あまりにも劇的なしめくくりとなったあの日の大阪吃音教室。最後に初参加の感想を語った野村さんは、収録の翌週、大阪吃音教室に参加し、再度感想を求められ、「先週はああ言ったけれど、…やはり、できることならどもりたくない」と言います。正直な人です。自分の気持ちに正直な人だからこそ、その後、僕たちの仲間として活動を続けることができたのだと思います。
日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2023/03/23
どもっていいかな…
野村貴子
私が吃音になったのは、中学2年の時です。でも、全く気にしていなかったので、困るようなことはありませんでした。
しかし、就職活動の時、自分の大学名と名前が言いづらく、だんだんと気にするようになり、ひどくなっていきました。そして、吃音を治そうと決心し、話し方教室に1年間通いましたが、結局は治りませんでした。
そんな時に、インターネットで大阪スタタリング・プロジェクト(大阪吃音教室)を知り、藁にもすがる思いで参加しました。
第一印象にとても驚きました。なぜかというと皆さんとても明るかったからです。私は今まで吃音を隠そうと思っていましたし、恥だと思っていたからです。
そして、なんとその日はNHKテレビ収録の日だというのです。一週、参加を遅らせばよかったとチラッと思いましたが、まあ私は映らないだろうと思っていました。でも、バッチリ映っていたので驚きました。その中で私は例会の最後に、初参加の感想を求められ、「吃音でも別にいいかなと思えた」と言いました。言い終わった後すぐに、とんでもないことを言ってしまったと思いましたが、でも本当のその時の気持ちです。単純に吃音でもいいかなと、その時は思えました。
番組放映の次の日の大阪吃音教室で、あの時あのように言ったけれど今はどうですかと聞かれ、「やはり、できることならどもりたくない」と、収録の時言ったこととは少しちぐはぐなことを言いましたが、これも、その時の本当の気持ちです。
このように揺れてはいますが、ひとつ私が確信を持って言えるのは、心の負担が軽くなったことです。どもる人は私の他にたくさんいて、堂々とどもっている。驚きと同時に安心感やうれしさを感じました。
吃音を隠そうとして、辛い思いをされている方々がまだたくさんいると思います。その方々が大阪吃音教室のことを知り、参加されれば、私のように気持ちが楽になれるだろうと思います。(「スタタリング・ナウ」2000.8.15 NO.72)
日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2023/03/23