今日で8月も終わり。明日から9月です。
吃音親子サマーキャンプが終わって2週間、昔の「スタタリング・ナウ」を紹介していますが、ちょうどサマーキャンプに関係する内容が続いています。
今日紹介する巻頭言は、「たいしたことはできないが」です。僕の口癖のようになっていることばです。「スタタリング・ナウ」2006.10.21 NO.146 を紹介します。
日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2024/08/31
吃音親子サマーキャンプが終わって2週間、昔の「スタタリング・ナウ」を紹介していますが、ちょうどサマーキャンプに関係する内容が続いています。
今日紹介する巻頭言は、「たいしたことはできないが」です。僕の口癖のようになっていることばです。「スタタリング・ナウ」2006.10.21 NO.146 を紹介します。
たいしたことはできないが
日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二
「たいしたことはできないが、ひとりの人間としてその人に誠実に向き合い、一所懸命かかわれば何かが変わる。人間の変わる力を確信している」
「人と人とは援助する側される側の役割はあったとしても、人間としては対等であり、同行者である」
「その人の現在を決して否定しない」
大学や言語聴覚士の専門学校など、対人援助の仕事に就いている人、就こうとしている人への講義や講演などで私が常に言い続けていることだ。
吃音親子サマーキャンプは、17年間、ずっとこのことを貫いて行われてきた。私は吃音親子サマーキャンプのはじめにあたって、必ずこう話す。
「このキャンプは、世話する人と世話される人、参加者とスタッフという垣根はない。スタッフも九州や関東地方などのことばの教室の教師や言語聴覚士が、交通費を使い、参加費を払って参加しているのであり、参加者全員が対等なのだ。私たちは自らがキャンプが楽しくておもしろいから、計画をし、運営をしている。参加者のためというよりも自分自身のために参加している。私たちは勝手にキャンプを楽しむので、皆さんも勝手に自分で動いて自分で楽しんで欲しい。少年自然の家はホテルや旅館とは違ってサービスはない。私たちも一切サービスはしないが、子どもたちには精一杯かかわる」
子どもと親の同行者である40名のスタッフは、キャンプがスタートする1時間ほど前に初めて顔を合わせる。半数以上が複数回参加者だが、初めて参加する人も少なくない。キャンプの会場で初めて出会って、事前の打ち合わせがないままに、150名近くの参加者の2泊3日のキャンプが運営されていく。
私たちは子どもの吃音を軽くしようとか、治そうとはしない。吃音を否定しない。マイナスのものと考えない。だからといって、「どもってもいい」と子どもたちに直接言っているわけではない。どもる私たちが平気でどもりながら話し合いに参加し、劇の見本の上演ではひどくどもりながらも最後まで演じきる。つまり、キャンプの場ではどもることばがあふれ、どもっているのが自然な空間なのだ。初参加の中学生が「どもっているのが当たり前で、気兼ねなくどもれるのがうれしい」と言った。どもって当たり前の空間の中で、子どもたちは「どもってもいいんだ」「どもっていても大丈夫なんだ」と自らが感じたり考えたりするだけのことなのだ。特別なことは何もしていないと言える。
ただ、子どもたちや親の話し合いに耳を傾け、その都度感じたり考えたりしたことや自分の体験を話す。演劇にしてもどもる子どもたちが声を出すことの喜び、楽しさ、気持ちの良さを味わってほしいと、歌を歌ったり、劇の上演に取り組むのであって、できるだけどもらずに、そつなく劇を上演するために、演劇、表現活動に取り組んでいるわけではない。大勢の前で、どもって声が出なくても、お芝居が中断しても途中で子どもが役を降りてもそれもあり、なのだ。17年間の活動の中で、どもって立ち往生して泣き出した子どもも何人かいた。
しかし、舞台が終わった後は、泣いてすっきりした顔になっていた。そして、その子どもたちは、次の年のキャンプにまた参加し、今度は泣かずに堂々とどもっていた。
たいしたことをしているわけではないが、私たちが一所懸命かかわることで、子どもたちはどんどん変わっていく。そして、吃音と向き合い、吃音と上手につき合い始める。今後、悩んだり落ち込んだり、元気になったり、また悩んだりしながら、自分の人生を生きていくことだろう。キャンプで子どもたちは、私の言うゼロの地点「どもっても、まあいいか」の地点に立ち、そこから歩み始める。子どもたちが自分の力で考え、気づき、行動しているだけで、私たちは、キャンプという場を設定をしているだけだ。変わるのは子どもたちの自己変化力によるものだ。今年も初参加のときと比べて大きく変わった3人の卒業生がいた。
日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2024/08/31
吃音親子サマーキャンプが終わってから10日経ちました。後の細々とした仕事をしながら、キャンプで出会った人たちの顔を思い浮かべています。疲れているだろうにと思うのに、すぐに感想を送ってくれた人もいます。参加者やスタッフからの感想が、今、ぽつぽつと届いています。へえ、そんなことがあったのか、へえ、そんな話をしていたのか、知らないエピソードもたくさん出てきます。それぞれに、3日間を楽しんでいただけたようです。
荒神山劇場に参加したみんなの表情を見ていると、それぞれが達成感に満ちているのが伝わってきて、本当にすばらしい取り組みだな、これに参加できる子は本当に幸せだな〜と感じました。
