伊藤伸二の吃音(どもり)相談室

「どもり」の語り部・伊藤伸二(日本吃音臨床研究会代表)が、吃音(どもり)について語ります。

2012年08月

温かく、ゆたかな時間のフィナーレ  吃音講習会

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  講習会最後のプログラムは、ティーチイン。

 みんなで輪になり、ひとりひとりが今思っていることを話していきます。吃音ショートコースという毎年秋に行っているワークショップでも、最後はみんなで語ろう、ティーチインを行います。
 私は、この時間が大好きです。ひとりひとりの思いに触れ、講習会全体を振り返ることができます。話し始めると、ひとりひとりの話が長くなりました。いろんな思いがあふれてきたのでしょう。三人の方がびっくりするような自己開示をされました。2日間の講習会で、参加者のひとりひとりへの信頼が育ち、この場でなら受け止めてもらえるとかんがえられたのでしょう。
 限られた時間です。まさか皆さんが自分の思いを、こんなに長く言葉にするとは予想がつきませんでした。このままでいくと、全員が話し終えることができなくなりそうです。私は、途中で、「もう少し短く」とお願いしました。皆さん、苦笑いをしながらも、協力して下さったようですが、やはり自己開示的な感想が続きました。

 「とても楽しかった」と言って下さった方が何人もいました。「役に立った」なら分かるのですが、この感想は意外でした。特別に楽しい企画を用意したわけではありません。まあ、どこでもそうですが、いつものように、話の合間に合いの手を入れるというか、茶々を入れるというか、大阪人特有のユーモアは入ったかもしれませんが。
多分、私たちが楽しくて楽しくてしようがないというような感じで、準備、運営をしていたかもしれません。実行委員は楽しみながらしんこうしていたのですから。
 
 また、講師も参加者も、ひとりひとりが自分のことを語ったからではないでしょうか。決まり切ったことばではない、今浮かんだ思いを大切にしてことばを紡いでいった、それはまさにナラティヴ的な時間でした。
 15分くらいオーバーしてティーチインを終わりました。時間の許す人には、片付けを手伝ってもらって、会場を出たのが午後6時前でした。

 企画し、準備した私たちは確かに楽しかったし、当日もそんな気分でした。それが伝染したかのように、参加者も楽しかったと言って下さいました。講習会に参加して楽しかったというのも変ですが。

 その日帰らずに打ち上げ会に参加したいと1泊して残った実行委員のメンバ−、地元のメンバー9人で打ち上げをしました。ひとりずつがいっぱい語りました。私たちは、本当に語ることがスキなんだと思いました。こうして話していくうちに、これまでもいろいろなことが実現していきました。語る文化の中で、世界が広がり、人がつながっていくということを経験しています。とても幸せな気持ちのまま、もっと話していたいが続いて、10時をすぎていました。

 こうして熱い思いのあふれた吃音講習会が終わりました。
 これで講習会の報告は終わりです。岡山キャンプ、滋賀のキャンプへと続きます。
 
 日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2012/08/30



 

第1回 親、教師、言語聴覚士のための 吃音講習会 5


どもる子どもの親との対話


 午前中の実践発表・シンポジウムの3時間があっという間に過ぎ、午後は、また新企画。
 2月に千葉で実行委員会を開いたとき、保護者がふたり参加して下さいました。当初はこの時間、言語指導の理論と実際の予定でした。ふたりの保護者から、親が子どもにどう関わればいいかが出されました。また、ことばの教室担当者も保護者とどうかかわればいいか、どのように吃音について話し、情報提供すればいいか困っている現状も出されました。そこでこの時間を保護者のための時間とすることになりました。

 今、本当に困っている保護者が参加してくださったら、その人との個人面接をして、その様子をみてもらおう。また、吃音相談会を公開にしようなどの案がでていました。しかし、大勢の前で初めて参加の人が面接とは難しいとのはなしなどから、当日参加された保護者と相談して決めようなどと、実行委員会でも、この時間をどうするか、一転二転しました。

 参加者の中には、どもる子どもをもつ保護者の方が参加され、夜の話し合いでどのように子どもにかかわればいいか、これまでの治すことにこだわらない子育てに共感しつつも疑問をもっておられました。

