「どもりの語り部」の巻頭言を書いた「スタタリング・ナウ」NO.60では、島根で始まったどもる子どもや親のための吃音キャンプを特集していました。最初の企画・運営の担当だった宇野さんの報告です。
 島根スタタリングフォーラムと名付けられたキャンプのはじまりを、僕はよく覚えています。
その頃、僕は年末年始を、玉造温泉の保養ホームで過ごしていました。そのことを知った島根県のことばの教室担当者から連絡があり、年末に、研修会をしようということになったのです。 12月28日くらいだったと思います。こんな時に研修会なんてと思ったのですが、会場の雑賀小学校にはたくさんの人が集まってくださいました。そして、夜の懇親会の場で、島根でもキャンプをしようということになったのです。ちょうど、島根県のことばを育てる親の会の30周年ということもあり、その記念事業として計画はすすんでいきました。その中心にいた宇野さんの報告です。

島根スタタリングフォーラムの企画・運営に関わって
    江津市立津宮小学校通級指導教室 宇野正一

はじめに

 島根県ことばを育てる親の会は、1999年に30周年を迎え、その30周年の記念事業の一つとして「島根スタタリングフォーラム」の計画が進められました。私は会場である国立三瓶青年の家に近い通級指導教室の担当者ということで企画・運営についての事務局を任されました。
 「日本吃音臨床研究会の伊藤さんと直接連絡をとって内容について詰めて欲しい。長年吃音キャンプをしておられるからたくさん聞いてより良い企画を立てて下さい」
 先輩の先生方からいろいろとアドバイスをいただきながらも、なかなか相談の電話ができませんでした。昨年末に伊藤さんとお会いする機会があり、夜の宴会の部でも隣の席でご一緒させていただいていましたので、優しい人柄は分かっているつもりでも「やあ、こんにちは!」と言えるほどではなかったのでした。「たくさん聞いて」と言われても、何をどう聞けばいいのだろう。何も叩き台なしに「どうしましょう?」と尋ねるのもあまりにも失礼だろうし…。頭の中でもやもやするばかりでした。
 まずは、日本吃音臨床研究会のホームページを見ました。吃音親子サマーキャンプの情報がありましたが、あまりに盛りだくさんの感じがして、ますますプレッシャーになってきました。(とんでもないことを引き受けてしまった…)
 とりあえず、私のことも覚えていないかもしれないのでと電子メールを送りました。
 「メールは毎日膨大な量がきます。頻繁に見ないことがあるので、急ぎの場合は電話かFAXで」という返事でした。

島根でできること〜2つの目標〜

 1泊2日でどんなことができるだろう。日本吃音臨床研究会のサマーキャンプと同じことなどできるわけがない。私自身がどもる子どもだけを集めて何かしたことなんてない。やったことがないから、やってみるしかない。なんていう訳の分からない理屈で素案を送ると、「大筋はこれでいいんじゃないでしょうか。私自身の動きが見えたのでそのように準備します」と伊藤さん。「もっとこういうことを入れてみたら? ここはこういう内容がいいよ」との指摘を期待していた私としては、さらにプレッシャーを強める結果となりました。
 (本当にこれでいいのだろうか?)
 それでも案内を送ると、次々参加申し込みがやってきす。当初、親子・教員合わせて60名の計画のところ、100名近い申し込みになり、またまたプレッシャーが強まってしまいました。
 そんな状態でも当日は確実に近づきます。伊藤さんから吃音親子サマーキャンプの資料を送ってもらうと、スタッフの打ち合わせの資料や参加者へのしおり、注意事項など、かなりの会議と準備を重ねられることが分かりました。
 今回の島根スタタリングフォーラムは…。
 「しょうがない!とりあえずやろう」
 しおりと教室担当者用の資料は作りました。教室での指導よりも…といった感じでした。
 とにかく次の2つのことを今回のフォーラムの目標にしました。

◇親に、成人吃音者としての伊藤さんに出会ってもらい、生のどもりについての話を聞いてもらう
◇県内の親同士のつながりをつける


日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2023/01/27