2022年度がスタートして3回目の大阪吃音教室。4月22日の講座は、「吃音Q&A 吃音の基礎知識」でした。仲間の一人が、僕に、吃音に関する質問をしてくれます。それに対して僕が答えていくのですが、質問者と僕だけでなく、周りにはたくさんの参加者が聴衆としてその場にいてくれます。その場を支えてくれる大切な存在です。
 また、この講座は、撮影をして、それを映像として残します。これまでに、32本の映像をYou Tubeで発信してきました。コロナの影響を受け、休講も続いたため、久しぶりの撮影となりました。どんな質問が出てくるか、事前に知らされていないので、僕にとっては、ぶつつけ本番です。でも、これがいい意味での緊張になり、僕にはとても刺激的な時間になっているのです。
 今回も、大まかなテーマとして「吃音と就労」が挙がっていましたが、どんな質問なのかは知らされていません。どもる人にとって、関心の大きい、幅広いテーマです。特に準備をしないで当日を迎えました。

吃音Q&A  1 僕は、必要な場以外、例えば野外で歩いている時などマスクはしませんが、撮影者の井上さんが、撮影はマスクなしでしたいので、パーテーションが必要だと提案してくれました。そのため、急遽探して、質問者と僕との間に立派なアクリル板のパーテーションが用意されました。なので、安心してマスクなしで話すことができました。

 当日、少し早くアネックスパル法円坂に着くと、吃音Q&A用の会場設営がされています。そして、これまでそうだったように、井上さんが、手慣れた手つきで器材をセッティングしてくれました。カメラが2台、照明、それぞれが使うピンマイクなど、本格的な撮影準備がなされていきました。
 仕事がぎりぎりまであったため、走って会場に着いた質問者の奥田さん、息を整えて、スタートしました。メモで少しだけ紹介します。
吃音Q&A  2
◇就活のスタートは、直前ではなく、早め早めに

《第1問》 就職活動中と、就職してからと、どもる人にとってはその両方に大きな不安が伴う。就職活動は一般的に不安があり、プレッシャーがかかることだが、吃音があるとより不安も大きくなる。どもっていると、他人からどう思われるか。人事担当の人からどんな評価を受けるだろうか。どもる自分はどう見られるのか。どもったら評価が落ちるのではないか。よく見てもらえないと評価が落ちるだろう。となると、どもらずに話さないといけない。そんなことを考えてしまう。面接のときに、自分がどもることを公表することをどう考えるか。私は公表しなかった。それは、どもり方に波があるから、きっと理解してもらえないだろうと思ったし、そもそも伝え方を知らなかったから。まず、面接でどう伝えたらいいのか、そのあたりの話から聞かせてほしい。

伊藤 初めに、就職活動の不安と、就職してからの不安、この2つを出してくれた。これを分けて考えてみたい。
 どもる人は、一般の人と比べて、有利なことがある。就職活動に不安があるということは、就職活動が始まる前から分かっているはずのこと。だから、その不安に対して、どう対処するかは、他の人より早く考えることができるということだ。
 たとえば、大学に入学したときから考えることができると思うけれど、実際はどうだろうか。以前、大阪吃音教室に参加した人で、就活が始まって、大学でのセミナーに参加して、コミュニケーション能力が大事だと言われ、不安が大きくなったと言っていた。前から分かっていたことだと思うのに、そのときになって、どうしようと思うのは、不思議な気がしたんだけど。

奥田 分かっていても、きっと問題を先送りしてしまうのだと思う。実際には、大学在学中に、アルバイトをしようとしたときに直面する。

伊藤 就活の予行練習として、アルバイトがあると考えていいかもしれない。ハンディがあるのだから、就活は、大学入学直後からスタートすると考えたらいい。就活は、直前ではないと、どもる人には強調したい。(つづく)

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2022/04/25