番外編 #サマキャン2020

 吃音親子サマーキャンプの1回から4回まで、紹介してきました。今日は、第5回の予定だったのですが、番外編のスペシャル版を紹介します。
 今年の第31回吃音親子サマーキャンプは、8月21〜23日、滋賀県・彦根市荒神山自然の家で開催予定で、僕たちにとっては、30年間続いている、毎年恒例の夏の大きなイベントでした。しかし、今年は、新型コロナウイルスの影響で中止になり、いつものイベントがなく、なんかぽっかり穴があいた、忘れ物をしたような、変な夏だなと、少し寂しい思いでいました。
 こう思っていたのは、僕たちだけではありませんでした。毎年、七夕のように一年に一度会うことを楽しみにしている参加者がたくさんいたのです。小学校1年生からずっと続けて参加している子もいます。今年、高校3年生で卒業式を迎える子もいました。参加者にとっても、吃音親子サマーキャンプは毎年恒例のイベントだったのです。集まれないのなら、と千葉県のお母さんが、サマーキャンプ関連のイベントを企画してくれました。こんなよびかけで始まりました。尚、サマキャンとは、吃音親子サマーキャンプのニックネームのようなものです。サマーキャンプが大好きだった女の子が命名してくれました。


今日は予定されていたサマキャンの初日にあたりますね。
そこで今日から3日間、約30名が参加するママたちのグループLINEではイベントを開催します。
題して
  #サマキャン2020
何か特別なことをするというわけではありません(笑)
13:30頃に「集合〜」と呼びかけます。「出会いの広場だよ〜」とか「お風呂の時間です」とか…、体に染みついたサマキャンのスケジュールをご案内するだけです。近況や思い出など何か「語り」があるとうれしいな、と思います。
2日目の夕ご飯には恒例のカレーも食べます。
これからの12か月間を乗り切れますように、グループラインの場が少しでも力となれますようにと親しいママ達を中心に企画しました。
私たちは「母」なので「吃音のことを考える3日間」にはできませんが、サマキャンの「ちょっと良かった何か」を思い出して明日へのエールになればと思っています。もう一度サマキャンに参加できる、と張り切っている卒母多しです。
ご相談することもなく恐縮ですが、「サマキャンの感想を送るアドレス」宛に皆で近況をお伝えしていきます。
#サマキャン2020スタートです。
しばしお付き合いを・・・。


 吃音親子サマーキャンプ参加者の親のセルフヘルプグループが、自然に作られていたのです。
 このメールをいただいた後、これまでの参加者から、「#サマキャン2020」の件名で、メールがどんどん入ってきました。それぞれ近況を知らせて下さいました。
カレー サマーキャンプの2日目の夕食は、いつも、外のクラフト棟で、みんなでカツカレーを食べていました。その光景が、僕は大好きでした。ひとつの大きな家族のようで、温かく、その大きな輪を見て、幸せな気持ちになっていました。TBSのドキュメンタリー番組「報道の魂」で、楽しそうに語らう映像が繰り返し映し出されていました。だから、よけいにこのシーンが印象的なのです。
 メールは、近況の他に、「今夜の夕食はカツカレーです」がたくさんあり、写真も添付されています。なんだかカツカレーのコンテストみたいです。おいしそうなカツカレーの写真、それを食べている子どもたちの写真、なんだかおかしくて、おもしろくて、だんだん心が熱くなってきました。最近の参加者だけではありません。輪は広がり、すでに卒業した親たちからもメールが届きました。こんに大きくなりましたと、成人式の写真を送ってくれる人もいました。
 3日間で、メールは、25通以上になりました。なんともうれしい3日間でした。
そのメールのごく一部を、今日と明日に分けて、ご紹介します。

〇最初に参加したサマーキャンプ(2年前)で、伊藤さんが、すごく優しそうに、嬉しそうに、保護者の人たちと、演劇のワークショップをやっていた姿に、ものすごく感動しました。大阪に行く機会がありましたら、大阪吃音教室にぜひ参加させてください。(東京・スタッフ)

〇無事中学生になりました!あっという間に背も抜かされました。環境の変化があったせいか毎日絶賛どもり中です(^^)元気にまたお会いできる日を楽しみにしています。(千葉・サマキャンではなく、ちばキャンプの参加者)

