4月8日(金)、大阪吃音教室の2022年度の開講式でした。
開講式1 大阪吃音教室は、昨年度、予定していた講座40のうち、半分しか開講できませんでした。今年こそ、の願いのもと、3月はじめに運営会議を行い、今年度のスケジュールや担当者を決めました。そして、昨日、開講式を迎えたのです。
 コロナ感染の高止まりが言われ、第7波かとも思わせる中、どれくらいの参加があるかと、少し不安でしたが、初参加2組4人を含めて、16人が参加しました。初参加の2組は、父と子(高校2年生)、母と子(小学6年生)の親子でした。2組とも、何ヶ月も前から、ホームページを見て参加したいなと思っておられたようです。ところが、コロナの感染拡大で休講となり、満を持して、今日、参加して下さいました。こうして吃音教室の開講を待っていて下さる人がいるということは、本当にありがたく、うれしいことでした。

開講式2 大阪吃音教室は、この初参加の方からの質問を中心に進みました。
 初参加の高校2年生は、「吃音に対する向き合い方が分かっていない。吃音について新たな考え方を得られるきっかけになればと思い、参加した」と発言しました。お父さんは、これまでいい仲間に恵まれ、過ごしてきたが、子どものこれからのことを思うと、家族や学校以外のコミュニティを広げられたらいいなと思って、参加したとのことでした。
 もう一人の初参加の小学6年生は、周りが大人ばかりで、最初は緊張しているようでした。進行役が何か話しかけても、なかなか話すことができません。そばで、お母さんが、口を挟まず、やさしく見守っている姿が印象的でした。お母さんは、「この子が吃音にどれくらい悩んでいるか分からない。学校に行くのが嫌だという時もあった。学校に、同じようにどもる子どもはいるが、どもる大人には会ったことがない。どもる大人に会わせてみたかった」と発言しました。幼稚園の時、担任の先生から「吃音だから、病院に行ったら」とすすめられたそうですが、吃音はそんなものではないだろう、病院に行くなんて、なんて失礼なと思い、そのままにしていたそうです。吃音は治さないといけないものなのか、そんなことはないだろうと思ったという話に、こんなふうに考える人もいるのだと、うれしくなりました。
開講式3 初参加の人の質問や発言をもとにして、いろいろ吃音に関する話が出ました。大阪吃音教室のメンバーは、話題に合わせて自分の体験を語ります。決して押しつけではなく、ひとりのどもる人間として、私はこう生きてきたと話をします。そこには、新しく参加した若い後輩へのエールの気持ちが込められていると思いました。
 《逃げる》ということがひとつのテーマになりました。常連の参加者からは、逃げて逃げて逃げまくったという体験や、しんどくても決して逃げなかったという体験など、話す場面にどう向き合い、対処したかの様々な実体験が話されます。小学2年生の秋から悩み始めた僕は、音読や発表、クラスのいろんな役割から逃げてばかりでした。そのために自分に自信がもてなくて更に悩んだ体験があるからこそ、しんどくても、嫌であっても、基本的には逃げてはいけないと話しました。それが、人として誠実だと思うからです。
 社会生活を送る上で、どもることがハンディになる人はいるでしょう。ハンディになると考えたら、それを嘆いていても何も始まらないので、他の人がしていない努力が必要です。それを「損」だと考えるか、「ひとつのバネ」にするか、その人の考え方次第なのですが、できれば、努力することを「チャンス」だと捉えたいのです。吃音に悩むばかりで、勉強など何一つ努力してこなかったことを後悔している僕は、小学生、高校生にしっかりと勉強することをすすめました。その努力は、その人の力になり、能力になり、実力になります。そして、豊かな人生につながると思うのです。よく人は、人より優れたものを持って自信をつけろといいますが、すべての人にそれができるものではありません。長所を伸ばすといわれても、なかなか普通の人にはできないことです。でも、自分の好きなこと、夢中になれること、熱中できることをみつけることはできるのではないでしょうか。僕が今、苦しんだ時期、勉強せず怠けた時期はあったものの、それなりの人生を送ってきたのは、好きなこと、熱中できることがあったからです。それは読書と映画でした。僕は人生の大切なことや、思考力をほとんど読書と映画で身につけたように思います。優れてはいないし、長所でもないけれど、好きで、熱中するものがあったことが幸いでした。そんな僕の体験も話しました。
 職業のことも話題に出ました。大阪吃音教室にこれまで参加した人が様々な職業について活躍している具体的な人生を紹介すると、小学6年生も、高校2年生も、そしてその保護者も、ちょっと安心したようでした。
 
 最後に感想を聞きました。
 親は参加して実際の成人のどもる人の体験を聞くことができて、将来への展望が少し持てたと話しました。
 高校生は、「自分の性格上、話すとき、周りがどう思っているか、つい考えてしまう。でも、今まで以上に自分を前に出していくことを考えた方がいいのかなと思った。どもることは、他の人と比べたら、ハンディになる。そのハンディを補うだけの能力を持っていれば、社会に出て働いていける。そんな能力を生かしていこうと、プラスに物事を考えたらいいなと思った」と話しました。
 小学生6年生は、初めの頃は聞き取れないほど小さな声だったのが、最後の感想では、「逃げずにやっていきたい。難発より連発の方が楽に話せると知ったので、緊張せず、連発にしていきたい」と、少し声が大きくなって、しっかりと話していました。いい声でした。

 人と直に会い、語り、聞き合う時間は、とても居心地のいい時間でした。久しぶりに大阪吃音教室の仲間に出会い、その思いを強くしました。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2022/04/09