伊藤伸二の吃音(どもり)相談室

「どもり」の語り部・伊藤伸二(日本吃音臨床研究会代表)が、吃音(どもり)について語ります。

ちば吃音親子キャンプ

吃音の秋〜第6回ちば・吃音親子キャンプ 初日〜

 しばらくブログをお休みしました。第6回ちば・吃音親子キャンプに参加していたためです。
 今日からまた再開します。

旗 「吃音の秋」がスタートしました。3週連続で、吃音関連のイベントです。
 まず最初は、10月5・6日の第6回ちば・吃音親子キャンプです。僕たちの仲間である千葉市のことばの教室の担当者の渡邉美穂さんが企画・運営しています。渡邉さんは、滋賀県で行っている吃音親子サマーキャンプの常連スタッフです。滋賀県まで行くのはちょっと遠いという人のために、滋賀でのキャンプのような場を地元千葉で作りたいと思った渡邉さんは、準備を重ねてきて第1回を開催し、今年はもう6回目になりました。
 ちばキャンプの大きな特徴は、参加者全員によるオープンダイアローグ。金魚鉢(フィッシュ・ボウル)と呼ばれる形式で、みんなで対話をします。去年45名だった参加者が、今年は80名になりました。初参加者も多いのですが、リピーターの子どもも多く、「オープンダイアローグ、ああ、あれね」と言う頼もしい子もいるそうです。初日夜の総勢80名でのオープンダイアローグ、とても楽しみです。

開会のつどい 渡邉挨拶開会のつどい 全体 僕たちは、前日の金曜日に千葉入りしました。
 初日、渡邉さんにホテルまで迎えに来てもらって、会場に到着しました。11時から、スタッフの打ち合わせがあり、それぞれ最後の準備をして、参加者を待ちます。
 13時過ぎからはじめの会があり、出会いの広場と続きます。
出会いの広場1出会いの広場3 出会いの広場は、たんたん・どんどんゲームから。あることばの教室担当者のオリジナルゲームです。リズムに合わせて、手拍子をしたり足踏みをしたりするのですが、シンプルなだけにおもしろいものでした。毎年担当しているその人は、今年はどうしようかなあといろいろ考え工夫されていると聞きました。次は、おなじみの4つの窓でした。好きな食べ物は? ラーメン、オムライス、焼き肉、おすしの4つの中から選び、同じ答えの者どうしが集まり、話し合います。2問目は、いろんなことがあって疲れたなあというときにどうする? どういうときが幸せを感じるか? でした。おいしい物を食べる、人と話す、音楽を聴いたり演奏したりする、運動をする、本を読む、この中から選びました。
 出会いの広場の活動を通して、初めての参加者の顔が緩んできたのが印象的でした。
DVD視聴 この後は、視聴覚室で、DVDを2つ観ました。今、制作中の吃音親子サマーキャンプの紹介動画と、今年1月、NHK EテレのハートネットTVで放送された「フクチッチ」の番組です。「フクチッチ」で、吃音が取り上げられ、吃音の歴史の中で、「吃音者宣言」が大きな転換点だとして、僕が自宅で取材を受けたものです。番組は、講談の語り口ですすめられ、吃音者宣言が紹介されました。
保護者との話し合い2保護者との話し合い1 この後は、親子別々のプログラムです。保護者との話し合いは、夕食の6時過ぎまで続きました。僕の話を聞くのが初めてという人が多かったので、僕にとっても、新鮮でした。
 今回、ちばキャンプで、僕が伝えたいと思ったことは、「非認知能力」です。これを伝えるために、僕は、自分の体験を話しました。吃音に悩み、勉強を全くしなかった僕は、いわゆる認知能力は低かったと思います。そんな僕が、大学に行き、21歳で生き方を変えることができたのは、僕にどんな力があったのだろうか、そんな問いかけをして、非認知能力について考えてもらいました。
 この間、子どもたちは、強みのワークをしたそうです。ポジティブ心理学の24の強みの中から、自分の強みを探し、それに理由を添えて画用紙に書き、ワッペンも作りました。好奇心が強いとか、向上心があるとか、コミュニケーション力があるとか、難しいことばを使うことに心地よさを感じながら、自分をみつめていた子どもたちでした。
 夜は、全員で大きな輪を作り、真ん中に椅子を5脚出し、オープンダイアローグのフィッシュ・ボウルです。今年のちばキャンプの参加者が昨年から大幅に増えて、80名。総勢80名が一堂に会してのフィッシュ・ボウルは、見事でした。リピーターの子どもたちが多く、その子たちの動きに触発されて、話し合いの大きな渦が形成されていったように思います。真ん中にずうっといた僕は、たくさんの質問を受けました。
・バカにされたとき、どうした?
・「吃音」ということばの由来は?
・なぜどもるのか?
・吃音のことをどう思っているのか?
・もし、治療法がみつかったら、治しますか?
・どもることを「自然現象だから」と説明した子がいたが、それをどう思うか?
・どもることは失敗だと思うので、恥ずかしいから、朝早く起きて練習をしていることをどう思うか?
・日直のとき「早く言え」と言われて嫌だった。どうしたらいい?
・なぜ、長年、吃音の研究を続けてきたのか?

