昨日、卒業生4人のうち2人を紹介したので、今日は残りの2人の卒業証書文やあいさつなどを紹介します。涙、涙の卒業式でした。ぎすぎすした、せちがらいこの時代に、別世界のようでした。不思議な空間といえるでしょう。僕は、この場が好きで、この場にいる人が好きで、そんな人たちの中にいる僕自身のことも好きで、ずっとこのキャンプを続けているのです。
 若いスタッフが育ってきてはいますが、80歳という年齢を考えると、来年も再来年も、と簡単には言えなくなりました。一年一年、今年が最後かもしれないという思いで、サマーキャンプを開催していきます。よかったら、どうぞ、ご参加ください。詳細は、日本吃音臨床研究会のホームページからダウンロードしてください。

みほさんの卒業証書
 小学校4年生から高校3年生まで、8回、遠くからサマーキャンプに参加しました。
 「私の大好きな友達はいっぱいいる。だけど、その中で一番好きなのは、私と同じどもりの女の子だ。名前はゆきちゃん。私が生きてて初めてとても気が合う友達だった」(小学5年生のときの作文)。
 みほちゃんにとって、ゆきちゃんとの出会いは、大きいものでした。おでことおでこをくっつけるようにして、深夜までよくおしゃべりしてましたね。こんな仲間との出会いは、みほちゃん、あなたを強くしてくれました。代表委員に思わず立候補したこともありましたね。いっぱい泣いて、いっぱい笑って、いっぱい考えていたあなた、そう、あなたはひとりではないのです。
 サマキャン、卒業、おめでとう。

みほさんのあいさつ
 私がサマーキャンプに初めて参加したのは、小学校4年生のときです。キャンプを知ったのは、お母さんが、朝日新聞にキャンプが紹介されてたのを見たからです。最初は、やっぱり今まで自分と同じどもる人と会ったことがなかったから、行くのがすごい嫌で不安でした。友達ができるかなとか、いろんなことを思ってて、最初は行くのをやめようかなと思ったんですけど、もしかしたらなんかあるかもしれないと思って、参加しました。そして、初めて自分と同じどもる人と会って、友達ができて、自分の吃音の話ができて、すごい充実した3日間だったんです。それからずっとキャンプに参加して、参加するたびに新しい発見がありました。やっぱり学校の友達とはしゃべれないこととかいっぱいしゃべれて、参加するたびにいろんなことがあったなと思います。もう卒業なんだなと思うと、なんか涙が出てきて、卒業したくないなという思いでいっぱいです。来年はできたらスタッフとして参加させてもらいたいです。ありがとうございました。

伊藤伸二
 実は、キャンプのスタッフになるには厳しい筆記試験と面接試験があるんです。それに通ったら、来年、ぜひサマキャンのスタッフとして来て下さい。

ゆきさんの卒業証書
 小学4年生から高校3年生まで、連続9回、サマーキャンプに参加しました。
 「私は最初はどもりについてあまり考えていなかったけれど、最後にはやっぱり日本中にもどもる人はたくさんいて、そのひとりとひりがちゃんとがんばっているんだなと思ってじーんときました」(小学4年生のときの作文)
 「中学1年生のころが一番どもりがひどかった気がする。そして、一番苦しんでいたとき、一番密度が濃く生きていたと思う。どもることによって、他の人が気づかないことを考えることができるようになった」(高校3年生の作文)
 毎年の作文に成長を感じていました。どもりをみつめ、自分をみつめ、人とのかかわりをみつめ、深く考え、自分のことばで語ろうとする姿、とてもすてきです。
 サマキャン、卒業おめでとう。

ゆきさんのあいさつ
 卒業式を開いていただいて、どうもありがとうございます。最初、小学4年生で参加したとき、母親が吃音だったから、みんなのように世界中でどもるのは私ひとり、とは思ってはいませんでした。それ以前に、参加したばかりの頃は、あまり吃音に対して深く悩んでなかったんです。でも、毎年すごくおもしろかった。中学生になって、思春期ということもあるかもしれないけれど、吃音が大嫌いになっていきました。ちょっとどもっただけでも嫌で、自分のことがすごい嫌いでした。話せなくなったらいいのになあとか、どもるくらいならそっちの方がいいなあとか、思い詰めたりしていた。中学の頃が一番ひどくて、家族にもあまり相談できなくて、ほんとにサマーキャンプが大事でした。サマキャンがなかったらどうなっていたんだろうと思っています。
 現在は、吃音に対して結構プラスに考えているんだけど、これから人生は長いし、60年くらいはあると思うから、吃音や自分を否定することもあるかもしれません。でも、大事なのは、悩みや欠点を持っていることではなくて、それを克服するとか、一緒に考えてくれる手段とか仲間がいないことの方がすごく大きいと思います。その仲間を持てたことが、サマキャンで一番の財産だと思います。吃音に対してもその他のいろんなことについても、みんなと真剣に語り合えてよかったです。劇も毎年がんばったけど、今年は特に思いを入れてやりました。今年は、女王とおばさんのダブルキャストでお送りしたんですけど、いかがだったでしょうか。
 今、卒業したくないという気持ちです。帰りたくないので、もう1泊したいです。もう1泊するとすると、24時間。睡眠時間8時間、食事とおふろで12時間とって、あと残りは12時間。劇の練習を3時間して、あと3時間話し合いして、とか頭の中で計算してます。ほんとに実行できないのがさみしいです。毎年、3泊4日になってくれ、と思っていました。今年は入試なので、これから勉強をがんばっていこうと思っています。大学もなんですけど、それ以上に厳しい筆記試験と面接に受かって、スタッフになれたら、来年ここに来ます。スタッフの人も、子どもたちも、みんなすごくやさしくて、サマキャンはほんとにいいと思いました。ありがとうございました。

