タイムリーな話題をと思い、長岡花火で寄り道をしました。吃音講習会の報告に戻ります。
前日に千葉入りした僕たちは、実行委員のメンバーと落ち合い、最終の打ち合わせをしました。キャンセルは5人、参加者は34人と確定したので、少ない人数を活かした講習会にできないだろうかと思い、ふと思いついたことをみんなの前に出してみました。
「これまでしたことがないから、失敗するかもしれないけれど…」と前置きをして。
それは、2日間の講習会全体を、オープンダイアローグのようにして、対話の世界にどっぷりつかってみようという試みでした。
講習会に流れるテーマとして、僕たちが考えていたのは、「どんな子どもに育ってほしいか」でした。その子ども像を明確にして、そのためにどんなことをしていったらいいのか、考えたいと思ったのです。まず参加者に、今、自分が思う「どんな子どもに育ってほしいか」を書いてもらいました。
そして、オープニングの出口さんの実践発表に入りました。出口さんは、「どのような環境に置かれても自分らしく過ごせるように、しなやかな考えをもってほしい」という明確な子ども像を持って、子どもたちと対話をしていきました。これまでのような、僕の基調提案から始まるという形ではなく、ことばの教室の実践発表から始めたということは、参加者にとって、とっつきやすいものだったようです。穏やかな口調で、子どもとの対話を本当に楽しく語る発表に、みんな引き込まれていきました。また、子どもと対話をしている映像も流れました。子どもも出口さんも、楽しそうです。
その後、この発表について、質問を受けたり、感想を述べたりするの一般的な形ですが、それを変えてみました。
フィッシュボウル(金魚鉢)というワークの形ですすめました。
フイッシュボウルは、多人数で考えや気持ちをシェアするときに使われるワークです。
1 大きな椅子の輪に全員が座り、その内側に 5脚の椅子で小さな輪を作る。
2 提案者と伊藤に加えて、希望者二人が、内側の小さな輪の椅子に座る。もう一脚は空いた席にしておく。
3 内側の輪の中、まず四人が対話し、外側の輪の人はそれにじっと耳を傾ける。
4 外で話を聞いていて、話したくなった人は内側の空いている席に座る。この席は自由席で、出入りするタイミングは自由で、発言してしばらくしたら退席して、空いた席に外側の人が入る。
実践発表を聞いて、何を感じ、考えたかを、今年、ことばの教室の担当になったばかりの人と、数年経験している人と、僕とが対話をします。そこには、発表した出口さんもいてくれます。質問したり、感想を言ったりしながら対話を続けます。それを周りの人が聞いていて、話したくなったら、空いている席に座り、対話に加わるという形にしました。
多人数の中だと話せないことも、小さな輪だと話しやすく感じることがあります。ここでは内側の「話す人」と、外側の「聞く人」を分けています。外側の輪にいる人は、内側の小さな輪での対話に耳を傾けながら、自分の中にどんな思いや感覚が生じるかに注意を向け、自身の中に響く声が生まれてきたら内側の輪に入って全体でシェアします。内側の人と外側の人が入れ替わりながら、多くの人の声がシェアされました。
はじめに、内側に座る人を募集しました。誰が出るかに時間がかかっていたら、緊張が高まります。勇気ある初参加の二人がさっと出てきてくれたことが、この試みを成功に導いてくれたようです。この真ん中にいる人たちは自由に、出口さんに聞きたいこと、自分が考えたこと、などを話していきます。真ん中に出ることは緊張を伴うようですが、みなさん、ドキドキしながらも、次々と入れ替わって参加して下さいました。いきいきと場が動いている感じがしました。僕も、みんなの発言に触発されて、いろんなことを考え、たくさん話しました。「対話っていいね」という講習会のテーマが、目の前で展開されているのを見たようです。
この形式を2日間通して、行いました。話題が変わるたびに、最初、真ん中に坐るメンバーが変わります。参加者が少ないから、ほぼ全員が真ん中に座ることになりそうでした。
実践発表の後、午後は、同じ形で、対話をすすめるにあたって大切にしたい7つの視点について、話題提供者と僕と、また2人を募集し、4人が対話し、1つを空席にして輪の外から加わって真ん中で対話をするというスタイルで進めました。だんだんとみんなもこのスタイルに慣れてきたようです。
たっぷりあると思っていた時間がなくなり、7つのうち、2つは、翌日に持ち越しました。ゆっくり丁寧に進めたいと思っていたので、何の問題もありません。
午後7時、公式プログラムが終了しました。夕食も食べずに、こんな時間まで研修をするなんて、考えられないかもしれませんが、楽しい時間でした。