〇サマキャンが中止となり、とても残念で、少し淋しい夏を過ごしています。もしサマキャンがあったら、今頃は私の苦手な(ただし少し病みつきになる)表現活動の時間かな、などと想像しながらパソコンに向かっています。でも、サマキャンの仲間と心はつながっていると感じています。
さて、子どもは、地元の中学ではなく、隣の隣の町の中高一貫校に入学しました。地元中学を選べば、保育園から息子の吃音を受け入れてくれている子たちばかりですので本人にとっても、家族にとっても、楽な道だろうと思っていました。しかし、去年の秋、たまたま学校見学に行った際、「この学校のほうがいろいろな人と出会えて、自分を拡げることができる」と受験を決意し、それから1月まで猛勉強をし、合格することができました。集団面接も、どもりながら、しっかり受け答えできたようです。4月に入学式に出席したものの、その後休校、やがてオンライン授業となり、ZOOMでの自己紹介はどもりながら堂々とこなしました。6月から登校開始となりましたが、臆することなく新しい友達と会話し、授業でも発言しているようです。中学入学とともに全く新しい人間関係の中に飛び込むことになり、親のほうが心配していましたが、本人は非常に楽しく充実した中学校生活を送り始めています。
夏休み前には、とてもよい通知表を持ち帰ってきました。成績もよかったのですが、担任の先生が書いてくださった所見が嬉しかったです。そのまま転記します。
 「いつも明るく、友達と話している様子が印象的です。通学生・寮生問わず、仲良くすることができました。正義感が強く、友達のために行動する場面が多く見られました。また、掃除など与えられた仕事はきっちり行ってくれました。学習面では、素点合計の学年順位が3位と、大変よく頑張りました。現状に満足せず、さらに高みを目指してください。今後にも期待しています」
 大阪の吃音相談会に夫婦で参加したとき、こんな中学校生活が送れるようになるとは夢にも想像できませんでした。不安でいっぱいだった私たちも、サマキャンへの参加を重ねるにつれ、不安がどんどん小さくなり吃音そのもので悩むことが少なくなりました。
伊藤さんやたくさんのスタッフの方々、どもる先輩や後輩、友達、お父さんお母さんにどれだけ感謝してもしきれません。素晴らしい出会いをいただいたことに、深く感謝しています。(岐阜)

〇最初は吃音を否定していた娘が今自分らしく希望を持って生きているのはサマキャンで沢山の当事者の仲間に出逢うことが出来たおかげです。また、サマキャン(吃音)は、夫にも希望を持たせて頂き、ありがたく思っております。私も沢山の当事者の親子さんに出逢えて心強く思っています。表現活動の時間と野外で食べるカレーの時間は特に楽しい時間でした!
親の勉強会の時には弟のお世話をしてくださいました。おかげで親の学習会に集中する事が出来ました。本人だけでなく、兄妹までサマキャンのお世話になりありがとうございました。コロナが落ち着き、来年またサマキャンが開催される事を願うばかりです。(大阪)
〇我が家は皆元気ですが、毎年恒例のサマキャンがないことに物足りなさを感じている夏です。
卒業の年のサマキャンがなくなってしまったのは残念ですが、来年は無事に開催できることを祈るばかりです。実は、奈良市にお住いの親子が、お子さんが小学校1年生になったらサマキャンに参加すると仰ってて、それが今年でした。うちの息子は高校3年で卒業なので、1度だけど一緒に参加できることを楽しみにしていました。奈良から滋賀は近いのに、伊藤先生の活動の拠点大阪もすぐそこなのに、奈良からの参加者がうち以外にいないのがずっと残念でしたので、今年はもう一つ楽しみがあったのです。その親子が来年は参加できることを願っています。息子の大学受験はもう始まっています。良い報告ができるといいのですが…
今夜はカツカレーですよ!(奈良)

〇今年は、サマキャンスタッフデビューを考えていたようですが、残念です。大学生となりましたが、コロナウィルスの影響で入学式も中止となり、また前後期ともにオンライン授業となり一度もキャンパス行けずに一年過ごすことになりそうです。アルバイトを始めたところ、たまたまその店に吃音の大学生がいたそうで、サマキャン以外で出会った初めての吃音の方と、“吃音あるある”で盛り上がったそうです^_^
また、サークルでは、よさこいサークルに入り、よさこいを練習中です。
昨日の我が家の夕食は、サマキャンでの皆で食べる大好きなあの空間を思い出しながらカツカレーにしました! エビフライものせちゃいました(^ ^) (愛知)

〇3年前に卒業しましたが、卒業してからも、サマキャンの仲間達とはずっと繋がる事ができ、今回このような形でメールさせて頂く機会を持ててとても嬉しく思っております。
息子が中学1年の時に初参加させて頂き、それから6年間サマキャンに参加させて頂きました。私にとってかけがえのない貴重な時間でした。本当にありがとうございました。スタッフの方々初め関わって頂いた方々に感謝の気持ちでいっぱいです。今年はコロナもありサマキャンが中止になってしまいとても残念です。初めて参加しようと決断された方もいただろうにと思います。来年は是非サマキャンが開催できますように心より願っています。
以下、息子からです!
お久しぶりです。3年前に卒業しました。あれから高校も卒業し、無事に大学へ入学することもでき、現在は3年生になり就活の準備を進めている真っ最中です。サマキャンに初めて行かせて頂いたのが2012年だったので今からちょうど8年前です。サマキャンで学び、培ったものはその8年前から3年前の卒業するまでの間、そしてそこから今日に至るまでの僕の人生の中にはかけがえのないものとして在り続けています。それはこの先もずっと変わりません。(和歌山)


日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2020/8/25