ゆきさんの父のあいさつ
 9年間のうち、私がついてきたのは、記憶が定かじゃないんですけど、5回か6回くらいかなと思います。子どもがどもり出してどうしたらいいか全然分からずに第一回に参加しました。そこで、伊藤伸二さんがどもりは治らない、受け入れなさいと言われました。表面的にはそうなのかなあと思ったんですけど、心の中では治ってほしい、どうしたらいいかというのをずっと思っていました。子どもがサマーキャンプに来て、ほんとに成長していくなあというのは実感しています。
 私自身もいろんなところに欠点のある人間です。からだが固いから、からだほぐしの体操をしたり、子どもの劇の前座のために、大声を出して普段やらないようなことをグループでやったりしました。最初はそれが非常に嫌で、それが嫌でなんか行きたくないなあと思ったりしたんですけど、途中からは少しずつおもしろくなってきました。自分がこういうことで楽しめるようになった、要するに親である私自身が変わってきたなあと思いました。ゆきは、これで最後なんですが、本人はスタッフで是非来たいと言っています。ペーパーテストと面接をがんばってほしいと思います。スタッフのみなさん、本当に長い間、ありがとうございました。

ゆきさんの母のあいさつ
 さきほど子どもの方から紹介がありました、どもりの母親でございます。
 私自身もどもりで、結婚する前の26歳の頃に、東京の正生学院というどもりの矯正所で初めて伊藤伸二さんとお会いしました。私は握手をしてもらっただけなんですけど。伊藤さんは、有名人だったので、その他大勢の中で握手をしてもらったんです。
 私は、どもりであるため、結婚の不安とかいろんな不安をもっていたんです。その後、結婚してどもる人のグループとは離れていたんですが、子どもがどもりになったということで、また、どもる人のグループと自分がつながることになりました。なんか自分は、吃音と永久に離れられないようです。
 子どもが吃音になったということで、また新たに、自分の吃音もみつめるきっかけになりました。子どもと一緒にキャンプに来ることで、自分の吃音もそこで考える時間ができたのです。子どもが吃音になったことを、私はすごく感謝しています。吃音のおかげでこういう場所に来れたし、友達もできました。すごい不思議なことだと思っています。私たちは最初、家族そろってここに何年か来ていました。だんだん他のきょうだいの都合もあって、なかなか家族全員で来ることができなくなったんですけど、今回、ゆきが最後のキャンプとなってしまい、私たち家族はこのキャンプに来れなくなって、これからどうしていったらいいんでしょうか。これから考えていこうと思います。
 ゆきは、もっと長くキャンプをやってほしいとか、勝手なことを言っていました。スタッフの方はお疲れで、もうこれ以上は無理だと思っています。ほんとうに9年間という長い間、子どもを見守って下さって、ありがとうございました。

伊藤伸二 
 卒業生の4人、お疲れ様でした。あいさつがとてもよかったから、推薦入学でスタッフ試験に合格したことを、今、皆様にお伝え致します。
 では最後に、卒業生を送ることば。高校2年生のはるなさんです。

はるなさんのあいさつ
 今、話を聞いていて、すごく泣いてしまいました。一回止まったんですけど、話している途中に泣いたらごめんなさい。
 おととしも、よしのり君とまさき君の卒業式のときに、送辞みたいなことを言わせてもらいました。そのときに、その二人の先輩は、考えること、考えたことを伝えること、自分を表現することの大事さを教えてくれた、ということを話しました。そのこともいっしょにさっき思い出していました。今回、卒業する4人の人たちとは、考えたり自分を表現することをほんとにずっと一緒にやってきたなあと思いました。上の先輩に教えてもらったことを、一緒にやってきました。私が初めて参加したとき、ゆきさんやみほさんはもう何回か参加していて、私は一人で行ったから不安だったけど、最初から分け隔てがなくて、すぐ友だちになってくれました。すごいあったかかったし、みんなで一緒にいろんなことを考えて夜までしゃべってました。いろんな人に迷惑をかけちゃったりもしたんだけど、でも、自分がそれをやっていてすごい楽しかった。2年前、自分で考えることや表現することの大事さに気づけたのは、私がひとりで考えて気づいたことじゃなくて、みんなと一緒に考えて、しゃべって、自分が考えたことを表現することって、ああすごい大事なことだなあと気づかせてもらったんです。ほんとにみんなに成長させてもらい、たくさんの思い出もつくってもらい、大事なことに気づかせてもらったと思います。もしも、ここで今回卒業する4人に会えなかったら、友達同士で大阪に行くなんてことはしなかったと思います。ほんとにいろんな経験ができて、いろんなことに気づかせてくれて、一緒に考えてくれて、一緒に表現し、話してくれて、ありがたいと思っています。長い間、本当にありがとうございました。

伊藤伸二
 僕は、「今日の日はさようなら」という歌が好きなので、今回はそれを歌って、ハミングにのせてちょっとしゃべりたいと思っていたのだけど、時間がなくなりました。僕が16年間、キャンプをやってこれたのは、スタッフとして一緒に取り組むありがたい仲間たちのおかげです。偶然の出会いから、その後何回も来てくれる仲間。大阪だけでなく、遠く関東や九州などから来てくれる仲間。こんな仲間がいるから、キャンプを続けることができています。僕はこの人たちは、何物にも代え難い宝物だと感謝しています。そして、ここで出会う子どもたちや保護者の皆さんにも感謝しています。ありがとうございました。(「スタタリング・ナウ」2005.10.22 NO.134)


日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2024/06/22