伊藤伸二の吃音(どもり)相談室

「どもり」の語り部・伊藤伸二(日本吃音臨床研究会代表)が、吃音(どもり)について語ります。

2022年08月

第9回親、教師、言語聴覚士のための吃音講習会 2日目報告

 ドキドキしながら始まった3年ぶりの吃音講習会ですが、あっという間に1日目が終わってしまいました。無茶振りに近い僕たちからの提案を、参加者のみなさんが柔軟に受け止めて下さり、対応して下さったおかげです。芝居でも、観客の反応の良さが、役者はもちろん芝居そのものを見違えるほど育てると言います。僕たちと参加者が一体になって、講習会の場を作り上げている、そんな感じがしました。
講習会 牧野 さて、2日目。まず、この吃音講習会の顧問である、国立特別支援教育総合研究所の上席総括研究員であり、研究企画部長である牧野泰美さんの「対話とは何か」の基調提案から始まりました。牧野さんの存在は、僕たちにとってとても大きいです。安心感を与えてくれます。牧野さんは、全国各地のことばの教室とつながりをもち、あちこち動いておられますが、この講習会は、そんな研修会と違ってゆったりと参加できる、国立特別支援教育総合研究所という名前が教育委員会などで役に立つかもしれないと、みんなを笑わせながら、話し始めました。自分の緘黙の体験をベースに、子どもとの関係性について、対話の良さについて、話していただきました。

講習会 有馬インタビュー その後、成人のどもる人へのインタビューです。このコーナーは、これまで2回していて、今回が3回目です。ことばの教室担当者で、どもる子どもにかかわっているけれど、大人のどもる人に会ったことがないという人は少なくありません。今回の講習会でずっと流れているテーマは「どんな子どもに育ってほしいか」ですが、目の前で自分を語ってくれるひとりのどもる人として登場してくれました。今回は、中学生のときに僕たちと出会い、吃音親子サマーキャンプに参加したこともあり、今、大阪吃音教室で一緒に活動している女性です。地方公務員という、3年ごとに部署が変わり、仕事内容も人間関係も新しく作り上げていかなくてはいけない職場で、悩みながら、嫌な思いもしながら、それでも人とのつながりを大切にして、真摯に仕事に向き合っている人です。
 明るく、誠実で、その人柄は、すぐに参加者にも伝わり、彼女の話を真剣に聞いて下さいました。こんな大人になってくれたらいいなあというモデルを、目の前で見てもらったことになるでしょう。最後に、ひとりひとりの感想を聞いて、午前中は終わりました。

講習会 相埜 午後、昨日残した7つの視点のうちの2つを、オープンダイアローグの形で行いました。 その後は、これまでの対話と違い、教材を使ってする対話も紹介しました。吃音チェックリスト、言語関係図、吃音キャラクター、どもりカルタを使って、子どもたちと対話をする、それらをきっかけに対話をすすめるというものです。チェックリストは、もともと大人のどもる人のために作ったものなので、今回は、今から5年前に、大阪吃音教室と出会い、これまで3回、吃音チェックリストをしてその数値の変化に驚き、それがなぜなのか考察した人の発表でした。具体的な人生のできごと、エピソードとともに語られる話を聞きながら、参加者も、子どもたちにどう使えばいいのか、イメージしていただけたことと思います。
 時間がなくなって、言語関係図、吃音キャラクター、どもりカルタは、詳しく紹介することができませんでした。これまでの講習会で何度か紹介しているので、僕たちにとってはもういいかなと思っていたのですが、教材の周りに人が集まり、どう使うのかと質問していました。教材を使っての対話の具体的な話が必要だなと思いました。
 最後は、大きな円を作って座り、ふりかえりです。最初に書いた「どんな子どもに育ってほしいか」を再度、考えて発表しました。最初のものはそのままで、追加したという人、もう少し深いものにしたという人、みなさんいろいろでした。
 講習会全体のふりかえりは、アンケートに書いていただきました。びっしりと書いて下さった方もたくさんおられました。
 みんなに手伝っていただいて、後片付けをして、会場を出たのが午後5時。
 あっという間の2日間でした。開催できるかどうか、開催していいのかどうか、いろいろ迷いましたが、今は、開催できてよかったという思いでいっぱいです。僕たちが大切にしてきた、直の出会い、対面での語り合い、全体をオープンダイアローグの形で通したこと、それに参加者が対応して下さったこと、すべてがすばらしい時間を作ってくれました。 フル回転していた僕の頭は、なかなかその余韻からさめませんが、その疲れは心地よいものでした。ああ、やっぱりこんな時間はいいなあ、開催を待っていて下さった人たちといい時間を過ごすことができたなあ、と心から思います。ありがとうございました。
 ぜひ、来年も。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2022/08/07

