伊藤伸二の吃音(どもり)相談室

「どもり」の語り部・伊藤伸二(日本吃音臨床研究会代表)が、吃音(どもり)について語ります。

2017年08月

子どもと育む哲学的対話

     
全国に広がった、親・教師・言語聴覚士のための吃音講習会

 

講習会 横断幕
 7月29・30日は、場所を変えて、第6回吃音講習会でした。
 事前申し込みは91名でしたが、当日参加もあり、94名の方が参加して下さいました。
 今回は、沖縄、鹿児島、長崎、徳島、高知、山口、島根、鳥取、岡山、兵庫、大阪、和歌山、奈良、三重、滋賀、岐阜、長野、愛知、静岡、神奈川、東京、埼玉、千葉、茨城、栃木、山形、宮城など、全国各地からと言ってもいいくらいに、いろんな所から参加して下さいました。
講習会 桑田さんあいさつ

 テーマは、「子どものレジリエンスを育てる−子どもと育む哲学的対話」というタイトルで、講師は、第4回に引き続いて、石隈利紀・元筑波大学副学長が来て下さいました。
石隈さん 講義
対談1

 てんこ盛りのハードなプログラムでしたが、参加者の皆さん、よくついてきて下さったと思います。
講習会 関西の味4人講習会 東野さん

 懇親会会場は、研修会会場の真下、ガラス張りのすてきな部屋でした。45名ほどが参加して、会場はいっぱいになり、立食の人もいました。県ごとに前に立ち、1日目の感想を話していただきました。
懇親会1

 2日目の最後のプログラム、「みんなで語ろう、ティーチイン」では、短い時間に、ひとりひとりが参加してのふりかえりを語りました。ありきたりのことばではない感想に、スタッフのひとりとして、本当にうれしく思いました。皆さんが、温かく迎えていただいた、笑いがある空間で学べたとおっしゃって下さっていたのが印象的でした。
ティーチイン


 終わった翌日の月曜日は、残った吃音プロジェクトのメンバーで、今回を振り返り、そして、今後の話をしました。一種興奮状態の中にいるためか、次々とアイデアが浮かびます。「自分で自分の首をしめるのかい」と言いながら、それを楽しんでいるみんなでした。したいことを、いい仲間と、取り組める幸せを思いました。

 8月3日には、山形県で県の言語障害研究大会が開催され、僕はそこで、講演をします。
 翌日は山形市のことばの教室で、どもる子どもの保護者やことばの教室の教師との出会いがあります。これは、第4回吃音講習会に参加して下さった山形のことばの教室の木村和子さんの尽力により、実現しました。今から山形に向かいます。

 山形県のことばの教室の教員のほぼ全員が参加してくださる県大会は、時間をたっぷりとっていただきました。午前中2時間の講演、午後3時間のワークショップ。時間がたっぷりとありますので、しっかりと対話をしていきたいと考えています。

 翌日の会場は小学校で、午前中はどもる子どもと保護者との「親子研修会」と懇談会。午後は通常学級の教職員の研修会です。僕は講演でもできるだけ時間をとって欲しいとお願いします。今回の山形は、県大会の講演・ワークショップに加えて、子どもや保護者との出会い、教員研修と、たっぷりと計画を立てて下さいました。話したいこと、伝えたいことがたくさんある僕としては、本当にありがたいことなのです。

 一週間の間に、400名近いどもる子どもの保護者、ことばの教室の担当者、言語聴覚士の方と出会うことになります。「吃音の夏」の前半にふさわしい、出会いとなりました。

 親・教師・言語聴覚士のための吃音講習会の詳しい報告は、今後のブログでしていくと同時に、講習会のホームページと日本吃音臨床研究会のホームページでも紹介していきたいと思っています。
 緊急入院のために、多くのことができずにいましたが、体調は完全に復活しましたので、出会いの中でもらったエネルギーをもとに、活動と共に、ブログでの発信もしていきたいと思います。

