鹿児島県の県大会の翌日は、僕たちの仲間のことばの教室担当者の溝上茂樹さんが勤める学校で、どもる子どもや保護者との「吃音交流会」でした。コロナ前に何度か取り組まれていたようですが、今回が久しぶりの対面での交流会だったそうです。
初めは、保護者との時間でした。小1、小2、小4、小5、それぞれの子どもたちの保護者が9人集まってくださいました。簡単に自己紹介をしてもらいました。明るくて元気な子が多いという印象でした。その後、僕はちょっと長めに自己紹介をして、こんな体験をしている僕に、どんなことでも聞いてほしいとお願いしました。僕は、健康生成論については必ず伝えようと思っていましたが、まずは保護者のみなさんが聞きたいと思っていることを出してもらうことから始めました。
○今まで楽観的に過ごしてきたが、もうすぐ思春期を迎える。これから親として何ができるだろうか。
僕は、先日、テレビで見た大阪府吹田市のいじめ予防プログラムを例として出して、事後対応に追われるのではなく、予防的に取り組む必要があるのではと前置きしてから、これから大変な時期を生きる子どもたちに生きる武器を手渡したいと話しました。
生きる武器というのは、子どものもっている強みです。それを一緒に探して、育てていくことが大切です。転ばぬ先の杖で、親が先回りをして不安や壁になっていることを取り除くのではなく、子ども自身が自分の課題に挑戦し、悩み、仮に笑われたとしても、笑われることに耐え、何かあったとしても自分を立て直すことのできる子どもになってほしいのです。あれだけ悩んだことが、今の僕の財産になっていると思います。ぜひ、子どもと話をし、対話をして、今、子どもが抱えている課題を把握してほしいとお願いしました。
○新学期のたびに、新しい担任に理解してほしいと書いてきた。これでいいのだろうか。
本人がそれを望んでいるのならいいけれど、親が勝手に書くのはどうかと思います。書く前にに必ず相談することです。子どもが書いてほしいというのなら、なぜ書いて欲しいのかをはっきりと確認し、どう書こうかと相談することです。今まで出会った子どもの中に、理解してほしいではなく、僕の話し方に慣れてほしいと言った子がいました。自分の身の周りの人にどう理解してほしいかは、どもる子ども本人に決定権があります。親としてはこうあってほしいと思うことはあるかもしれないけれど、親の課題と子どもの課題はちゃんと分ける必要があると思います。
○子どもは自分のどもりのことも含めて話をあまりしないし、将来の夢ももっていないようだ。しゃべらなくてもいいから大工になりたいと言っているが、将来を狭めているような気がする。本心からではないようにも思える。どう声をかけていいのだろうか。
対話が大事です。なぜ、大工になろうと思ったのか、本当にしたい仕事としてのイメージをもてるのか、ただしゃべることが少ないことだけで考えたのか。ぜひ聞いてください。しゃべることが少ない仕事を目指すとしても、大工以外にないのかということも考えたいです。どもる人の中には、あえて話すことの多い仕事を選んだ人はいっぱいいます。そして、それがよかったと言っている人は少なくありません。どもる人がどんな仕事に就いているのか、吃音と就職について、日本吃音臨床研究会のホームページに動画があるので、それを見てほしいと思いました。保護者が「吃音と職業・就職」について情報をもっておくことが大事だと思います。世界の著名などもる人の話をし、劣等感の直接・間接補償についても話を広げました。
長く設定してもらったはずの話し合いの時間があっという間に終わりに近づき、僕は、ぜひ話しておきたかった健康生成論についてコンパクトにまとめて話しました。コロナのことで説明するとわかりやすいようです。過酷な環境の中で、生き抜いてきている人はいます。吃音は、その人たちと比べると、そこまで大変なことではありません。どもることを認め、覚悟を決めれば、上手につき合っていくことができます。健康生成論が出てきたアウシュビッツの話も、子どもに分かるように話しておくこともいいのではと伝えました。 その後は、別室にいる子どもたちとの時間でした。
日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2023/06/19

○今まで楽観的に過ごしてきたが、もうすぐ思春期を迎える。これから親として何ができるだろうか。
僕は、先日、テレビで見た大阪府吹田市のいじめ予防プログラムを例として出して、事後対応に追われるのではなく、予防的に取り組む必要があるのではと前置きしてから、これから大変な時期を生きる子どもたちに生きる武器を手渡したいと話しました。
生きる武器というのは、子どものもっている強みです。それを一緒に探して、育てていくことが大切です。転ばぬ先の杖で、親が先回りをして不安や壁になっていることを取り除くのではなく、子ども自身が自分の課題に挑戦し、悩み、仮に笑われたとしても、笑われることに耐え、何かあったとしても自分を立て直すことのできる子どもになってほしいのです。あれだけ悩んだことが、今の僕の財産になっていると思います。ぜひ、子どもと話をし、対話をして、今、子どもが抱えている課題を把握してほしいとお願いしました。
○新学期のたびに、新しい担任に理解してほしいと書いてきた。これでいいのだろうか。
本人がそれを望んでいるのならいいけれど、親が勝手に書くのはどうかと思います。書く前にに必ず相談することです。子どもが書いてほしいというのなら、なぜ書いて欲しいのかをはっきりと確認し、どう書こうかと相談することです。今まで出会った子どもの中に、理解してほしいではなく、僕の話し方に慣れてほしいと言った子がいました。自分の身の周りの人にどう理解してほしいかは、どもる子ども本人に決定権があります。親としてはこうあってほしいと思うことはあるかもしれないけれど、親の課題と子どもの課題はちゃんと分ける必要があると思います。
○子どもは自分のどもりのことも含めて話をあまりしないし、将来の夢ももっていないようだ。しゃべらなくてもいいから大工になりたいと言っているが、将来を狭めているような気がする。本心からではないようにも思える。どう声をかけていいのだろうか。
対話が大事です。なぜ、大工になろうと思ったのか、本当にしたい仕事としてのイメージをもてるのか、ただしゃべることが少ないことだけで考えたのか。ぜひ聞いてください。しゃべることが少ない仕事を目指すとしても、大工以外にないのかということも考えたいです。どもる人の中には、あえて話すことの多い仕事を選んだ人はいっぱいいます。そして、それがよかったと言っている人は少なくありません。どもる人がどんな仕事に就いているのか、吃音と就職について、日本吃音臨床研究会のホームページに動画があるので、それを見てほしいと思いました。保護者が「吃音と職業・就職」について情報をもっておくことが大事だと思います。世界の著名などもる人の話をし、劣等感の直接・間接補償についても話を広げました。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2023/06/19