「どもり・親子の旅」は、どもる子ども、どもる子どもの親、そして家族の思いがつまった一冊の冊子です。実在の人たちの体験や生の声は、仲間がいること、私もできるかもしれないと思えることにつながります。今日は、どもる大人の感想を紹介します。
日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2022/08/17
自分と向き直るきっかけをもらった
東良一(大阪吃音教室)
『どもり・親子の旅』を拝読しました。
子どもさんたちの多くは「自分と同じどもりの友だちができてよかった。来年もまた行きたい」と感想を語っています。自分もそうだったなあと思いました。僕は18歳のときに東京の矯正所で初めてそういう気持ちを実感したのだけれど、この子たちはすでに小学生、中学生にしてそれを味わっている、それはとてもうらやましく、また頼もしく思えました。
もし自分が小学生のころ親や教師から「どもりの子どもたちのキャンプに行かへんか?」と誘われたとしても、僕は拒否したと思います。「なぜ?」と聞かれても説明できなかったでしょう。
「自分のことは放っておいてほしい。どもりのことも、触れないでほしい」
僕はそう感じていました。それをことばにする勇気は自分にはなかったし、大人の人たちに自分の気持ちを説明して分かってもらえるなどとは思わなかった。ありていに言えば、わずらわしかったからです。周囲からは「何を考えているのか分からない子ども」と映っていただろうと思います。
それだけに、吃音親子サマーキャンプに母親から「いってみる」と誘われた時の松尾君の「行く行く、僕困っててん」という素直で率直な反応に、僕は驚きました。そしてうらやましく思いました。松尾君は小学生だけど、どもりを自分の胸にきちんと抱きかかえるようにして接している。僕はどもりを自分につきまとう重い尻尾のように引きずってきた。昔も、今も。
そういう自分の姿と、改めて向き直るきっかけを、松尾君の文章と「どもり・親子の旅」からもらったように思います。
日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2022/08/17