 暑い夏、熱い夏、吃音の夏。後半は、吃音親子サマーキャンプです。今、準備の真っ最中です。

日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2017/8/2 

全国のことばの教室の教師が大阪に集う

「吃音の夏」前半が終わりました

 早、8月に入りました。
 7月27・28日は、全国難聴・言語障害教育研究協議会全国大会・近畿大会が大阪で開催されました。僕は、そこで、午前中の吃音の講習会の講師と、午後からの吃音分科会のコーディネーターをしました。講習会には100名を超す方が、分科会にも100名近い方が参加して下さいました。

 まず、講習会の方ですが、広い会場にぎっしりでした。当日の朝まで、パワーポイントのスライドを作っていました。でも、いつものとおり、予定していたようには、パワーポイントを使うことはできず、その場で今生まれてくることばを頼りに、目の前の参加者の皆さんに語りかけていました。抜けたところは、大量の資料で補っていただけるものと思います。大きな流れは、吃音治療ではなく、子どもとの哲学的対話のすすめです。

全難言大会講習会 会場

 午後は、吃音分科会でした。滋賀県東近江市の4つの小学校の担当者が、どもる子どもたちのグループ指導の経過をていねいに発表して下さいました。吃音はグループ活動の意義か大きいと思います。それを計画的に継続して続けておられることの敬意を表します。

僕は、このグループに、昨年秋に一度、お邪魔して、子どもたちに会っています。事前に、子どもたちが質問を考えてくれて、直接、僕に質問してくれました。子どもらしい質問ばかりで楽しい時間でした。「伊藤さんは、吃音で何か困ることはありますか」という質問があり、その子と少しの時間、話をしました。そのやりとりのビデオを2分間ほど、会場で流して下さいました。今、僕たちが大切にしたいと思っている対話、哲学的対話に近いものになっているのではないかと思います。ことばの教室の担当者とどもる子どもとの間で、そのような対話ができればいいなあと思いました。

全難言大会講習会 福井さん

全難言全国大会講習会 スクリーンと伸二

全難言全国大会講習会 伸二
 
 僕が書いた書籍の展示・販売も、いつものように行いました。テーブルいっぱいに並べられている書籍を眺めると、これまでの吃音の取り組みの歴史が分かります。8階の書籍売り場は、僕の仲間たちのちょっとしたサロンになっています。以前は、書籍の販売を細々としていましたが、最近は、仲間が交代でしてくれて、にぎやかです。

 全国難聴・言語障害児教育の全国大会で、僕は吃音分科会の助言者・コーディネーターを何度もしています。 今年は発表が1本でしたが、例年は、各分科会で2本の発表があります。その2本のうちの1本を、僕の仲間のことばの教室の教員がし続けてきました。山口県大会、長野県大会、北海道大会、鹿児島県大会、石川県大会、神奈川県大会、東京大会、島根県大会と、ずっと続いています。「吃音と共に豊かに生きる」子どもをどう育てるかの実践を発表し続けてきたこと、仲間の熱意をうれしく思います。

 だから、毎年、全国大会に、僕たちの仲間が大挙して応援に駆けつけます。その度に、書籍売り場がサロンのようになっているのです。今回も、僕たちの仲間が発表したいとエントリーしましたが、発表は近畿地区から、1本の発表しか受け付けられなかったために、発表者はいませんでした。でも、午前中の講習会の講師と分科会のコーディネーターが僕だったので、全国の僕の仲間達が集まってくれていました。

 僕の考え方は、少数派だと常に言っていますが、全国大会で吃音分科会の助言者を何度もしていること、僕の仲間が発表者として発表し続けていることで、「吃音を治す・改善する」を主な目的としない考え方も、ずいぶんと浸透してきたのかもしれないと、少し、期待をしているのです。
 講習会の報告は次回にします。

 日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2017/08/01 
Archives
livedoor プロフィール

kituon

QRコード(携帯電話用)
QRコード