昨日のつづきです。1995年4月の大阪吃音教室開校式での様子を紹介しています。
 チャールズ・ヴァン・ライパーの『The Treatment of Stuttering』の「動機」を紹介しながら、話を進めています。
 ことばは、その人固有のものです。人生、家庭環境、職場環境、性格など、人はそれぞれに違い、一律な訓練など成り立ちません。時に恥ずかしく、時に嫌な思いもしながら、自分で自分のことばをみつけていくしかないと僕は思います。そのためには、大阪吃音教室のような仲間の存在が大切なのです。

動機〜大阪吃音教室の開講の日にみる

言語訓練とは
 吃音を、自分が納得のいく程度にまで訓練するには、どれが一番効果的だと思いますか?
A 週1時間、半永久的 4人
B 1日1時間、2年間 2人
C 1日3時間、1年間 1人
D 1日4時間以上、4か月 2人

☆参考までに、チャールズ・ヴァン・ライパーの『The Treatment of Stuttering』第9章の「動機」では、アメリカの調査で全ての人がAが一番効果的と考え、どんなに集中しても4か月ですむと答えた人は一人もいません。
 吃音には息の長い取り組みが必要です。皆さんも、1年間、大阪吃音教室に継続して来てほしい。1、2回来ただけで自分には合わないといってやめてしまうのは残念です。
 人生のある時期に一度は、自分の吃音ときちんと向き合うことをお薦めします。僕たちは吃音に深刻に悩み、将来に対して漠然とした不安を持っているけど、真剣に吃音について考えたり、取り組んだりはしなかったのではないでしょうか。
 その取り組みですが、ことばはその人固有のものです。その人にはその人の人生があり、家庭環境があり、職場環境があり、性格がある。それを一律に吃音だということで呼吸が悪いの、発声が悪いのだと、一律に訓練しても全く効果はない。誰もその人に一緒についていって電話をしたり、職場に出ていけるものではない。親であっても兄弟であってもついていけない。自分の吃音は自分で取り組むんだという自覚がまず必要です。また、日常生活の場でしかことばというものは変化しない。吃音は自分の意思でコントロールできないと考えて下さい。どこかで訓練をして、自信がついてから日常生活に出て行くというのでは、自信がつく日はなかなか来ないでしょう。学生は学生の本分の学校生活の中で、ゼミで発表したり逃げないでやっていく。また、社会人は自分の職場の中で上司に怒られながら話し続けるしかない、その時、少し自分でコントロールできるところはしていく。
 まず、からだに注目して下さい。私たちは話す時、ついつい緊張してしまう。自分自身のからだに気づきたい。ふっと力を抜くためには、自分のどこに力が入っているのかに気づかないと、緊張を緩めることはできない。そして、人と関わりたいと言いながら、人と話すときに人の目を見ないなど相手に向かうからだになっていない。吃音を治すということでなく、人間として声を出すということはどういうことか、みんなで考え、トレーニングをしていきましょう。(つづく)


日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2021/11/22