 2日目は、昨日に引き続き3人のお母さんが参加されていました。その人たちに、前に出てもらって、公開相談会をしようという企画を提案しました0。周りを参加者が取り囲んでいる中での相談会なので、プレッシャーを感じるでしょうが、快く引き受けて下さり、相談会がスタートしました。

 どのような話の展開になるか、まったく予想ができません。はっきりしているのはお一人が「子どもの吃音をなおしてあげたい、また治ると信じたい」との思いを強く持って、私たちのこれまでの話に少し納得できないことでした。あとお一人は、どのような思いを、考えをもっておられるか全くわかりません。後お一人は、吃音親子サマーキャンプにも参加されたことのあるひとです。

 まずは3人の方の自己紹介もかねて、ご自分の子どもさんの話をしていただきました。
 そのうちに治るだろうと思って過ごしてきたが、小学校に入学しても治らない。これはなんとかしないといけないと思って、治すことを求めてきたお母さん。言語聴覚士の指導で、統合的アプローチをしていました。夫が小さいときどもっていて、小学4年生のころに自然に治ってしまったことが、治ることへの期待を大きくしているようでした。吃音は少なくとも小学4年生頃までには治ると信じていたようです。
 吃音講習会での流れが、「吃音は治りにくいもの」「治すのではなく、どもって生きる覚悟を決めよう」などと、話が進んでいくことにショックを受けたようです。

 そのお母さんから,当初の「必ず治る」から、そうでもないらしいに考え方が変わったものの、「治ることに、あきらめがつかない」と率直な意見が出されました。吃音が治るとは、治りにくいものを、周りが治ると期待しつづけることが、子どもにどのような影響をあたえるかなど、丁寧に対話をつづけました。ふたりの保護者からもいろんな体験がだされました。悩みのまっただ中にいる人、子育てに一段落ついた人、その中間にいる人。この3人のバラススが絶妙でした。仕組んだわけではなく、今、この場にいるお母さんがそのまま公開相談会のようになったのに、いろんな角度からの保護者の思いに、考えに触れることができました。

 私だけでなく、他のお母さん、あたりのことばの教室担当者の話を総合して、「治ることをあきらめられない」と強く思っていたお母さんが最後に、「160度考えが変わりました」と話して下さいました。「180度変わったではなく、「160度」というのが、すばらしいと思いました。私は何も、説得しようとしたわけではありません。正確な事実と、私の体験、たくさんの保護者の体験、世界の吃音事情をもとに、このお母さんと対話をし続けただけです。少し、いやかなり理解をしていただけたことうれしいことでした。

 こうして、どうなるか検討もつかなかつた「どもる保護者との対話」の時間が終わりました。

 日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2012/08/29

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第1回 親、教師、言語聴覚士のための 吃音講習会 4

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 実践発表・シンポジウム


 講習会2日目、昨日を共に過ごしたということもあってか、緊張感が和らぎ、和やかな雰囲気で始まりました。
 午前の部は、シンポジウム。

 シンポジウムと名前はついていますが、従来のものとは変えたいと思っていました。シンポジストがそれぞれ自分の思いを語り、後はシンポジストたちがお互いの意見を交換し合い、新しい何かをみつけていくのが本来の姿だと思うのですが、そんな形のシンポジウムに出会ったがありません。
 いつも、シンポジストたちは、それぞれ自分の想いを一方的に語り、混じり合うことなく意見表明で終わってしまうことが私の経験からは多かったからです。
 
 「今回は、資料集に実践が詳しく書かれています。それらは後日しっかりと読んでもらえば、発表者の実践はよくわかります。それを口頭で発表するのは時間がもったいないと思いました。そこで、その実践をふまえつつ、吃音の臨床にとって、ナラティヴ(語り・物語)の大切さを話してもらうことにしました。
 当日に発表者と相談したために、戸惑いがあっただろうと思います。シンポジストの一人の持ち時間や順番などは決めず、発言したいと思ったら、手を挙げて発言します。話の流れで、発言しないシンポジストも出てくるかもしれませんし、どこへ行き着くかも誰にも分かりません。まるで、ミステリーツアーのようです。参加者たちにもそのミステリーツアーに同行してもらうことにしました。また、当日の朝、その日のノリで、「笑点」の大喜利のようだということにもなりました。ミステリーツアーと大喜利のようなシンポジウム、想像してみて下さい」