講習会 相埜発表全体講習会 ティーチイン1

第9回親、教師、言語聴覚士のための吃音講習会1日目報告

 タイムリーな話題をと思い、長岡花火で寄り道をしました。吃音講習会の報告に戻ります。

 前日に千葉入りした僕たちは、実行委員のメンバーと落ち合い、最終の打ち合わせをしました。キャンセルは5人、参加者は34人と確定したので、少ない人数を活かした講習会にできないだろうかと思い、ふと思いついたことをみんなの前に出してみました。
 「これまでしたことがないから、失敗するかもしれないけれど…」と前置きをして。
 それは、2日間の講習会全体を、オープンダイアローグのようにして、対話の世界にどっぷりつかってみようという試みでした。
 講習会に流れるテーマとして、僕たちが考えていたのは、「どんな子どもに育ってほしいか」でした。その子ども像を明確にして、そのためにどんなことをしていったらいいのか、考えたいと思ったのです。まず参加者に、今、自分が思う「どんな子どもに育ってほしいか」を書いてもらいました。
 そして、オープニングの出口さんの実践発表に入りました。出口さんは、「どのような環境に置かれても自分らしく過ごせるように、しなやかな考えをもってほしい」という明確な子ども像を持って、子どもたちと対話をしていきました。これまでのような、僕の基調提案から始まるという形ではなく、ことばの教室の実践発表から始めたということは、参加者にとって、とっつきやすいものだったようです。穏やかな口調で、子どもとの対話を本当に楽しく語る発表に、みんな引き込まれていきました。また、子どもと対話をしている映像も流れました。子どもも出口さんも、楽しそうです。
 その後、この発表について、質問を受けたり、感想を述べたりするの一般的な形ですが、それを変えてみました。

フィッシュボウル1 出口と フィッシュボウル(金魚鉢)というワークの形ですすめました。
 フイッシュボウルは、多人数で考えや気持ちをシェアするときに使われるワークです。

1 大きな椅子の輪に全員が座り、その内側に 5脚の椅子で小さな輪を作る。
2 提案者と伊藤に加えて、希望者二人が、内側の小さな輪の椅子に座る。もう一脚は空いた席にしておく。
3 内側の輪の中、まず四人が対話し、外側の輪の人はそれにじっと耳を傾ける。
4 外で話を聞いていて、話したくなった人は内側の空いている席に座る。この席は自由席で、出入りするタイミングは自由で、発言してしばらくしたら退席して、空いた席に外側の人が入る。

フィッシュボウル 大きい輪2 実践発表を聞いて、何を感じ、考えたかを、今年、ことばの教室の担当になったばかりの人と、数年経験している人と、僕とが対話をします。そこには、発表した出口さんもいてくれます。質問したり、感想を言ったりしながら対話を続けます。それを周りの人が聞いていて、話したくなったら、空いている席に座り、対話に加わるという形にしました。
 多人数の中だと話せないことも、小さな輪だと話しやすく感じることがあります。ここでは内側の「話す人」と、外側の「聞く人」を分けています。外側の輪にいる人は、内側の小さな輪での対話に耳を傾けながら、自分の中にどんな思いや感覚が生じるかに注意を向け、自身の中に響く声が生まれてきたら内側の輪に入って全体でシェアします。内側の人と外側の人が入れ替わりながら、多くの人の声がシェアされました。

 はじめに、内側に座る人を募集しました。誰が出るかに時間がかかっていたら、緊張が高まります。勇気ある初参加の二人がさっと出てきてくれたことが、この試みを成功に導いてくれたようです。この真ん中にいる人たちは自由に、出口さんに聞きたいこと、自分が考えたこと、などを話していきます。真ん中に出ることは緊張を伴うようですが、みなさん、ドキドキしながらも、次々と入れ替わって参加して下さいました。いきいきと場が動いている感じがしました。僕も、みんなの発言に触発されて、いろんなことを考え、たくさん話しました。「対話っていいね」という講習会のテーマが、目の前で展開されているのを見たようです。

この形式を2日間通して、行いました。話題が変わるたびに、最初、真ん中に坐るメンバーが変わります。参加者が少ないから、ほぼ全員が真ん中に座ることになりそうでした。
 
 実践発表の後、午後は、同じ形で、対話をすすめるにあたって大切にしたい7つの視点について、話題提供者と僕と、また2人を募集し、4人が対話し、1つを空席にして輪の外から加わって真ん中で対話をするというスタイルで進めました。だんだんとみんなもこのスタイルに慣れてきたようです。
 たっぷりあると思っていた時間がなくなり、7つのうち、2つは、翌日に持ち越しました。ゆっくり丁寧に進めたいと思っていたので、何の問題もありません。
 午後7時、公式プログラムが終了しました。夕食も食べずに、こんな時間まで研修をするなんて、考えられないかもしれませんが、楽しい時間でした。
 初めての試みなので、失敗するかも、と思いましたが、それは危惧に終わりました。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2022/08/05

