大阪吃音教室の開講式があったため、水町俊郎さんの「吃音者のアサーティブネスについて」の後半の紹介が今日になってしまいました。
 「私は『スタタリング・ナウ』の熟読者です」とおっしゃっていた水町さんは、僕たちの良き理解者であり、海外の文献を読み、研究者として、多くの示唆を与えて下さいました。
 水町さんとは、以前、臨床家のための吃音講習会を4回開催し、どもる人と研究者が共に話し合い、学び合う場を大切にしてきました。その関係もあって、また、吃音とアサーティヴネスについていち早く関心をもっておられた水町先生に、アサーションを学ぶ吃音ショートコースに是非参加して欲しいとお願いしたのでした。残念ながら、紙上参加の形になりました。平木典子先生、水町俊郎先生、内須川洸先生と、直接論議したかったと改めて思います。
 水町先生と一緒に開催してきた吃音講習会は、水町先生が亡くなられたために、4回で終了しましたが、現在の「親、教師、言語聴覚士のための吃音講習会」は8回続けてきました。コロナで2年間、中止になりましたが、なんとか今年は開催したいと思っています。
 水町さんの紙上参加の後半を紹介します。

  
吃音者のアサーティブネスについて
                            水町俊郎

さわやかな自己表現
 ところで、私が調査をお願いした時点まではまだ、吃音者のグループの方々は、アサーティブネスにはそれほど関心を持っておられなかったように思います。しかし、その後少しずつそれに関心を示されはじめ、ワークショップで平木典子先生の「アサーション・トレーニング」を取り上げられたり、パット・パルマーさんのワークショップを受けられたりと、積極的に活動されてきました。私は、詳細に紹介されたそれらのワークショップの内容を何回も読み返し、大いに勉強させていただきました。
 お恥ずかしいかぎりですが、「基本的アサーション権」なるものの存在を、私はその時はじめて知った次第です。そして、「自分の意見を主張しない権利」までもがその中に含まれていることを知りました。パット・パルマーさんの『自分を好きになる本』(径書房)も、「自分を好きになりなさい」といっているというよりも、「今のままでいいんだよ」「ありのままの自分でいいんだよ」といっているととった方がより適切であると私には思えました。
 ただ、「相手のことも大切に」というように、相手の権利も尊重するというかたちでどう自分を率直に自己表現していくかということが現実的には大変に難しく、そのことを学ぶのが今回の吃音ショートコースの大きな目的なのでしょう。

論理療法
 また、そのような「さわやかな自己表現」ができないことの背景に、論理療法でいう非合理的な思い込み(イラショナル・ビリーフ)が関係していることも否定できません。伊藤順康氏は、その著『自己変革の心理学―論理療法入門―』(講談社現代新書)でイラショナル・ビリーフをもつようになる理由の一つとして「自己主張へのおそれ」をあげ、論理療法の視点から、率直でさわやかな自己表現の必要性を強調しています。
 1991年の平木典子先生のワークショップでも、「アサーションと論理療法」が取り上げられているようですが、私はこの点が今回、どのようなかたちで具体的に取り上げられるのかに特に関心を持っています。パット・パルマーさんのワークショップに参加された、ことばの相談室の先生が、「自分はもともとトレーニングと名のつくものにはひどい拒否反応を示していたが、それに参加して、あれほど嫌だったトレーニングに積極的に挑戦するようになった」という趣旨のことを述べておられます。そして、「私はこの生き方が気に入っている。こだわり続けようと思う」とまでおっしゃっています。
 「アサーション・トレーニングによる指導は、ちょうど植物の種をまくようなもので、トレーニングが終わってもクライエントは成長し続ける」ということを考えると、おそらく今回の吃音ショートコースに参加される皆さんは、実に多くのことを学習されるに違いないと確信しています。

おわりに
 以上、主催者の日本吃音臨床研究会のご要望には遠く及ばない内容になってしまいましたが、これで紙上参加の責任を果たしたことにさせて頂きます。
 最後になりましたが、今回の吃音ショートコースが盛会であることを心よりお祈り申し上げます。(了)


日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2022/04/11