フィッシュ・ボウル1フィッシュ・ボウル2フィッシュ・ボウル3 一問一答にならないよう、やりとりをしながら、答えるようにしました。長いはずの時間があっという間に過ぎてしまいました。
 夜の8時30分頃まで、その時間は、僕にとって、幸せな時間でした。
 こうして、一日目が終わりました。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2024/10/08

ちば吃音親子キャンプ、無事終わりました

 しばらくお休みしました。
ちばキャン9 旗ちばキャン3 渡邉さん 10月1・2日は、第4回ちば吃音親子キャンプでした。僕たちの仲間の、ことばの教室担当の渡邉美穂さんが中心になって、企画・開催してくれました。僕は、第1回から参加しています。今年は、呼びかけるのがとても送れたので参加者が集まらないかも、と聞いていたのですが、渡邉さんもびっくりの60名の申し込みがありました。
 3年ぶりの対面での開催、やはりこのような機会を待っていてくださったのだろうと思います。会場は、千葉市少年自然の家です。緑豊かな自然の中、さわやかな風が吹き抜けるすてきな会場でした。
ちばキャン1 受付ちばキャン4 全員 10月1日の昼過ぎ、参加者が集まってきます。出会いの広場で、ゲームなどを楽しんだ参加者の顔を見ると、初めの緊張がだんだんと緩んでいきました。
ちばキャン8 伸二 14時から17時まで、僕は、保護者やスタッフを対象に話をしました。初めは、参加者に質問を書いてもらい、それにすべて答えました。聞きたかったことがあるのに、違う話を聞いた、ということにならないよう、本当に知りたかったことを知って、帰っていただきたいと思うからです。思いのほかたくさんの質問が出て、時間が足りなくなりました。
 すべての質問に答えてから、後半は、子どもにとって、大切な「三間」の話をしました。これは、トーベ・ヤンソンのムーミンの話を聞いて、それを僕なりに吃音とからめてよく話をしているものです。「三間」とは、空間・時間・仲間のことです。家庭やことばの教室が、子どもにとって大切な「三間」になってほしいと思っています。そのために、子どもにどのようなことばをかけたらいいのだろう、どのような姿勢でいたらいいのだろうと、話をすすめ、プラスのストロークについて、みんなから意見を出してもらいました。
 プラスのストロークを、言語的・非言語的・身体的の3つに分け、ホワイトボードに書き上げました。たくさん出てきました。これらを浴びるように日常生活を送ると、子どもたちはきっと自己肯定感が高まることでしょう。
ちばキャン6 フィッシュボウル 夕食の後は、全員が集まって、吃音について考えました。人数が多いから難しいかなと思ったのですが、真ん中に椅子を4脚並べて、そこに話したい人が出てきます。話したいことを話せたら、外に出ます。周りは、聞く人ですが、椅子が空いたら、出てくることができます。オープンダイアローグのひとつの手法、フィッシュボウルの形を取り入れてみました。いい意味での緊張感があり、集中できて、いい話し合いになりました。
 2日目の午前中は、作文教室からスタートです。エピソードをひとつ思いだし、それについて書いていきました。書きにくそうにしている子どもたちもいましたが、そばに行って、少し話をしていくと、思い出すようです。保護者も含めて全員が書きました。作文と平行して、スタッフ向けに話をしました。二回目の吃音について話し合いをしたり、吃音キャラクターを描いたりして、昼食です。最後は、全員が輪になって、ふりかえりをしました。広い研修室いっぱいになったその光景は、迫力がありました。
ちばキャン7 ふりかえり
 7月末の、親、教師、言語聴覚士のための吃音講習会、8月の吃音親子サマーキャンプ、そして、10月初旬のちばキャンプ。いずれも、対面で開催しています。
 相手の表情を直に感じ取り、ことばの温かさや優しさを肌で感じ、自分の感情がしっかりと相手に届いているのを確かめることのできる、とてもいい時間でした。

 大阪に帰ってきてすぐに、「スタタリング・ナウ」の入稿に向けての準備をしていて、しばらくブログをお休みしました。入稿は終わりました。そして、今週末は、第5回新・吃音ショートコースです。準備不十分のまま、突入しそうです。まず、参加者が集まって、プログラムを作ることから始まるワークショップなので、まっ、いいかと思っています。
 新・吃音ショートコースの申し込みは、ぎりぎりまでOKです。ぜひ、ご一緒してください。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2022/10/07
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