神奈川県久里浜にある、国立特別支援教育総合研究所の講師として呼んでもらうようになって、30年以上になるでしょうか。コロナ前までは、久里浜まで出向いて、対面で、丸一日、吃音の話をしていました。対面で話せたのは、2020年3月まで。全国一斉休校が始まる直前のことで、久里浜が対面をやめるぎりぎりセーフで対面による研修を終え、乗った帰りの新幹線では、車両に僕ひとりだった光景は忘れられません。それ以降は、Zoomになっています。
 2023年度は、10月30日(月)の朝9時から午後4時過ぎまでの講義でした。90分の講義を午前に2コマ、午後に2コマ、計4コマです。最初はとてもZoomで4コマなんて無理だろうと思っていたのですが、なんとかなるものですね。少し慣れてきました。でも、やっぱり、僕は対面で、ひとりひとりの表情を確認しながら対話をして話をすすめる方が断然好きです。
 今回、事前にたくさんの資料を用意し、一通り読んでもらって、講義の当日を迎えました。当日用のパワーポイントも用意しましたが、まずは、事前の資料を読み、またこれまで受けてきた研修で感じたことをもとに、ひとりひとりから質問を出してもらい、それに答える形ですすめました。僕が話したいと思って、パワーポイントを用意した内容とほぼ共通の内容の質問をしていただき、僕が言いたかったこと、伝えたかったことを、受講者の方のニーズに沿った形で話すことができました。的確な、いい質問をしてくださった、今年の受講者の方に感謝です。
久里浜集合写真
・吃音とどもり、どう違うのか。
・吃音親子サマーキャンプの目的ときっかけについて
・幼児は、吃音を意識していないのではないかと思うが、意識させることは必要だろうか。
・幼児の吃音指導で、大事なことは何か。
・どもる人が吃音を隠さずにどもれるようになるには、周囲の理解が大事だと思う。世の中の人にどう理解してもらったらいいか。
・吃音の予防教育とは。
・資料にあった、健康生成論、レジリエンス、ポジティブ心理学について説明してほしい。
・通常学級の担任に、配慮をお願いするときに、注意した方がいいことは何か。
・子どもの吃音を治したいと思っている親に、どう寄り添えばいいか。
・自己肯定、他者信頼、他者貢献と、共同体感覚の関係について。
・竹内敏晴さんのことが出てきたが、演劇の手法を取り入れているのか。 

 これらたくさんの質問に、丁寧に答えていると、時間はあっという間に過ぎていきます。 最後に、感想を聞かせていただきました。

・すんなりと入ってきた。
・夫もどもりながら生きている。これを障害といっていいのか。
・ひとりずつ違うから、ひとりずつ対応しなくてはいけない。
・自分にあてはめると、支援に活かせると思った。
・上司、同僚と共有したい。
・読書介助犬の話がおもしろかった。非認知能力を育てたい。
・対話は、どもるどもらないに関係なく、大切だ。
・劣等感を取り除くのではなく、つきあえる程度にやわらかくするという話が印象的。
・子どもと一緒に、生き方をみつけていきたいと思う。
・「どう治すかではなく、どう生きるかだ」のことばは、インパクトがあった。
・ことばの教室に来ているのに、吃音の話を避ける子がいる。そのことどう対話をしていこうかと思っているが、なんか可能性が見えたような気がする。

 いろいろなことを感じていただけたようです。同じを話を聞いても、人によって感じるところは異なります。多分、同じ話でも、聞くときの状態によっても違うのでしょう。それぞれが、自分の感じたことを大切に、これからの毎日に何か生かしていけるようなきっかけとなっていたら、僕はとてもうれしいです。
 最後に記念の集合写真を、画面越しに撮りました。
 早く、対面で、お話ができたらと願います。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2023/11/14