「スタタリング・ナウ」1996年8月15日 NO.24に掲載されていた、「吃音者よ、吃音と闘うな」に関連した僕の文章の紹介の後、2人の体験を紹介しています。小さい頃から、吃音と闘ってきた人の生の声です。2人目の横山さんの文章を紹介します。文章に書かれている『どもりの相談』のパンフレットは絶版になりました。日本吃音臨床研究会のホームページに掲載していますので、お読みいただければうれしいです。
日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2022/02/13
どもりと戦い続けて
高校3年生・横山有紀子
私は今までどもりと戦い、克服することしか考えていませんでした。だから、「喋る」という行為に異常なほど執着し、高校1年生のとき、生徒会長に立候補したり、演劇部に入ったりして、人前で話すことを自分に強要しました。
私は吃音で悩んでいるのを誰にも悟らせないため、人前では明るく振る舞い、負けん気で何にでも熱中できる性格で、演技と議論では誰にも負けない自信がありました。
でも、どもっていては、せりふが言えませんし、議論にしてもときどきつまっては言いたいことの半分も相手に伝わってくれません。それでも、まくし立てているうちに相手が折れてくれるのですが。
そうして、何よりどもっている間の私の顔は、見ていられないほどに醜いのです。私の吃音にとってこの性格はとんでもない自虐でした。それでも私は喋り続けました。吃音に負けたくなかったからです。しかし、実際には、私は既に負けていたのかもしれません。劇の役選考に落ちたとき、いつも「どもりでさえなかったら、あの役は私が・・・」と思っていたからです。そう思わなければ、自分自身の存在まで危うくなってしまいそうで、怖かったのです。
しかし、その当時の私は、自分の気持ちさえ認めず、「弱い者同士、集まりましょう」とか「同じ悩みを持った者同士、話し合いましょう」といった集団を軽蔑していました。私にしてみれば、彼らは、一人で戦うことをあきらめてコロニーに逃げた卑怯者に見えたのです。
私は、子どもの頃、ばかにした人たち、憐れみをくれた人たち、そして、吃音という障害を持たない人たちを見返すたあに、戦い続けることを決心しました。表面上は、仲の良い友達にも私は決して心を許しませんでした。
しかし、劇のチョイ役のたった3つのせりふを本番でどもり、とても仲の良かった男子生徒に交際を断られ、やけくそで立候補した選挙で涙が出るくらいひどくどもった演説をして大差で落選したとき、(1年のときは、歌を歌ったのが成功し、次点でした) 私は、吃音の自分がどうしようもなく嫌になって、死を決意しました。
2日間、ナイフを握って考えて、またナイフを握って考えて、でも切れませんでした。しかし、「私は今までの屈辱をエネルギーに変えてきたんだから」と、自分を慰めても、立ち直るには何らかの別の励ましが必要でした。
そんなとき、新聞で見た『どもりの相談』のパンフレットを申し込みました。(日本吃音臨床研究会のホームページに全文掲載)。
誰にも相談できなかったので、ほんの慰めにでもなればという気持ちだったのですが、読み進めていくうちに、私は自分の考え方が恥ずかしくなってきました。私は結局、吃音にこだわり、自分を特別視し、ごまかしていたに過ぎないのです。私も吃音を悪視している一人であり、吃音につっぱって何かを忘れてきた人間です。被害者意識にこりかたまって吃音を真正面から見ることを忘れていました。
読んだ後、肩の力を抜いて喋れるようになった気がします。先輩方の例もある。いつかは肩の力を抜いて喋れるようになりたい。たとえ、どもりは治らなくてもハンディキャップを持たない吃音者になることはできる。
私はパンフレットの中の、「どもってもよい。でも、この次はさっきよりかっこよくどもってみよう」ということばが好きで、鏡で表情の研究などをしています。弁護士になれるかということと、結婚できるかということが少し心配ですが、私なりに頑張ってみようと思います。
日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2022/02/13
「映画「テレビで会えない芸人」が公開されている。政治や社会を風刺する芸人を、テレビマンが追ったドキュメンタリーだ。「会えない」のはなぜなのか。誰がそう決めているのか。
「主演」と書くのは、ドキュメンタリー映画だからおかしいかも知れない。しかし映画はさながら「独演会」だ。ステージの上でも下でも、電車の中でも自宅でも、その語りはとにかくおかしい。そして自由で、まっすぐで、最後はあたたかい。
改めて、幅広い分野のたくさんの方から、たくさんのことを学んできたと思います。ヒロさんとは、あのときからずっとつながりがあり、これもとてもうれしいことです。ありがたい出会いに感謝しています。
ドキュメンタリーが映画になった「テレビで会えない芸人」の紹介をしています。第七芸術劇場で買った「テレビで会えない芸人」のパンフレットに、何人かの著名人がコメントを寄せていました。その中に、鴻上尚史(作家・演出家)さんのコメントがありました。