1998年の吃音ショートコースの最終日、最後のプログラムは、谷川俊太郎さんの詩のライブでした。谷川さんのおしゃべりと詩の朗読をたっぷり2時間。参加者のリクエストにもこたえて、詩を次々に読んでいただきました。満ち足りた時間でした。その前座として、谷川さんの詩『生きる』をもじって、成人のどもる人5人が『どもる』という詩をその場で即興で作ったものを発表しました。谷川さんは「立派な替え歌だ」とほめてくださいました。2つを並べて紹介します。
日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2022/11/09
生きる
谷川俊太郎
生きているということ
いま生きているということ
それはのどがかわくということ
木もれ陽がまぶしいということ
ふっと或るメロディを思い出すということ
くしゃみすること
あなたと手をつなぐこと
生きているということ
いま生きているということ
それはミニスカート
それはプラネタリウム
それはヨハン・シュトラウス
それはピカソ
それはアルプス
すべての美しいものに出会うということ
そして
かくされた悪を注意深くこばむこと
生きているということ
いま生きているということ
泣けるということ
笑えるということ
怒れるということ
自由ということ
生きているということ
いま生きているということ
いま遠くで犬が吠えるということ
いま地球が廻っているということ
いまどこかで産声があがるということ
いまどこかで兵士が傷つくということ
いまぶらんこがゆれているということ
いまいまが過ぎていくこと
生きているということ
いま生きているということ
鳥ははばたくということ
海はとどろくということ
かたつむりははうということ
人は愛するということ
あなたの手のぬくみ
いのちということ
どもる
どもるということ
いまどもるということ
それはのどがかわくということ
まわりの目がまぶしいということ
ふっと嫌なできごとを思い出すということ
まばたきすること
一人で手をふること
どもるということ
いまどもるということ
それは自己紹介
それはデートの誘い
それは羽仁進
それはマリリン・モンロー
それは谷川徹三
すべての個性的なものに出会うということ
そして
効率優先の現代社会を注意深くこばむこと
どもるということ
いまどもるということ
つまるということ
かくすということ
にげるということ
不自由ということ
どもるということ
いまどもるということ
いまハンドルを切りそこねるということ
いま切符を買えず遠くへ行けないということ
いま衆人の注目をあびるということ
いまとっさに言い訳ができないということ
いまいたずら電話と間違えられるということ
いまいまが過ぎていくこと
どもるということ
いまどもるということ
人は注目するということ
人は笑うということ
雰囲気がなごむということ
人は愛するということ
あなたの手のぬくみ
いのちということ
日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2022/11/09

今、伊豆の伊東に来ています。伊豆と小田原は、そんなに離れていません。どこよりもまず、小田原に行きました。小田原にある「外郎家(ういろうけ)」、ナビに入れると、ちゃんと出てきます。ナビを頼りに着くと、そこは、まるでお城です。店に一歩入ると、お菓子のういろうが並べられていました。間違ったかと思いましたが、奥のほうに、白衣の人がいて、その前には、確かに、「透頂香(とうちんこう)」という薬が並べられています。腹痛、風邪、咳などによいようです。喉が弱い僕にはぴったりの薬でした。今も、小田原の外郎家で対面でのみ、販売されているそうです。昔ながらの製法のため、大量に作ることはできず、店に来た人にだけ販売しているとのことでした。早速2箱、手に入れました。途切れることなく、お客はあり、みんな、2箱ずつ購入していきます。
「小田原家と外郎家」のしおりにはこう書かれています。
台本を見ないで言えるほど知っていた外郎売りの台詞、まさかこの話が本当で、現在も作られ、販売されているとは。生きていると、こんなにも面白い、不思議な出会いもあるものなんだなあと、うれしくなりました。