シンポジウムは、私のこんな発言から始まりました。私たちが伝えたい、ただ一点は、吃音を否定しないで、幸せに豊かに生きることを大切にしたい、ということです。どもりながら、今、もっているそのままの力、手持ちの力で生きていることは事実。どもって生きているという事実は変えようがない。ならば、不本意に生きるか、覚悟を決め納得して生きるかの違いだけ。そこに役立つのが、ナラティヴ・アプローチだと思います。

 ナラティヴ・アプローチでは、人と問題を分けると言います。ナラティヴアプローチは、1990年代に入ってからですが、これより20年も前にシーアンは、氷山説を出し、人と問題ではないのですが、吃音と吃音問題を分けろと言い、水面下にアプローチする必要性を提案しています。
 また、ナラティヴ・アプローチでは、外在化ということを言いますが、これについても、ジョンソンは、言語関係図を用いて、自分の問題を見えるものにしています。

 問題のストーリーをどう聞いていくか、外在化について、考えていること、実践していること、など、自由に出してもらいました。シンポジストは、次の人たちです。
 高木浩明(栃木)渡邉美穂(千葉)佐藤雅次(群馬)坂本英樹(大阪・保護者)東野晃之(大阪・当事者)溝上茂樹(鹿児島)奥村寿英(愛知)
 
 保護者と当事者を除いて発言者は、長年ことばの教室で実践してきた人たちです。本当に自由に、自分の想いを、実践を、考えていることを、手を挙げて発言していきました。その姿が、誇らしげに見えました。詳しくは日本吃音臨床研究会の年報としての報告集で報告しようと思います。

 日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2012/08/28

第23回吃音親子サマーキャンプ楽しく終わりました


 151名が参加した今年のキャンプ無事に終わりました。
 写真を含めて、詳しく報告したいと思います。
 大所帯で無事に終えられるか、少し心配だったのですが、そこはベテランのスタッフが大勢いるキャンプ。また、何回も参加している保護者が、食事など生活面でスタッフの働きをしてくださったおかげで,何事もなく、無事に終わりました。最後の振り返りで、初参加の20家族ほどの一人一人の親が、感想を言ってくれました。
 参加してよかった。感動した。子どもだけでなく父親の自分が楽しかったなど、の発言にも疲れがいっぺんにとれました。遠くは海を越えてタイから、九州や茨城など関東から、遠くから参加した人たちはまだ、帰路のとちゅうかもしれません。スタッフを含めて、参加者一人一人が幸せな気持ちになれたキャンプが今年も終わりました。
 ぼちぼち報告していきます。

 日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2012/08/26

明日から、151名の、史上最大の吃音親子サマーキャンプ 


 吃音講習会の報告がまだすんでいないのに、岡山のキャンプの報告もまだなのに、吃音の夏は忙しく、もう明日から、第23回吃音親子サマーキャンプです。

 これまで参加が一番多かったのが147名で大変なキャンプでした。もうそのような大人数はないだろうと思っていたのに、今年は突然のキャンセルがなければ151名の大きなキャンプになります。

 22回のキャンプではハプニングないろんなことがありました。150名を超えると運営も大変です。でも、すばらしい仲間たちが一致団結するキャンプなので大丈夫だとの自信はあります。が、気持ちは引き締めないといけません。大人数だからこそ、気負わず、楽しく、ゆったりとキャンプを楽しみたいと思います。
 
 講習会の続きやその他は、キャンプが終わってから報告します。

 今年も新しい人たちが大勢参加します。遠くは、タイからの参加もあり、新しい出会いに心が躍ります。

 日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2012/08/23

吃音講習会 3 懇親会


 楽しかった懇親会

 グループでの話し合いは、各グループ共に活発で、会場から閉め出されるぎりぎりまで続きました。
 公式のプログラムが終わったのが、午後9時。

 さあ、時間の許す方は、交流会に繰り出しましょうとよびかけたところ、30人以上の方が参加して下さいました。カラオケボックスの一番広い部屋にすし詰め状態でしたが、まだもう一日あるというのに、「よかった、よかった」ともう終わったかのような高揚感に包まれました。

