぎていきます。 最後に、感想を聞かせていただきました。

・すんなりと入ってきた。
・夫もどもりながら生きている。これを障害といっていいのか。
・ひとりずつ違うから、ひとりずつ対応しなくてはいけない。
・自分にあてはめると、支援に活かせると思った。
・上司、同僚と共有したい。
・読書介助犬の話がおもしろかった。非認知能力を育てたい。
・対話は、どもるどもらないに関係なく、大切だ。
・劣等感を取り除くのではなく、つきあえる程度にやわらかくするという話が印象的。
・子どもと一緒に、生き方をみつけていきたいと思う。
・「どう治すかではなく、どう生きるかだ」のことばは、インパクトがあった。
・ことばの教室に来ているのに、吃音の話を避ける子がいる。そのことどう対話をしていこうかと思っているが、なんか可能性が見えたような気がする。

 いろいろなことを感じていただけたようです。同じを話を聞いても、人によって感じるところは異なります。多分、同じ話でも、聞くときの状態によっても違うのでしょう。それぞれが、自分の感じたことを大切に、これからの毎日に何か生かしていけるようなきっかけとなっていたら、僕はとてもうれしいです。
 最後に記念の集合写真を、画面越しに撮りました。
 早く、対面で、お話ができたらと願います。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2023/11/14

国立特別支援教育総合研究所の一日研修

久里浜研修1 今日は、2022年度の最後の公式行事である、国立特別支援教育総合研究所の吃音の講義の日でした。昨年度にひきつづき、Zoomによるものでした。9時15分から始まり、16時15分まで、午前に2コマ、午後に2コマの計4コマの一日研修です。
コロナの前は、毎年、神奈川県の久里浜まで出かけていき、受講者の顔を見ながら対面で講義をしていました。みなさんの反応が分かるので、僕としてはとてもやりやすかったのですが、Zoomになってからは、どうも…。ここ以外にもZommで話はしていますが、何度しても、慣れないなあと思います。一方通行にならないよう、できるだけ受講者にも発言をしてもらいました。僕が話をして、それを受けて質問をしてもらい、それに答えて、次に進むというやり方でした。資料は、たくさん用意したので、話せなかった分は、その資料で補っていただくようにしました。
 用意した資料は、「伊藤伸二の体験」「どもる子どもが幸せに生きるために」「ことばの教室で出来ること」の3つのパワーポイントです。まず、僕の体験を語ることで、吃音の問題の本質をつかんでいただきました。そして、ことばの教室でできることを具体的に紹介しました。みなさん、しっかりと聞いてくださいましたし、質問もたくさんありました。4月、どもる子どもと会うのが楽しみだと思ってもらえたら、こんなにうれしいことはありません。
 今日は、毎日、欠かすことのない食後のウォーキングができず、机上のパソコンに向かっていました。少々、疲れましたが、受講者の方は、もっとお疲れになったでしょう。早く、対面で話せるようになってほしいと強く思いました。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2023/03/08
Archives
livedoor プロフィール

kituon

QRコード(携帯電話用)
QRコード