6月というのに、夏のような日が続いています。「吃音の夏」と呼んでいる私たちのイベント。2年間中止になりましたが、今年は開催に向けて準備を始めています。
7月30・31日は、千葉市で、第9回親、教師、言語聴覚士のための吃音講習会を、8月19・20・21日は、滋賀県彦根市で、第31回吃音親子サマーキャンプを行います。
詳細は、日本吃音臨床研究会のホームページに掲載しています。
今日、紹介する「スタタリング・ナウ」(1998.4.18 NO.44)の巻頭言は、吃音親子サマーキャンプに初めて参加した母親から届いた手紙を読んで書いたものです。
セルフヘルプグループが大切にしている3つのメッセージ「あなたはひとりではない、あなたはあなたのままでいい、あなたには力がある」で救われた僕たちは、子どもたちにも、同じメッセージを伝えたくて、吃音親子サマーキャンプを始めました。しっかりと受け取ってくれた子どもたちが、これまでにたくさん卒業していきました。
今年も、どんな出会いがあるか楽しみです。コロナの感染拡大防止のためできる限りの対策をして、「吃音の夏」を迎えます。ぜひ、ご一緒して下さい。
日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2022/06/26
7月30・31日は、千葉市で、第9回親、教師、言語聴覚士のための吃音講習会を、8月19・20・21日は、滋賀県彦根市で、第31回吃音親子サマーキャンプを行います。
詳細は、日本吃音臨床研究会のホームページに掲載しています。
今日、紹介する「スタタリング・ナウ」(1998.4.18 NO.44)の巻頭言は、吃音親子サマーキャンプに初めて参加した母親から届いた手紙を読んで書いたものです。
セルフヘルプグループが大切にしている3つのメッセージ「あなたはひとりではない、あなたはあなたのままでいい、あなたには力がある」で救われた僕たちは、子どもたちにも、同じメッセージを伝えたくて、吃音親子サマーキャンプを始めました。しっかりと受け取ってくれた子どもたちが、これまでにたくさん卒業していきました。
今年も、どんな出会いがあるか楽しみです。コロナの感染拡大防止のためできる限りの対策をして、「吃音の夏」を迎えます。ぜひ、ご一緒して下さい。
初めての友達
日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二
「私の大好きな友だちはいっぱいいる。だけど、その中で一番好きなのは、私と同じどもりの女の子だ。名前は、ゆきちゃん。私が生きてて初めてとても気が合う友だちだった。けど、その子とは、1年に1回しか会えない。その1回とは、サマーキャンプの事だ」 本田みほ 小学5年生
昨年の吃音親子サマーキャンプに参加した本田さんからいただいた手紙に、みほちゃんが学校で書いた作文の一部が紹介されていた。
キャンプに来る前、本田さん親子は、どもりということばは使ったことがなく、なるべくその事には触れないできた。児童相談所のどもりを意識させてはいけないという指導があったからだ。意識させずに、なんとかどもりを治したいという思いを一杯もってキャンプに参加した。
「初めて母娘ともに、同じ悩みをもつ多くの人と出会い、私達だけじゃないという思いと、そして、真剣にどもる子どものことを考えて下さる多くのスタッフの存在を知ったことは、私の大きな支えになっています。キャンプから帰ってから、みほもみちがえるほど明るくなったのですが…」
帰りの新幹線の中で、母と娘は初めてどもりについて話し合い、「どもってもいいじゃないか」と母は娘に言えるようになった。しかし、夏が終わり学校が始まると、キャンプの時とは違って、実際にどもるのは娘だけだ。「どもってもいい」がどれだけ娘の支えになるか空しく感じたという。
そんな中、4年生後期の代表委員に立候補してみほちゃんは当選する。母は内心びっくりしながら、自ら立候補したその勇気を褒めた。
ところが、その夜、布団の中で娘はこう言う。
「代表委員にならなければ良かった。今度の全校集会での自己紹介の時、きっと言葉が詰まってしまう・・。」
「言葉がどもってもいいじゃない。ママは、代表委員で頑張ろうと思ったみほちゃんの気持ちを素晴らしいと思う。どもってもみほちゃんは偉いよ」
今度は、心から母はそう答えることができたと言う。
そして、4年生の3学期の終わりに学校で書いたのが、『ともだちと自分』のこの作文である。
本田さんは手紙をこう結んでいる。
「半年以上も前、たった3日間の交流しかなかったゆきちゃんが、今でも娘の心の中で、大きな支えになっているんだと思いました」
この本田さんの手紙には、セルフヘルプグループの最も基本の大切なことが含まれている。
「あなたはひとりではない」
「あなたはあなたのままでいい」
ひとりどもりに悩んでいた頃は、どもるのは本当に自分ひとりのように思っていた。他にいるだろうとは想像すらできなかった。仮に想像できたとしても、実際に出会うのとは全く違うことだろう。
セルフヘルプグループの人達は、「同じような悩みをもつ人との出会い」の喜びがいかに大きなものだったか口を揃えて語っている。
みほちゃんにとって、同じようにどもるゆきちゃんとの出会いが、学級代表に立候補する後押しをしたのだろう。そして、辛いことがあったとき、ゆきちゃんのことを思い出したことだろう。まさにみほちゃんは、「あなたはひとりではない」。
どもりを一切話題にせず、どもりが治ることを願っていた母が、子どもに「どもってもいいじゃない」と心から言えたというのは、すごいことだ。
「あなたはあなたのままでいい」は、セルフヘルプグループの最も大切にしているコンセプトだ。
娘は「私はひとりではない」と実感でき、母は、心から「そのままのあなたでいい」と言う。
セルフヘルプグループのもつ意義の大きさを改めて思った。
本田さん親子を含めた、どもる子どもと親の体験文集が『どもり・親子の旅』としてまとめられた。朝日福祉ガイドブック『セルフヘルプグループ』と殆ど同時に発行されることに不思議な縁を感じる。
日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2022/06/26