 国立特別支援教育総合研究所の牧野泰美さんの乾杯の音頭、「カンパーイ」と言わずに、「ハピネス!」。
 癖になりそうと言っている人もいました。初めて出会う人も多いのに、この一体感はどこから生まれてくるのでしょう。真剣に話すときは真剣に、笑うときは大きな声で笑う、このメリハリの良さが、私たちのいつものベースですが、初めての人もよくついてきてくださったものだと思います。

 私としては、うれしかったのがある人の懇親会の参加です。
 講習会が始まって私の基調提案の時、目立つ一人の女性がいました。みんなが頷いたり、わらったり反応して聞いて下さったいたのですが、にこりともせず、真剣に私を見つめる人がいました。後の記念講演者の浜田寿美男さんも、その人が目についたようです。真剣に聞いて下さっているのはよくわかるのですが、何か、腑に落ちないような感じが私にはしていました。その人が懇親会にも参加して下さっているのが、失礼ですが不思議な感じがしたのですが、とてもうれしいことでした。きっちりと輪の中に入って下さっていました。

 懇親会が終わって一言二言言葉を交わしたときは、素敵な笑顔で応えて下さいました。本当は講演が終わったら帰る予定が、話し合いまで残り、さらに、事務局に宿泊の手配を依頼して、予定を変更して残って下さったようなのです。真剣に話を聞いて下さり、共感して下さったから残ってくださつたのでしょう。

 二日目の最終日の最後までいて、振り返りの中で話して下さったのが、言語聴覚士の大ベテランで、吃音の臨床は苦手だと、これまで敬遠していたが、どもる子どもともつきあわなくてはならなくなって、勉強をしなければと講習会に参加してくださったとの話でした。
 とてもうれしい出会いでした。
 
 交流会が終わったのが、午後11時過ぎ。「また、明日」と言って別れましたが、飲み足らずかしゃべり足らずかで、街へ繰り出して行った人もいるようです。
 大きな興奮状態の中で、講習会1日目が終わりました。

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日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2012/08/23

吃音講習会 2


 楽しく話が弾んだグループの話し合い

 夕食の後、夜の部がありました。
 講習会と名のつくもの、普通は夕方までで後は懇親会でしょうが、そこが他とは違う、少数派の計画する講習会です。夜の部は、グループに分かれて、今日の講習会に参加しての感想や疑問を出し合いました。

 こんなハードスケジュールは初めてだと言う人が多かった中で、たくさんの人が残って下さいました。夕食も会場でとって、DVDを見てもらいました。TBSのニュースバードの40分の番組です。北海道の「べてるの家」を筑紫哲也のニュース23で紹介したことで知られる、斉藤道男さんが、吃音親子サマーキャンプを取材して制作して下さった報道番組です。
 その後、13人ほどが1つのグループになって話し合いました。予定していた時間は、1時間半です。ところが、予定の時間がきても、6つのどのグループも、終わる気配はありません。真剣な話をしているところ、大きな声で笑っているところ、などいろいろです。とてもいい話し合いになったと感想が書かれていました。

 参加者は、どうしても聞くことが多くなる講習会ですが、できたら語り合う時間を大切にしたいという願いから、この時間を設定しました。ここでの話は、明日のプログラムに反映されていくことになります。
 公式のプログラムが終わったのが、午後9時少し前。さあ、時間の許す方は、交流会に繰り出しましょうとよびかけたから、何人くらい残って下さったでしょうか。30人、いや30人以上の方が参加して下さいました。
 その話は次回に。   (2012年8月5日記)

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第1回 親、教師、言語聴覚士のための 吃音講習会 1


 講習会幕開け

 神奈川大会の会場であった川崎市から、千葉に移動しました。思ったより近く、千葉中央駅直結のホテルミラマーレに到着しました。前泊する大阪の坂本英樹さん、鹿児島の溝上茂樹さん、群馬の佐藤雅次さんとタイ料理を食べました。大阪スタタリングプロジェクトの東野晃之さん、長谷川佳代さんもホテルに着き、いよいよ明日から始まります。