長岡まつり大花火大会

 7月30・31日、千葉県教育会館で開催した、第9回吃音講習会の続きを紹介する予定でしたが、今日は、ちょっと違う話題を。

 吃音講習会が終わってから、新潟県長岡市に寄り道をしました。長岡の花火大会を見るためです。長岡の花火は、いつか一度は見たいものだと思っていました。日程が8月2・3日だと分かったので、千葉の帰りに行けないかと調べてみると、東京から2時間弱で行けることが分かり、それから、ホテルの手配、観覧席の申し込みをしました。両方とも、8月2日の分が運良く当選したので、今回の花火大会観賞ができたのです。
 誰もが花火は好きだろうと思いますが、僕にとっては子どもの頃からの夏の風物詩で、なくてはならないものでした。僕の故郷の三重県津市は毎年「岩田橋花火大会」が行われていました。ネットでみてみると、今年で69回になり、今は阿漕海岸で開かれています。
 学童期・思春期、吃音に深く悩んでいた僕にとって、花火は慰めになっていたようで、必ず観に行っていました。だから、郷愁のようなものがありました。
新潟日報 長岡花火
 長岡の大花火大会について、公式サイトにはこんなふうに書かれていました。

 
日本三大花火大会の一つに数えられる長岡まつりの花火大会。夏の夜空に大きく華開く「正三尺玉」や打ち上げ幅約2kmにも及ぶ「復興祈願花火フェニックス」など、視界に収まりきらない大玉花火の連続が魅力です。
 一見華やかに見える大花火大会ですが、長岡まつりは昭和20年8月1日の長岡空襲で亡くなられた方々の慰霊と長岡の復興を願って開催された「長岡復興祭」が起源です。そのため、大花火大会の開催日は毎年8月2・3日に固定されています。
 長岡まつり大花火大会は、慰霊と復興、平和への祈りを込めて打ち上げている花火となっています。


 慰霊、復興、平和への祈り、この3つの思いが込められた、長岡の人たちにとって大切な時間だったのです。花火が始まる前に行った「道の駅 ながおか花火館」にある「長岡花火ミュージアム」で、歴史を学んでから会場に向かいました。多いときは、2日間で100万人の観客が訪れたと説明があり、びっくりでした。今回がどれくらい集まったのか分かりませんが、3年ぶりの開催で、待ちに待っていた花火大会だったには間違いないようです。

 日本三大花火というのにふさわしい花火大会でした。最初は、真っ白な大きな花火が3発、これは、長岡空襲で亡くなられた人たちのための慰霊の意味が込められていました。フィナーレは壮大な花火の連打でした。それとこれが長岡の花火大会の特徴だそうですが、観衆全員が、スマホのライトや懐中電灯などを一斉に点灯して、慰霊、復興、平和への祈りとともに、花火大会の開催者、スポンサー、花火師、警備などすべての関係者に感謝をあらわすのです。「なないろライト」と名付けられています。長岡市民がいかにこの花火大会を大切にしているか、平和への思いを持ち続けているかを考え、ウクライナの戦争を思うと、思わず涙がこぼれました。
 これまで、たくさんの花火を見ていますが、ひと味もふた味も違う花火大会でした。
 テレビで中継もされていたようですが、音がすごかったです。音と光の饗宴をたっぷり楽しみました。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2022/08/03

長岡花火1 観客席長岡花火2 観客席 伸二長岡花火3 慰霊花火長岡花火4 長岡花火5長岡花火6 青色長岡花火7 色とりどり長岡花火8

吃音講習会、無事、終わりました

 7月30・31日、千葉県教育会館で、第9回「親、教師、言語聴覚士のための吃音講習会」を開催しました。開催を決めた5月中旬とは全く状況が違い、コロナウイルスの感染爆発の状況の中で、開催できるかどうか、してもいいのかどうか迷いましたが、昨年一昨年と2回も中止にしているので、なんとか今年は開催したいと思い、準備してきました。行動制限はしないとのこと、ならば、最大限の感染対策を講じて開催しようと決断しました。
9回講習会 看板2















 僕たちが千葉入りしたのが前日でした。実行委員の仲間と合流し、資料のホッチキス止めをして、流れを確認し、打ち合わせました。いよいよ始まるという気持ちでわくわくしていました。これまでと違って参加者が少ないこと、コロナ感染急拡大の中なのに、感染の危険をあえて自分で引き受けて参加して下さる人たちに大いなる敬意をもって運営したと強く考えていた僕は、従来の一般的な研修とは全く違うスタイルを思いつきました。
 全てのプログラムをオープンダイアローグのように、対等性、応答性、不確実性の耐性を基本に参加者全員が対話に加わる対話型のプログラムです。
 それがどのようなものであったかは明日から書いています。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2022/08/01
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