初参加者の悩みについて優先的に話し合いをした後、当日の講座の本題に入りました。「自分を認め、人を認める 〜交流分析〜」の講座、大阪吃音教室の西田逸夫さんの報告を紹介します。

「自分を認め、人を認める 〜交流分析〜」  2021.06.25(金)

 小谷さんの話の後、今日の講座に入りました。講座の担当者は、初参加者のために、大阪吃音教室の三つの柱を解説した後、交流分析とストロークについてこう解説しました。

担当者:ストロークは、交流分析の概念の1つで、1957年にエリック・バーンによって提唱されました。エリック・バーンは、ストロークを、他者の存在を認識する全ての行為といいます。
 strokeは、水泳のひとかきなどで使いますが、「撫でる」の意味もあり、私たちは、小さな頃に親から撫でられた体験を持っています。私たちは、人間関係を築くとき、あらゆる場面で、ストロークの交換を絶えず行っています。相手の存在や価値を認めるような様々な刺激のことをストロークといいます。身体的、言語的、非言語的なストロークを出して下さい。ストロークには、プラスのストロークと、マイナスのストロークがあります。

 プラスのストローク 参加者から出てきたもの
 /搬療 抱きしめる、握手をする、肩を抱くなど
 言語的 あいさつをする、話しかける、褒める、励ます、ねぎらうなど。
 H鷂生貪 微笑む、うなづく、見つめる、傾聴するなど。
 
 マイナスのストローク 参加者から出てきたもの
 /搬療 なぐる、ける、つねるなど
 言語的 けなす、怒鳴りつける、ののしる、批判するなど、
 H鷂生貪 にらみつける、無視する、冷たい視線など、 

 ここで、大阪吃音教室で使っている、ストロークパターンのチェックリストを配布し、記入しました。
担当者:そろそろ時間なので、再開します。
 A:プラスのストロークを発信する度合い  1〜5点
 B:マイナスのストロークを発信する度合い
 C:プラスのストロークを受ける度合い
 D:マイナスのストロークを受ける度合い
 E:ストロークのやり取りのない度合い

担当者:やってみてどうでしたか、初めてチエックリストをした方の意見を聞かせて下さい。
奥田:チェックする前に思っていたより、自分からプラスのストロークを出す度合いが大きく、プラスのストロークを人からもらう度合いも大きかったです。
小谷:私は、プラスを人に与えているけれども、その割には周りからプラスのストロークをあまり受けていないと分かりました。
担当者:それは損ですね。
小谷:また、マイナスのストロークを多く受けていて、Dが5点でした。
担当者:ほかの人のDはどうですか?
  (2点とか4点、0点の人も何人かいる)
担当者:できたらマイナスよりもプラスの方を発したり受けたりしたいです。

〇ストロークバンクの法則
担当者:(ストロークバンクの解説、省略)
西田:ストロークバンクについて、以前の例会で気づいたことがある。プラスのストロークが自分に十分に溜まっていないと、人にプラスのストロークを出せないのは確かですが、一旦、自分からプラスを出せるようになり、人に自然な笑顔を投げ掛けたりすることは、自分でも嬉しい。誰かにプラスのストロークを発信する行為自体が、自分に向けてのプラスになるので、プラスのストロークは、出せば出すだけ、増えていく。
伊藤:お金だったら、使ったら減るけど。ストロークは減らないどころか、増えてくるね。
五島:細胞分裂みたいなものですね。
西田:そんな感じがします。
嶺本:無意識にプラスのストロークを出した場合は、減らないだろうけれど、意図的に、意識的にプラスのストロークを出そうとすると、減っていきそうな気がする。
担当者:それは、どういうことですか?
嶺本:したくないのに、褒めたり、感謝したりすると、ストロークバンクのストロークが減りそうな気がします。
坂本:マイナスを内に秘めた、プラスのストロークになりますね。
伊藤:それだったら、偽装文書やんか。
嶺本:プラスのストロークを出そう出そうと思いながらも、ほほえみや笑顔も作り笑いになってしまう。
伊藤:作為的なプラスのストロークは、出さない方がいいねえ。
坂本:それは却って逆のストローク、つまりマイナスのストロークを出していることだと思う。
担当者:それは交流分析で言うと「裏面交流」で、「相補交流」に見えて、実は違う。自分の気持ちに反して、プラスを出そうとすることはだめでしょうね。そうでないと、相手は見破り、かえって嫌味になる。自然に湧いてくるものが本当は一番いいんだけれど。
嶺本:プラスのストロークを出すのがいいって聞いたから、プラスを出そうと、無理をしていたんでしょうね。
伊藤:「べき」とか「ねばならない」では駄目やね。そういうときは、「何で自分はプラスのストロークを出せないんだろう」と自己点検をしたほうがいい。例えば、「自分はすごく虐げられている人間だった」とか、「自分はこれまで批判ばかりしていた」とか気づく。
西田:そう気づけば、自分なりの喜びや楽しみを自分流に作り、まず、自分自身にプラスのストロークを与えたり、プラスのストロークを出してくれそうな人とつきあうとか。作為的なものや、自分の気持ちを偽って人を褒めようなんて駄目です。
東野:僕の妹が、市役所の保険年金関係の窓口で働いています。国保が毎年下がっていっているので、窓口に苦情が来たり、市民から文句を言われたりしている。感謝されるより、苦情の方が多い。ほかにも生活保護関係など、同じような部署がある。担当の人は、普段からマイナスのストロークをたくさん受けているので、どこかでプラスのストロークを溜めないとしんどいですね。そんなことを思いました。
伊藤:コロナワクチンの接種の受付をしている人も、苦情が多く来て、精神的に参る人がいるらしいよね。今は緊張状態にあって、自分をなんとか支えていても、あまり続くと、この先が心配だね。
坂本:十代女性の自殺が、去年より100人多い。あまり報道がないけれど、状況が悪くなると、ひずみは弱い存在に集中する。
担当者:さっきの嶺本さんの話を聞いて思い出した。以前の私は、有難くないストロークと思っても、わざと「有難う」と言ったりしていた。演技して、見破られないようにしていた。昔そういう演技を使いまくっていたことを思い出しました。すると、人間を信じられなくなり、少しやばくなりました。

