3月に飛び込んできた、荒神山自然の家食堂閉鎖のお知らせから始まった今年の吃音親子サマーキャンプ。最初のオリエンテーションでまた衝撃的な事実が明らかになりました。荒神山自然の家そのものの存続が危ぶまれているとのことでした。長く使わせてもらい、サマーキャンプと言えば荒神山、だったので、なんとも言えない寂しい気持ちになりました。敷地内にある小山、そこに一本すくっと立つクスノキ。以前、2日目の夕食は、その小山の下のクラフト棟で、みんなでカツカレーを食べました。
僕は、ここでのカツカレーの夕食風景が大好きでした。TBSのドキュメンタリー番組「報道の魂」が放送されたとき、何度もその光景が出てきました。そのときのDVDを何度も見ているせいか、その光景は頭の中にこびりついています。吃音ファミリーが集まり、わいわいがやがや話をしながら、カレーを食べる光景はなんともいえません。食堂のおじさんがほんまにこんなにたくさんいいの?と思うくらいカツを奮発してくれました。競い合っておかわりしていた若者たちがいました。余ったご飯でおにぎりを作っている人もいました。そんな他愛もない光景が、懐かしく思い出されます。
コロナ以降、異常気象も影響して、蚊が大量発生し、クラフト棟で食事をとることができなくなり、残念に思っていました。
初日、大阪のスタッフが僕の自宅まで来てくれて、荷物と僕たちを運んでくれます。
最近は、先発隊が早く自然の家に着いて、資料や台本の製本、シーツの配布、お茶の用意など、してくれるようになりました。何の特別なお願いもしていないけれど、みんなそれぞれ動いてくれます。用意ができた頃に、河瀬駅を出発した送迎バスが到着します。砂利道を通って自然の家に到着した参加者やスタッフを迎えるのが、僕の最初の仕事です。懐かしい顔、初めての顔、少し緊張しながら、でもそれ以上にわくわくしながら、歩いてくるみんなを迎えました。
そのような光景を何度も見ている、荒神山自然の家の所員の方が、オリエンテーションのとき、こんな話をしてくれました。
「私は、吃音親子サマーキャンプのみなさんを迎えると、『おかえりなさい』と言いたくなります。他のグループと違って特別のようにいつも思ってきました。おじいちゃん(僕、伊藤伸二のことでしょう )のところに、全国から子どもたちがお盆休みに帰ってくる、そんな温かいものをいつも感じていました。みなさんと会えなくなるのは、私たちとしても寂しいです」
この、オリエンテーションの後、スタッフ会議。初めて顔を合わせるスタッフがぐるりと輪をつくり、自己紹介をして、一日のプログラムを確認しました。初めての参加のスタッフも、細かい説明なしに、まずは体験してもらいます。それが3日間のスケジュールをこなしていけるのがとても不思議です。
開会のつどいで、あいさつをし、参加者を紹介し、第34回吃音親子サマーキャンプが始まりました。
出会いの広場は、毎年、千葉のことばの教室担当者の渡邉美穂さんが担当してくれます。まだ緊張が残る参加者の顔がいつの間にか和やかに、穏やかに変わっていきます。むちゃ振りかと思えるような表現の課題にも、グループごとに歌を歌い、振り付けをし、みんなの前で披露していました。すっかりリラックスしている参加者でした。
夕食、この日の夕食だけは食堂から提供してもらえました。
その後は、子どもは年代ごとに、親は4つのグループに分かれて、話し合いです。初参加の多い小学1・2年生グループも、それなりに話し合いをします。ここは、吃音親子サマーキャンプ、吃音について真剣に考える空間なのです。
一日目の最終は、スタッフによる上演です。7月に2日間の合宿で、東京学芸大学准教授の渡辺貴裕さんから芝居のレッスンを受けた者が、今年はこんなお芝居だよと、みんなの前で上演します。実は、毎年スタッフとして参加しているけれど、今年はどうしても都合がつかず参加できないと言っていたスタッフが初日だけはなんとか参加できるようになったと言って、事前のレッスンにも参加し、初日に劇の上演に出演して、自然の家を後にしました。遠いところから、そこまでして参加してくれるのかと、本当にありがたくうれしく思いました。そういえば、以前、参加できないけれど芝居に使う小道具を作ったスタッフがわざわざそれだけを届けてくれて、神奈川県にとんぼ返りしたこともありました。吃音親子サマーキャンプへの「愛」がいっぱいのスタッフたちです。
長い一日が終わり、午後9時過ぎからスタッフ会議をしました。ふりかえりをして、明日のプログラムの確認です。話し合いの場面の子どもの様子をみんなで共有しました。気になる子どもや保護者のことは、それぞれが心に留めていきます。手を出さすぎないよう、さりげなく気遣い、見守っていくサマキャンのスタッフたち、見事です。
一日目の報告です。つづきます。