サマーキャンプの基礎講座もありがたい企画でした。これまで皆様が、どういう思いでキャンプを立ち上げられたのか、何を大事にされているのか、よくわかりました。



いよいよ、最終日となりました。昨日と同じように、朝の放送で起きて、つどいをしました。ここで登場するのが、恒例のシーツシスターズ。いつ頃からそう呼ぶようになったのか、定かではないのですが、シーツ返却係の女性スタッフが、アイドルさながら登場し、シーツの返却のお知らせをします。初日のオリエンテーションで、所員の方から説明がありましたが、最終日、もう一度、返却の仕方をみんなの前で再現してくれるのです。単に連絡の形にしないのが、僕たちの仲間です。シーツシスターズという名前のサマキャンアイドル、1年に一度結成され、今年も大活躍でした。
そして、いよいよ荒神山劇場のはじまりです。前座は、親のパフォーマンス。すてきなオープニングとなりました。そして、子どもたちの劇「王様を見たネコ」が始まりました。どもりながら、でも、楽しそうに参加しています。アドリブも効いています。衣装や小道具は、これまで作ってくれたものと、足りないものはスタッフの西山さんが手作りしてくれました。僕の家には、西山さんや今回参加できないけれど鈴木さんが作ってくれた衣装・小道具が、段ボールに5箱分くらいあります。


お疲れ様でした。
吃音親子サマーキャンプ、2日目の朝6時、起床放送が流れました。つどいの広場では、サマキャン卒業生の若いスタッフが声をかけ、子どもたちが遊んでいます。つどいでは、サマーキャンプの黄色い旗を揚げ、ラジオ体操をしました。放送で流れる「元の隊形に戻ってください」のことばが、「元の体型」を想像させるので、「元の体型には戻られへん!」と、恒例の笑いになっています。
2日目の活動は、作文教室から始まります。毎年恒例の光景ですが、どもる子どもも、その親も、きょうだいも、スタッフも、参加者全員が、原稿用紙に向かいます。吃音にまつわるエピソードをひとつに絞って書きます。話し合いは、みんなで吃音を考えますが、この時間はひとりで自分の吃音に向き合うのです。90分、静かな時間が流れます。もし、作文が書けないとしたら、それはそれで構わないと思っています。みんなが書いている中、書けない自分と向き合うことも大切ではないかと考えているからです。結局、書かなかった子はひとりもいなくて、全員が書き終えました。
午後3時半から、荒神山へのウォークラリーです。それぞれのグループごとに、出発しますが、グループのリーダーはサマキャン卒業生です。何度も登って、荒神山のことはよく知っていますが、事前に自然の家の所員の方と打ち合わせをして、安全第一で、計画を立ててくれました。僕は、実は、このウォークラリーにも参加したことがありません。一度も、荒神山に登ったことがないのです。
子どもたちは、劇の練習です。役の本決めをして、立ち位置も考え、練習に熱が入ります。
河瀬駅に、自然の家行きのチャーターバスを用意しました。いつもの黄色い旗が参加者を出迎えます。初参加組はドキドキしながら、リピーターは1年ぶりの再会を喜び合いながら、バスに乗り込みます。バスが到着する所は、自然の家とは少し離れています。例年、そこまで迎えに行っているのですが、今回は暑さと腰痛のため、勘弁してもらいました。
その後、参加者には部屋に入ってもらって、スタッフ会議です。今年のスタッフは、キャンセルがあって、39名。初めて顔を合わせる者もいます。学習室に集まり、簡単に自己紹介。そして、1日目の流れを確認しました。細かい説明をする時間がないので、初めて参加するスタッフは、訳が分からないままスタートするのですが、不思議なことに、それぞれに様子を見ながら、適切に動いてくれています。見事というほかない、僕たちのスタッフの力です。
参加者を紹介し、3日間生活をするグループに分かれて名札やしおりを渡し、いよいよ活動1の出会いの広場です。これは、千葉のことばの教室の教員の渡邉美穂さんが担当してくれています。初めての参加者の不安が少しでも減り、リラックスして参加できるようにと、エクササイズを工夫して進行していました。1時間ほどの間に、みんなの顔が柔らかくなり、笑い声もたくさん聞かれるようになりました。初参加者も多いのに、かなり難易度の高い表現活動も楽しくこなしている姿を見て、僕は、今年のキャンプもうまくいきそうだと思うのです。
夜8時から、スタッフによる劇の上演です。できるだけせりふを覚えてこようと伝えていたので、みんながんばって覚えてきていました。劇のあらすじをつかんでもらうことと、自分は何の役をしようかなと考えるときの参考にしたもらうこと、が目標です。ちょっと長い劇だったのですが、子どもも親も、真剣に見ていました。いい観客のおかげで、演じたスタッフも、いい感じでした。
申し込みは92名、体調不良、骨折などでの直前のキャンセルが4名で、88名の参加でした。大阪、三重など比較的近くからの参加、遠くは、沖縄、鹿児島、長崎、埼玉、東京、千葉などからも参加がありました。
その後、話し合い、事前合宿で練習したスタッフによる劇の上演で、一日目が終わりました。
今年、スタッフは39名でした。そのうちの10名がサマキャン卒業生です。キャンプ中に稽古をして、最終日に上演をする演劇のためのスタッフのための事前レッスンには、約半分が参加しました。まず、スタッフ自身が楽しんでいる、珍しいキャンプです。
いよいよ明日から、吃音親子サマーキャンプです。地震や台風を気にしながら、準備してきたのですが、昨日の夕方6時過ぎに、「東海道新幹線、東京−名古屋間、16日終日運休」のニュースには驚きました。影響はあるだろうと思っていましたが、まさか運休とは…。