僕は、セルフヘルプグループを支援するための大阪セルフヘルプ支援センターの設立総会から参加しています。社会に「セルフヘルプグループ」の活動の意義をどう紹介するか、いつも議論をしていました。名前についても、「本人の会」「自助グループ」などが出されましたが、しっくりこないので、「セルフヘルプグループ」をそのまま使うことにしました。そして、大阪セルフヘルプ支援センターの仲間と一緒に、朝日新聞厚生文化事業団発行の朝日福祉ガイドブック「セルフヘルプグループ」を編集しました。また、解放出版社の「知っていますか?」シリーズの「知っていますか? セルフヘルプ・グループ一問一答」を当時、武庫川女子大学の教員だった中田智恵海さんと共著で出版しました。
 社会学や福祉関係の専門家によるセルフヘルプグループ関連の本はありますが、当事者が編集した書籍はほとんどないと思います。2冊の本に関われたのは、長年セルフヘルプグループにかかわってきたおかげです。セルフヘルプの道をずっと歩いてきたことになります。セルフヘルプグループの限界と問題点を冷静にみつめ、そこからの確かな歩みを続けていこうと思っています。
 今日は、1989年7月26日に書いた文章を紹介します。
セルフヘルプグループ一問一答表紙ガイドブック セルフヘルプグループ表紙
 参考
 愧里辰討い泙垢? セルフヘルプグループ一問一答』解放出版社 
◆悒札襯侫悒襯廖拌膾絅札襯侫悒襯彁抉腑札鵐拭縞圈…日新聞大阪厚生文化事業団。
△虜子については、日本吃音臨床研究会のホームページの「セルフヘルプグループ」の欄で、全文を紹介しています。









   
セルフヘルプ
                             伊藤伸二

 セルフヘルプという用語の使用は、日本ではまだ一般的ではない。明確な定義もまだなされていないといってよい。私たちがセルフヘルプという用語を使い始めたのも最近のことである。『セルフ・ヘルプ・カウンセリング』の本の中で、村山正治はセルフヘルプを次のように定義している。

 『人間は、様々な困難に出会い、苦悩するが、それを専門家の援助を受けることなく、自分の責任で、自らの手で、あるいは非専門家のサポートを受けながら、それを解決する。この過程をセルフヘルプと呼ぶことにしたい』
 村山正治編『セルフ・ヘルプ・カウンセリング』福村出版社

 セルフヘルプグループは、第二次世界大戦後、アメリカで急速に発生し、発展していった。最初、障害児をもつ親のグループが、そして障害をもつ本人のグループが、次々と結成された。レヴィ(Levy L.H.1976)は、次の5つの条件を満たしているものをセルフヘルプグループとしている。

・目的:相互援助を通して、メンバーの問題を改善し、より良い生き方を求める。
・起源と発足:起源と発足が、グループメンバー自身にあり、外部の専門家や専門機関によるものではない。
・援助の源泉:メンバーの体験、知識、技術、努力、関心が援助の主要な源泉であり、専門家がグループの集会に参加しても、それは補助的な役割しか果たさない。
・メンバー構成:抱えている問題を共通に体験している人たちで構成される。
・統制:組織の構造や活動のスタイルなどを規定するのは、グループのメンバーが中心となっている。
    A.ガートナー/F.リースマン著 久保紘章訳
    『セルフ・ヘルプ・グループの理論と実際』 川島書店

 私たちのグループは、これら5つの条件を全て満たし、成人のどもる人がより良く生きる生き方を確立するのに役立ってきた。しかし、セルフヘルプグループにも当然限界と問題点はある。今夏、西ドイツで開かれる第二回吃音問題研究国際大会では、セルフヘルプがテーマとなり、そのメインプログラムとして「セルフヘルプグループに未来はあるか?」のパネルディスカッションが計画されている。主催者は主旨を次のように述べている。
 「セルフヘルプの意味とその将来に関して、様々な立場があり、それぞれに強調点も異なっている。ある立場は、セルフヘルプとは専門的治療の代わりをするものでもなく、自立性をもつものとして考えている。別の立場は、専門家とセルフヘルプグループとの協力・連携を強調している。セルフヘルプの理論と実践においては、セルフヘルプグループの自主性と専門家との協力関係の問題が常に伴うのである。セルフヘルプに関する異なる立場を通して議論したい」

 私たちは、第一回吃音問題研究国際大会でこう大会宣言をした。
 「吃音問題の解決を図ろうとするためには研究者、臨床家、吃音者がそれぞれの立場を尊重し、互いに情報交換することが不可欠である。互いの研究、臨床体験に耳を傾けながらも相互批判を繰り返すという共同の歩みが実現してこそ、真の吃音問題解決に迫るものと思われる」
 私は、西ドイツで開かれる第二回世界大会でのパネルディスカッションの5人のパネラーのひとりに選ばれている。パネラーとして、第一回世界大会を開いた経過と、世界大会宣言の趣旨をもとに、国際的なレベルで連携が実現していく方向を提案する予定だ。吃音治療という限られた分野だけでなく、更に幅広い専門家との協力、連携なしに、多くのセルフヘルプグループの未来はないと考えているからである。1989.7.26


日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2020/12/21