大阪はじめ9都道府県に出されていた緊急事態宣言が延長されることになりました。僕たちの毎週金曜日のミーティングの場である大阪吃音教室も、ずっと休講のままです。出会い、語り合う場を持つことができないのは、本当に寂しいことです。
ひとりで、自分の問題に向き合うことは大変なことです。同じような体験をした人の話を聞き、自分の体験を語り合う中で、たくさんのヒントを得ることができます。今は、そのような場を持つことがかなり難しいのですが、以前、開催していた吃音相談会に参加した保護者の感想をみつけました。吃音相談会では、子どもの吃音を心配して、本当に藁にもすがる思いで参加される保護者の方にたくさん出会ってきました。自分の体験を整理して伝え、どもりながらも、その子どもらしく生きることができると、自分の体験を語ってきました。語り部としての活動を、できるだけ今後も続けていきたいと思っています。
今日紹介するような感想を読むとと、自分の体験が役に立ったようで、うれしくなります。2015年の冬の相談会に参加された方の感想です。
日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2021/5/30
ひとりで、自分の問題に向き合うことは大変なことです。同じような体験をした人の話を聞き、自分の体験を語り合う中で、たくさんのヒントを得ることができます。今は、そのような場を持つことがかなり難しいのですが、以前、開催していた吃音相談会に参加した保護者の感想をみつけました。吃音相談会では、子どもの吃音を心配して、本当に藁にもすがる思いで参加される保護者の方にたくさん出会ってきました。自分の体験を整理して伝え、どもりながらも、その子どもらしく生きることができると、自分の体験を語ってきました。語り部としての活動を、できるだけ今後も続けていきたいと思っています。
今日紹介するような感想を読むとと、自分の体験が役に立ったようで、うれしくなります。2015年の冬の相談会に参加された方の感想です。
相変わらずの寒さで、春の訪れが待たれる昨今ですが、いかがお過ごしでしょうか?
昨年12月5日の吃音相談会に参加させていただきました木村遼の母の木村春子です。相談会ではありがとうございました。
現在中学1年の次男が3歳頃からどもることに気づき、市のことばの先生に相談などもしました。小学校に入っても授業参観の時の発表など、ことばの出だしが「繰り返し」の状態でどもっていましたが、一度ことばが出るとあとは普通に話していて調子の良い時や悪い時もありましたので、そのまま特に何をするでもなく過ごしていました。
ところが中学1年の夏休み頃からどもりが急にひどくなり、今までの繰り返しの状態ではなく「・・・・・」とつまりが10秒位長い間が続くような状態が続き、しまいには話すのをやめてしまうようになってしまったのです。何か質問をしても最初は本人も話そうとするのですが、ことばが全く出ないため、話す事を諦めるようになりました。家でもこんな状態なのだから外で友達と話す時や部活で学年の違う(どもる事を知らない)先輩などと話す時は辛い状況にあるであろうと心配していました。
そして夏休みが終わり、二学期に入ると朝起きてもとても暗い顔をして学校へ行く準備もなかなか進まず、暗い顔で家を出て行く日が続きました・・・。金曜日学校が終わり家へ帰ってきた時が一番ほっとして明るい表情になる時でした。学校がない土日が嬉しかったようです。
毎日大丈夫かなと心配していたある日、朝起きてもまったく学校に行く支度をせず部屋でとても暗い顔をして下を向いて座っていました。「学校、遅刻するから早くしなさい」と言ってもなかなか動かず、「学校に行きたくないの?」と質問すると「学校でみんなの前で話す発表があるから…」とやはり学校での発表が嫌で学校に行きたくないという限界がきたようで普段は全く泣く事などないのに突然わっと泣いて行きたくないと言いました。たしかにまったく言葉が出ない状態だったのでよほど辛かったと思います。
「じゃあ、今日は休もうか」と言った瞬間とても穏やかな表情に変わりました。学校の先生にも説明して休ませました。時には学校で具合が悪くなったと言って保健室で休んでいた事もあったようでした。一度休むと、それからまた何日かしてまた休みたいと言うようになりました。学校に行きたくないこともよくわかりましたが、このままではどうなってしまうんだろう、どうしたらよいのだろうと私は考える毎日でした。本人に「ことばが出るように練習や努力もしてみなよ!」などと言い、本人は泣きながら「そんなのやってるよ!」本人が一番どうしていいかわからない時にそんなひどいことばを言ってしまったことを後悔しました。