○人間関係を悪くする4つの法則
担当者:(解説、省略)
有馬:人を褒めるのがとても上手な友人がいる。すごく魅力的で、私の好きな友人でした。その友人のピアスを「かわいい」と褒めたら、相手は「かわいいのはピアスだけで、私はかわいくない」と否定されました。そんなことが何度も続いたので、自分の中に怒りの気持ちが起こり、なぜ腹が立ったかと考えて、分かったことがあります。自分が相手のピアスを良いと言ったのは、確かに物自体を褒めてはいるが、それを選んだその子のセンスやつけ方も含めて褒めているのに、それを否定された気がしたのだと。また、それを相手に伝えようとした私の気持ちを否定されたように感じたからだと気づきました。だから自分に、違和感があったのだと気づきました。自分もプラスのストロークを受けたときに必要以上に否定しないように気をつけようと反省しました。
担当者:プラスのストロークは素直に受けるように、気をつけましょう。
徳田:Eの、人とストロークをやり取りしないことについて。自分に忠実で素直であれば、Eの数字が大きくなる場合があるのでは。ストロークを交換しない、自分だけの世界に入りたいときがあってもいいと思う。普段人と仕事で接しているので、週末の日曜日などは静かに過ごしたい。また、お坊さんが出家するのも、俗世間から離れるということだから、これに当たるのではないですか。
伊藤:ストロークに関して、基本的に大事なことは何だろう? 基本的に大事な哲学と言うか思想と言うか、そういうものを持ってないと、先ほどの話のように意図的な、口先だけのことばになったり、無理をして却ってしんどくなったりする。大事なのは、できるだけ自分や他者のプラスの面を探そうとすることだと思う。それには練習が必要で、他者をよく観察して、良いところを探す視点を持つ必要がある。
 1992年にサンフランシスコで開かれた第3回吃音者世界大会で、『自分を好きになる本』の著者パット・パルマ―さんのワークショップの最後、「参加メンバーを互いに褒める」のセッションに入ったとき、初対面同士なので殆どの参加者が服装や表情など外見を褒める中、パット・パルマ―さんは「あなたはとても積極的な人だ」とか「協調性のある人ですね」とか、参加者の内面を褒めていた。「どうしてそんなことが分かるのか」と尋ねられたパルマ―さんは、「今日のワークショップでいろいろなセッションをする中で、私は皆さんの言動をずっと観察して、それぞれの良いところを探していた」と答えた。人のポジティブな面を探す視点、ネガティブなところがあってもそれをポジティブに捉えられないかと考える視点が大事。外見を観察しているだけでは、うまくいかない。自分自身も含め、ポジティブな面に目を向けることしていないと、普段人をけなしてばかりいると、どうしても人の欠点ばかり目についてしまう。

 講座の締めくくりとして担当者がストロークについて少し解説した。

◇ストロークの法則
・人はプラスのストロークを求めるものである。しかし、それが得られない時には、マイナスのストロークを求めてしまう。
・ストロークは銀行と同じで、相手に与えてばかりいると,そのうち『預金』が底をついてしまう。

◇肯定的ストロークをお互いに交換しあい、自分自身のストロークが赤字にならないようにするためのキーポイント
・与えるべきストロークがあれば,惜しみなく周りに与えよう。 
・欲しいストロークは要求しよう。
例「来週の水曜日は私たちの結婚記念日ね」「この服、似合うかしら」など。
・欲しいと思っているストロークが来たら、喜んで受け取ろう。
・欲しくないストロークが来たら上手に断ろう。
・ストロークが不足したら、自分で自分にストロークを与えよう。

◇初参加者感想
小谷:今日の講義を聞いて、ここでは生き方について話していて、楽しく充実した人生を送るために勉強していることが分かりました。私も吃音に悩んで来ましたが、今日は勉強になり、刺激にもなりました。吃音についての考えを変え、今後、もう少し楽に生きたいと思いました。(了)

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2021/7/27