初めての試みなので、失敗するかも、と思いましたが、それは危惧に終わりました。
日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2022/08/05
前日に千葉入りした僕たちは、実行委員のメンバーと落ち合い、最終の打ち合わせをしました。キャンセルは5人、参加者は34人と確定したので、少ない人数を活かした講習会にできないだろうかと思い、ふと思いついたことをみんなの前に出してみました。
「これまでしたことがないから、失敗するかもしれないけれど…」と前置きをして。
それは、2日間の講習会全体を、オープンダイアローグのようにして、対話の世界にどっぷりつかってみようという試みでした。
講習会に流れるテーマとして、僕たちが考えていたのは、「どんな子どもに育ってほしいか」でした。その子ども像を明確にして、そのためにどんなことをしていったらいいのか、考えたいと思ったのです。まず参加者に、今、自分が思う「どんな子どもに育ってほしいか」を書いてもらいました。
そして、オープニングの出口さんの実践発表に入りました。出口さんは、「どのような環境に置かれても自分らしく過ごせるように、しなやかな考えをもってほしい」という明確な子ども像を持って、子どもたちと対話をしていきました。これまでのような、僕の基調提案から始まるという形ではなく、ことばの教室の実践発表から始めたということは、参加者にとって、とっつきやすいものだったようです。穏やかな口調で、子どもとの対話を本当に楽しく語る発表に、みんな引き込まれていきました。また、子どもと対話をしている映像も流れました。子どもも出口さんも、楽しそうです。
その後、この発表について、質問を受けたり、感想を述べたりするの一般的な形ですが、それを変えてみました。

フイッシュボウルは、多人数で考えや気持ちをシェアするときに使われるワークです。
1 大きな椅子の輪に全員が座り、その内側に 5脚の椅子で小さな輪を作る。
2 提案者と伊藤に加えて、希望者二人が、内側の小さな輪の椅子に座る。もう一脚は空いた席にしておく。
3 内側の輪の中、まず四人が対話し、外側の輪の人はそれにじっと耳を傾ける。
4 外で話を聞いていて、話したくなった人は内側の空いている席に座る。この席は自由席で、出入りするタイミングは自由で、発言してしばらくしたら退席して、空いた席に外側の人が入る。

多人数の中だと話せないことも、小さな輪だと話しやすく感じることがあります。ここでは内側の「話す人」と、外側の「聞く人」を分けています。外側の輪にいる人は、内側の小さな輪での対話に耳を傾けながら、自分の中にどんな思いや感覚が生じるかに注意を向け、自身の中に響く声が生まれてきたら内側の輪に入って全体でシェアします。内側の人と外側の人が入れ替わりながら、多くの人の声がシェアされました。
はじめに、内側に座る人を募集しました。誰が出るかに時間がかかっていたら、緊張が高まります。勇気ある初参加の二人がさっと出てきてくれたことが、この試みを成功に導いてくれたようです。この真ん中にいる人たちは自由に、出口さんに聞きたいこと、自分が考えたこと、などを話していきます。真ん中に出ることは緊張を伴うようですが、みなさん、ドキドキしながらも、次々と入れ替わって参加して下さいました。いきいきと場が動いている感じがしました。僕も、みんなの発言に触発されて、いろんなことを考え、たくさん話しました。「対話っていいね」という講習会のテーマが、目の前で展開されているのを見たようです。
この形式を2日間通して、行いました。話題が変わるたびに、最初、真ん中に坐るメンバーが変わります。参加者が少ないから、ほぼ全員が真ん中に座ることになりそうでした。
実践発表の後、午後は、同じ形で、対話をすすめるにあたって大切にしたい7つの視点について、話題提供者と僕と、また2人を募集し、4人が対話し、1つを空席にして輪の外から加わって真ん中で対話をするというスタイルで進めました。だんだんとみんなもこのスタイルに慣れてきたようです。
たっぷりあると思っていた時間がなくなり、7つのうち、2つは、翌日に持ち越しました。ゆっくり丁寧に進めたいと思っていたので、何の問題もありません。
午後7時、公式プログラムが終了しました。夕食も食べずに、こんな時間まで研修をするなんて、考えられないかもしれませんが、楽しい時間でした。
初めての試みなので、失敗するかも、と思いましたが、それは危惧に終わりました。
日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2022/08/05