重光さんがいい聞き手で、いい質問をして下さるので、僕は刺激を受け、自由に気持ち良く話しているのが分かります。「ぺらぺらぺらぺら喋る人間がええとは限らないじゃないか」という僕のことばに、「ぐさっ」とユーモアで反応しながら「そうですね」と返して下さる重光さん、人間味あふれるすてきな方でした。
 番組の途中で、熊本の人から吃音についての質問の電話が入るなど、リスナーがいるラジオ番組ならではの臨場感ある様子を紹介します。

  
ラジオ天国! 重光萬石です

重光 伊藤さんの文の中で、吃音矯正所に行った時にそこで初めてどもりのことを皆でフランクに話せたと、そのことが伊藤さんにとってものすごく大きかったんだなということは分かるんですけど、まず逃げない、隠さないということだったんですね。
伊藤 それが大事でしょうが、まず初めは、辛いこと、人に話したくない悩みを自分のことばで話すことでしょうね。僕はこんなことが辛い。こんなことが苦しかったんだよということを話し、聞いてもらった。それが出発ですね。僕は、どもりの悩みを母親にも話せなかった、友だちや教師にも話せなかった、誰にも話せなかった。ずっと自分だけが悩んでいると思っていたのが、仲間と出会って話をした。聞いてもらえた、この安心感、喜びは、何物にも変えがたいものでしたね。
重光 なるほど。そういった安心感とか喜びとか、そういったものがあったことがさらに伊藤さんがさっきおっしゃったみたいに、どもる人の会を作ってまた積極的にやろうという土台になれたんでしょうね。
伊藤 全くそのとおりです。
重光 なるほど。
 ここで熊本県の山下さんからお電話で質問が寄せられてます。山下さんは小学校2年生のとき、本を読むのがすごく嫌だったそうなんです。現在もどもる傾向があり、カキクケコ、パピプ、タチツテトということばが言いにくいそうで、今でもちょっと不安でたとえば自己紹介とか女性と話をする時と、電話の時にすごく不安である。家の人はそんなことないよと言ってくれるんですけども、これは治るものなのでしょうかということですが。
伊藤 全く打つ手はないですね。
重光 えっ、打つ手はない、そんな、なんか突き放されたら山下さんの立つ瀬がないと思うんですけど。
伊藤 いやいや、特定の音が出ないのを出るようになれば、どもりの問題の100%が解消されたことなんですよ。どもりが治ったということになる。今世界的にもこうすれば今まで言えなかった音が出るようになるという方法がない。誰にもそれは教えられない。だから、自分自身が恥をかきながら話していくうちに、最近ちょっとましになったなあという程度です。僕の場合、未だに寿司屋で「ととととろ」となりますよ。僕は、仕事柄、人前で喋ることには慣れてますよね。ところが、「とと・・・」これを「とろ」とすっと言えるようになるには僕自身が出来ませんもの。
 だから、あきらめていますよ。寿司屋で「とろ」が本当に食べたかったら、一緒に行った人間に「ちょっと、とととろを注文してくれ」と頼めることが平気になると、たとえ「と」が言えなくても構わないとも思える。でも、電話の場合、無言の状態だったら切られるので、少なくとも「とととと」と受話器の向こうではどもっている人間がいるんだよと言う、そういうメッセージを出すためには、「とととととと」と言っていますが。
重光 でも、山下さんもこうしてよくお電話下さるんですから、電話もできるし、何よりも家の人がそんなことがないという。さっきのどもりが成立する3つの条件の中で、家の人がどもりだと思ってない程度なら、後は、ご本人が自分はそうじゃないと思ったらいいわけですね。
伊藤 そうなりますね。でも、「どもりじゃない」なんてことは、おそらく思えないから、「どもっていても大丈夫」だと思う方が大事なんですよね。
重光 あっ、なるほど。そうであっても大丈夫。ちょっとくらいつっかえたからどうだと。
伊藤 そうそう、ぺらぺらぺらぺら喋る人間がええとは限らんじゃないかと。
重光 ぐさっ。そうですよね。
伊藤 つっかえつっかえでも、誠実に丁寧に喋る人の方がすてきだなあと思う人もいるし。
重光 それはそうですよね。なるほど。(つづく)

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2021/4/22