 4日(土)9時、会場に着き、100人収容の部屋に荷物を運び入れました。受付の長机に当日の配布資料や名札を並べました。事前学習のために参加者にお送りした事前資料もすごかったけれど、当日の資料もすごいものができました。この資料だけでも、吃音についての多くのものが凝集されています。
 横断幕を貼り、書籍を並べ、参加者を待ちました。10時、参加者が次々と会場に入ります。前日の神奈川大会に参加していて、引き続き、この講習会に参加する人もいます。来年、全難言大会が鹿児市で開催されるのですが、その大会事務局長である宮内まり子さんも、仲間と共に総勢5人で参加しました。

 講習会実行委員長の堀彰人さんの挨拶に続いて、私の基調提案が始まりました。冒頭、私は、こんなにたくさんの人が参加してくれてびっくりしたということを正直に話しました。吃音を治す、改善する、コントロールする技術を学ぶ講習会ではありません。「吃音否定」から「吃音肯定」という、吃音を認めた上で、親や教師や言語聴覚士が子どもたちに何ができるかの講習会です。

 私はいつも自分のことを少数派だと言っていますが、その少数派の所に100名を超す申し込みがあり、100名近い人が実際に参加されたということは本当に不思議でしたし、驚きでした。
 計画したときは、30人か40人も集まって下されば、じっくりと話ができると、ある意味強がりで言っていました。それが、北は青森、南は沖縄から言語聴覚士が来て下さったことは驚きでした。ことばの教室の先生方も、千葉市が多いものの、全国から来て下さいました。予想外の大人数の参加者とともに、2日間の講習会がスタートしました。私は、モノローグ(独語)からダイアログ(対話)が、人が悩みから解放され、自分らしく生きる道筋だと、吃音についてのナラティヴ・アプローチの提案をしました。2時間、一気に話してしまいました。

 記念講演 
 スタートぎりぎりに、講演の講師、浜田寿美男さんが会場に到着されました。浜田さんが書かれたご著書はたくさん持っていますし、その主張には、ずっと昔から注目していました。いつか直接にお会いし、お話を聞かせていただきたいと思っていた人です。予想どおりでした。

・私も少数派で、相当外れた人だけど、外れて初めて見えることもある。
・岡本夏木さんのことば「迷ったときには、少数派につきまなさい」多数派につくと、考えなくてもすむから。
・多数派は、ドミナントストーリーにはまってしまう恐れがある。正しいとは限らない。どっぷりとはまっていることの危うさをいつも感じていた。
・今日、私たちは、ここの今、手持ちの力で生きている。
・相手が知らないであろうということを話す、自分が知らず相手が知っているだろうと思うから聞く、これがコミュニケーションだ。
・力を伸ばすというが、伸ばした力はたった今使うということが前提だ。力は使って初めて根を下ろすものだ。
・どもっても伝わればいい。どもるかどうかではなく、伝わればいい。
・自尊感情をあげるために、ほめることをするが、これは危うい。そうではなく、子どもが喜ばれる体験、「助かった」と言ってもらえる体験ができるといい。
・学校は、子どもの力を伸ばす場所ではなく、子どもの今の力を使う場所と考えたい。
・人生に準備の時代はない。子どもは、本番の子ども時代を今生きている。
・変えようのないこと、選びようのないことは引き受けよう。変えようのないことは、引き受けざるを得ない。隠すことは、自分のありのままを自分自身が差別して生きることになる。
・できないことはできないとあきらめて、手持ちの力でやりくりして生きるしかない。

 など、メモなので、多少間違いはあるかもしれませんが、共通すること、共感することばかりでした。ご本人がおっしゃっていましたが、何より、よくしゃべること、マイクを持ったら離さないところ、自分のことを少数派だと言っているところ、私とたくさん共通するところがありました。

 続いて、対談です。ここに、司会として加わってくださったのが、国立特別支援教育総合研究所(特総研)の主任研究員、そしてこの講習会の顧問を引き受けて下さった牧野泰美さんでした。
 牧野さんとは、特総研に何度も呼ばれているときからのおつきあいです。実は浜田さんも、特総研の研修の講師として行かれています。司会の牧野さんが「じゃ、少しだけ僕が話して…」と対談が始まりました。少しではなかったのですが、基調講演と特別講演での二人の話から気づいたり思ったりしたことをたくさん話されました。
 浜田さんとの対談は楽しかったです。再確認できたという感じでしょうか。詳しくは、来年3月に刊行予定の講習会報告集を待ちたいと思います。                      (2012年8月4日記)

