「人生案内」の回答者である三木善彦さんが、冊子『吃音と上手につきあうための吃音相談室』について、感想を寄せてくださいました。三木さんの文章と、「人生案内」を読んで、冊子を注文してくださった方からの手紙の一部を紹介します。
「スタタリング・ナウ」1999.7.17 NO.59を紹介します。
三木さんの感想を紹介しましたが、全国からいただいた750通の反響がありました。綿々とお手紙を書いてくださった方もたくさんいらっしゃいます。そのほんの一部をご紹介します。
冊子を申し込んできた時の手紙の内容を紹介しました。この人たちが、冊子を読んで、少しでも吃音と共に生きるヒントを得られたらと願っています。
日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2023/01/16
「スタタリング・ナウ」1999.7.17 NO.59を紹介します。
気持ちが楽になって、生きる勇気がわく本
三木善彦 大阪大学人間科学部教授
私は読売新聞「人生案内」の回答者の一人ですが、最近別掲のような質問が届けられました。吃音について以前にも伊藤伸二さんに相談したことを思い出し、連絡をとって今回もすてきなアドバイスを得て、よい回答ができました。そのとき「最近いい冊子が出ましたので」と送って下さったのが、冊子『吃音と上手につきあうための吃音相談室』でした。
この冊子はこれまでの吃音の原因論や治療論を公平な観点から述べ、ご自分の経験やいろいろな人の経験を踏まえて、「吃音と上手につきあう」コツを分かりやすく紹介しています。本書を読めば、どもる人やその家族がもちやすい罪悪感や自責感、あるいは劣等感を解消し、生きる勇気が湧いてくるように思いました。
ことばの障害に限らず、どのような障害や後遣症や病気であっても、そのハンディキャップを本人がどのように受け取るかが、その人の人生の質を決めるのではないでしょうか。ハンディキャップをもつと、それに引け目を感じて消極的になり、対人関係を避け、障害がなくなった日を夢見ながら生きがちです。しかし、ハンディキャップをもちながらも、もちろん時には嘆いたり悲しんだり恥ずかしく思ったりしながらも、積極的に対人関係を楽しみ、自分のやりたいことをする姿勢の人も多くいます。
本書によって吃音に悩む多くの人や家族や教師や仲間が、吃音への理解を深めていくことと思います。たぶん、この本は好評でそのうち売り切れると思いますので、次に印刷するときは、伊藤さんが全国巡回相談会で全国行脚のとき「どもりながらも、明るく、健康に自分なりの豊かな人生を送っている」人々に出会って感動した話がありましたが、私たちも誌上でだけでも会いたいので、このような人たちの手記などを載せていただければありがたく思います。

○自分で言うのも変ですが、私は人間はよいと思っています。でも、吃音でことばが出るのが少し遅れるだけで相手の態度が変わるのがくやしいです。言いたいことが2割くらいしか言えず、伝えたいことが思ったように伝わっていない気がします。どもらずに話せないのかと言われると、よけいにのどに力が入り、口ごもってしまいます。何にしても損しているのが目に見えるので、治るものなら治したいです。(福岡県・T)
○わが家の5歳の長男は、3歳の夏に急にどもり始め、何か言い始めたら最初のことばが出せなく、本人も苦しんでいます。ゆっくりしゃべったらいいよと言ったりしているのですが、そのことでしゃべるのもいやになっても困るのでじっと聞いているのですが、そうかと思うと、どもらずにしゃべるときもあってどうなっているのだろうと首をかしげています。病院に相談に行こうかと悩み、どうしようと思っていたら、新聞の記事が目に入りました。ある所で、母親の愛情不足じゃないですかと言われましたが、そんなものなんでしょうか。(姫路市・Y)
○中学1年生の娘をもつ母親です。3歳のときから徐々に悩み始めました。落ち着いて話せと親として子どもに押しつけていたような気がします。私よりも子どもの方がもっと悩んでいるのにと思うのですが、つい口に出てしまいます。中学に入ってから緊張と不安からでしょうか、今まで以上にひどくなってきました。ひとりでずっと悩んできたと言われるAさんの気持ち、よく分かる気がします。この本をぜひ読んで娘と一緒にがんばってみたいと思います。(神奈川・H)
○小学校5年の長男です。ことばを喋り始めたときから、どもっています。今は、先生方の指導や友だちに恵まれ、どもりながらも一生懸命話します。でも、このまま一生この子は治らないのかと思うと、将来がとても不安です。これからの親の心構え、また本人が嫌な思いをしたときの乗り越え方など、参考にしたいと思いました。(静岡・Y)
○6歳になりますが、3歳頃からずっとどもりで悩んでいます。来年から小学校です。彼は精神的に弱いところがあり、気もやさしく他人のことをとても思いやる事のできるタイプの子どもです。専門の先生にもどもりになりやすいタイプの子どもだと言われました。本当にそうなのでしょうか。困っていたところでした。(埼玉・E)
○小学校4年生の息子、3歳頃からどもり始めました。神経小児科やことばの教室にも行きました。本人もどもることにめげて暗くなったり落ち込んだりはしないで明朗活発です。以前に比べて少しよくなったりまたひどくなったりと波があるようです。本人も吃音を自覚していて、一生懸命頑張っています。私たち親も気にしていないといえばうそになりますが、本人の全てを認めて成長を見届けたいと思っています。しかし、本心は完全に治ってくれればと思っています。この本を息子と一緒に読んで吃音と向き合っていきたいと思います。(山口・M)
○私は35歳の主婦ですが、子どもの頃から吃音で悩んでいます。現在では、自分の子どもにも真似をされ、ばかにされています。仕事や対人関係もうまくいかず、落ち込んでいる次第です。特にひどいときは独り言を言うのさえままならないくらいです。(茨城県・H)
○15歳の女子高生です。授業中、声がのどのところまで来ていても、喋ろうとするとことばが出ないのですが、友だちや家族とだとことばが出ます。だから、吃音のときとそうでないときがあるのです。私にとって今とても辛いのは、授業中です。ちゃんと予習などをして理解していても当てられると声が出ないために理解していないと思われるのがとても辛いです。高校生活もまだスタートしたばかりだし、人生もまだまだ先は長いので、吃音の治療法も確立されていないのだったら、いっそのこと吃音と上手につきあっていこう、そして吃音でも楽しい人生にしようと思い、この冊子を読もうと思いました。(仙台市・N)
○小学校4年の娘、毎日の宿題の音読で苦しそうな表情をしていると、心が痛みます。(埼玉・K)
冊子を申し込んできた時の手紙の内容を紹介しました。この人たちが、冊子を読んで、少しでも吃音と共に生きるヒントを得られたらと願っています。
日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2023/01/16