11回静岡県わくわくキャンプのスタッフ学習会の今年のテーマは、「ナラティヴ・アブローチ」です。
静岡のように、毎年このような学習会がもたれるのはありがたいことです。スタッフ40人ほどが、聴いて下さいました。
そのために、準備して考え、話したことが財産になっていきます。昨年度のテーマは、「英国王のスピーチ」でした。2時間も映画についてだけで話せるとはおもわなかったですが、どんどん話が広まり、深まっていきました。いい聞き手のおかげだとおもうのですが、私たちのニュースレター「スタタリング・ナウ」に2号にわたって紹介しました。
ジョージー6世が開戦スピーチが成功したのは、「どもる、ためな国王」から「どもっても、国民に伝えなければならない、言葉のある、責任感ある誠実な国王」へと語りを変えたことにあると、昨年話しました。今年は、それを受けて、吃音の言語治療の歴史が、1903年の伊沢修二からはじまり、1930年のアイオワ学派の主張、1950年のジョンソンの言語関係図、1970年の、シーアンの吃音氷山説にいたる話をしました。
1970年にシーアンが、吃音の症状と言われているものよりも、吃音に影響うける行動・思考・感情にこそ問題があると指摘したのに、アメリカ言語病理学は、それを重視せず。相変わらず「ゆっくれ、そっと、やわらかく」発音をして吃音をコントロールすることを目指しています。
その歴史をはなすために、出てきたのが、伊沢修二の教え子、松澤忠太の「吃音矯正教科書」でした。そのタイトルには「最新」とあります。1924年に書かれたものですが、いまから読み返すと、かなり理にかなったことを書いているのです。もちろん、この方法は、後の民間吃音矯正所に受け継がれていきますが、アメリカ言語病理学の最新と言われる、バリーギターの「統合的アプローチ」の流暢性促進技法とほとんど変わらないのです。
1965年、東京正生学院でこれらを教えてもらって、結局治らなかったので、ばかにしていたのですが、今でも通用するものだったのかと、驚きです。
吃音症状といわれるものへのアプローチは、そろそろあきらめて、「ナラティヴ・アプローチ」に転換すべきだと話したのが、今回の学習会でした。また、どこかで紹介したいと思います。
後で読ませたいただいた振り返りの中に、ことばの教室の先生が「もっと、早く、この話を聞きたかった」とありました。うれしいことでした。今からでも遅くない、私は、語り続けなくてはならないと思いました。
学習会が終わって食事をしながらのスタッフ会議の後、キャンプはスタートしました。申し込みは100名を超えていたのに、キャンセルが入って、100の大台は届きませんでしたが。にぎやかにキャンプはスタートしました。
日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2012/10/31