日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2012/08/22

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全難言全国大会 神奈川大会

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 全国大会の楽しみの一つに、いろんな人と再会できることにあります。北海道大会の時も20年ぶりかの人に会いましたし、今回の神奈川大会でも、たくさんの人に声をかけていただきました。私の「吃音を治す、改善を目指さない」はごく少数派の意見ですが、声をかけて下さる人は、私の本をよく読んで下さっていました。
 「私はひとりではない」を実感できる出会いがうれしいです。

 次の週の岡山吃音キャンプの実行委員長に、講演会の資料をお送りする予定でいたのが、出発間際までばたばたしていたために、送れませんでした。しかたがないと、あきらめていましたが、吃音分科会の会場で声をかけて下さったのが、岡山キャンプの第一回から関わっておられる、副実行委員長り築山さんでした。築山さんに資料をお渡しし、印刷をお願いしました。私のミスが帳消しになりました。おもしろいものです。

 分科会会場は写真はとってはいけないとアナウンスがありましたので、開会前に発表の奥村さんと、コーディネーターの小林宏明さんの写真をとりました。終わってから、長沢泰子先生とお会いしました。昨年の夏、長沢先生が中心の軽井沢での私的な宿泊学習会にお呼びいただいて依頼です。3人の写真はとても珍しいので、シヤッターを押していただきました。
 
 吃音について、このようにいつまでも関われること、本当にありがたいことです。 (2012年8月2日記)

 日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2012/08/17

神奈川大会の吃音分科会


 奥村さんの発表はすばらしかった。

 8月3日、私たちの仲間である、吃音を生きる子どもに同行する会の奥村寿英さんが、吃音の分科会で実践を発表します。
 山口大会で佐々木和子さん、長野大会で高木浩明さん、北海道大会で渡邉美穂さんと続いてきた流れです。私たちの主張は、全く変わりません。どもる子どもの幸せを考えた取り組みの紹介です。
 「吃音ワークブク」作成のとき、何度も合宿したメンバーの一人である奥村さんは、学習・どもりカルタや吃音ワークブックを使っての実践を、子どもの生の声を届けながら話していきました。
 高木さんのときもそうでしたが、発表のときや質問に答えるとき、主語が「ぼくらは、…」となるのが、なぜかおかしかったです。全国に仲間がいるという安心感からつい出ることばなのだろうと思いました。
 発表の後、参加者からの質問があり、さらに、この分科会のコーディネーターの小林宏明さんから、討議の柱について説明がされました。そして、参加者とのやりとりが続きました。いくつか印象に残った話を。

◇今まで、吃音には腫れ物にさわるような気持ちで接してきた。幼稚園でいじめられてきた経験があると聞いているので、よけい触れることが難しい。どう対応すればいいのだろうか。
◇担当している小1の子どもは、苦しそうだけど、自分のことばには気づいていないみたい。そんな子どもに担当者から、「そういうしゃべり方は、吃音といって…」などと言っていいのか、迷っている。
◇担当しているのは、小6。「ゆっくり言えばどもらないよ」と伝えたが、ゆっくり読むことに抵抗があるようだ。無理強いをしようとは思わないが、どうしたらいいか。
◇語頭音が出にくく辛そうなので、軟起声を取り入れている。担当者である自分もできるようになろうと練習している。
◇吃音のことを話題にしたいと思うが、「困っていること、ない?」と聞くと、「別に」とはぐらかされてしまう。話題にするのは難しい。
◇吃音の問題は、氷山の水面下の部分が大きいと思うが、どう取り組めばいいか悩んでいる。みんなはどうしているのか。

 担当者の勝手な思い込みで判断しないで、当事者である子どもに聞くということ、どもる子どもに好奇心をもってその子の世界を知ろうとすること、どもる症状ではなく話す内容に注目すること…。一生懸命、誠実にかかわろうとして下さっていることばの教室の担当者はたくさんいます。どもる子どもの幸せを誰もが考えて下さっています。そのことを信じて、当事者の立場からの発信を続けていかなけければいけないと強く思いました。
 「吃音を治す・改善」ではなく、吃音と向き合い、吃音と共に生きる子どもとつきあう実践です。丁寧に説明し、たくさんあった質問にも丁寧に答えていました。    20128月3日記

 日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2012/08/16
 
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