日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2025/08/30
僕は、ここでのカツカレーの夕食風景が大好きでした。TBSのドキュメンタリー番組「報道の魂」が放送されたとき、何度もその光景が出てきました。そのときのDVDを何度も見ているせいか、その光景は頭の中にこびりついています。吃音ファミリーが集まり、わいわいがやがや話をしながら、カレーを食べる光景はなんともいえません。食堂のおじさんがほんまにこんなにたくさんいいの?と思うくらいカツを奮発してくれました。競い合っておかわりしていた若者たちがいました。余ったご飯でおにぎりを作っている人もいました。そんな他愛もない光景が、懐かしく思い出されます。コロナ以降、異常気象も影響して、蚊が大量発生し、クラフト棟で食事をとることができなくなり、残念に思っていました。
初日、大阪のスタッフが僕の自宅まで来てくれて、荷物と僕たちを運んでくれます。
最近は、先発隊が早く自然の家に着いて、資料や台本の製本、シーツの配布、お茶の用意など、してくれるようになりました。何の特別なお願いもしていないけれど、みんなそれぞれ動いてくれます。用意ができた頃に、河瀬駅を出発した送迎バスが到着します。砂利道を通って自然の家に到着した参加者やスタッフを迎えるのが、僕の最初の仕事です。懐かしい顔、初めての顔、少し緊張しながら、でもそれ以上にわくわくしながら、歩いてくるみんなを迎えました。
そのような光景を何度も見ている、荒神山自然の家の所員の方が、オリエンテーションのとき、こんな話をしてくれました。
「私は、吃音親子サマーキャンプのみなさんを迎えると、『おかえりなさい』と言いたくなります。他のグループと違って特別のようにいつも思ってきました。おじいちゃん(僕、伊藤伸二のことでしょう )のところに、全国から子どもたちがお盆休みに帰ってくる、そんな温かいものをいつも感じていました。みなさんと会えなくなるのは、私たちとしても寂しいです」
この、オリエンテーションの後、スタッフ会議。初めて顔を合わせるスタッフがぐるりと輪をつくり、自己紹介をして、一日のプログラムを確認しました。初めての参加のスタッフも、細かい説明なしに、まずは体験してもらいます。それが3日間のスケジュールをこなしていけるのがとても不思議です。
開会のつどいで、あいさつをし、参加者を紹介し、第34回吃音親子サマーキャンプが始まりました。
出会いの広場は、毎年、千葉のことばの教室担当者の渡邉美穂さんが担当してくれます。まだ緊張が残る参加者の顔がいつの間にか和やかに、穏やかに変わっていきます。むちゃ振りかと思えるような表現の課題にも、グループごとに歌を歌い、振り付けをし、みんなの前で披露していました。すっかりリラックスしている参加者でした。
夕食、この日の夕食だけは食堂から提供してもらえました。
その後は、子どもは年代ごとに、親は4つのグループに分かれて、話し合いです。初参加の多い小学1・2年生グループも、それなりに話し合いをします。ここは、吃音親子サマーキャンプ、吃音について真剣に考える空間なのです。
一日目の最終は、スタッフによる上演です。7月に2日間の合宿で、東京学芸大学准教授の渡辺貴裕さんから芝居のレッスンを受けた者が、今年はこんなお芝居だよと、みんなの前で上演します。実は、毎年スタッフとして参加しているけれど、今年はどうしても都合がつかず参加できないと言っていたスタッフが初日だけはなんとか参加できるようになったと言って、事前のレッスンにも参加し、初日に劇の上演に出演して、自然の家を後にしました。遠いところから、そこまでして参加してくれるのかと、本当にありがたくうれしく思いました。そういえば、以前、参加できないけれど芝居に使う小道具を作ったスタッフがわざわざそれだけを届けてくれて、神奈川県にとんぼ返りしたこともありました。吃音親子サマーキャンプへの「愛」がいっぱいのスタッフたちです。
長い一日が終わり、午後9時過ぎからスタッフ会議をしました。ふりかえりをして、明日のプログラムの確認です。話し合いの場面の子どもの様子をみんなで共有しました。気になる子どもや保護者のことは、それぞれが心に留めていきます。手を出さすぎないよう、さりげなく気遣い、見守っていくサマキャンのスタッフたち、見事です。
一日目の報告です。つづきます。
日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2025/08/30
今日は、2012年5月12・13日、東京の都市センターホテルで行われた、日本小児科医師会の第14回「子どもの心」研修会での講演を紹介します。吃音否定から吃音肯定へ、僕自身の体験、出会った多くの人や子どもたちの体験をもとに、一所懸命話したことを覚えています。2回に分けて、紹介します。
吃音治療の歴史