毎日悩んでいても何も変わらないと思い、市の保健センターに電話をして相談したところ息子の年齢が大きいため、市の相談所では対応できないとの事でいくつかの吃音の相談に合う病院を勧められました。早速いくつかの病院に電話をしてみたところ、ある小児精神科の予約をとることができました。すぐにでもみてもらいたかったのですが、その診察の予約は1ヶ月半後位でした。そんなに先の診察になってしまうのか…と思いながらインターネットでも調べてみたところ、伊藤伸二さんのページと出会いました。
そこで伊藤さんのプロフィールなどすべて読み、ホットラインまであることを知り、早速電話をしました。本当にご本人と電話で話せるとは思わなかったのでびっくりしました。息子の現状を相談すると、伊藤さんは息子の気持ちがよくわかると、そして私の悩みにアドバイスを下さいました。その後すぐに、『どもる君へ いま伝えたいこと』『親、教師、言語聴覚士が使える 吃音ワークブック』『両親指導の手引書41 吃音とともに豊かに生きる』の3冊を購入しました。
そして本が届いてすぐにはじめは私が声に出して読んで聞かせました。ただただ黙ってずっと聞いてくれていました。読み終えると、「苦しんでいるのは遼(息子の名前)だけではないんだよ。伊藤さんのように吃音に苦しみ、でも今では考え方も変わりとても立派な人になっているんだよ」と伝えてから数日後、あれだけことばがでなかったはずなのにどもりもせずに話せるようになったのです。本当に心の中で驚きました。
息子の気持ちの中で伊藤さんの本を読んで、また、自分だけではないんだと知って心が軽くなったのでしょうか? 信じられないほど普通に話せているのです。そんな時に相談していた学校の担任の先生からも「遼君、最近表情も明るくなり学校で普通に話せていますよ」と電話がありました。私も担任の先生に伊藤さんにめぐりあえたことを説明し、「遼の中で良い方向へ気持ちの変化があったのかもしれません」と伝えました。
そしてすごいタイミングで先日の吃音相談会の案内の連絡がありました。私は伊藤さんとお電話で話し、本を読んでからご本人と直接会ってみたいと思っていましたが、お住まいは関西とのことだったですし、私は関東なので先生に実際に会えるこんなチャンスはないと思い、参加させていただきました。
ああいう会に参加するのは初めてだったので緊張しましたが、今まで同じような事で苦しんでいる人とは出会った事がなく、私と同じように考えている他の親御さんたちのお話も聞けて、まったく同じことで悩み、同じように大切な自分の子どものことを思い悩んでいる人に直接会えたことで、悩んでいたのは自分だけではないんだと今まであまり相談もできずにいた重たい気持ちが、説明会が終わり帰る時には軽くなった感じでした。
相談会の数日後、冬休みに入る前の中学校の先生との保護者面談がありました。
そこで担任の先生から「遼君があれほど話せるようになり、変わったのには正直びっくりしました」と言われ、「お母さんが出会ったという人の事を教えて下さい」と言われましたので、私はもし他でも同じように悩み苦しんでる人がいたら学校の先生なら伝えてくれるかもしれないと思い、伊藤伸二さんの名前を伝えました。
担任の先生は「私もあとで調べてみます」とおっしゃってました。
息子がどもりがよくなったのは同じ経験をし、それとずっと向き合ってきた伊藤さんのことばが心に響いたんだと思います。吃音に苦しんでいない人からこうしてみたら? などと、息子からしたら僕の苦しみなんてわかるわけないのに!! と思っていたに違いありません。
伊藤伸二さんに出会えたことにとても感謝しています。
そして、今では普通に話している息子が学校も休まず前のように暗い顔をしていないのが本当に親として幸せです。今後もこのような会がありましたらぜひ参加させていただきたく思います。
2016年1月26日
木村春子
日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2021/5/30