大阪吃音教室で話題になった、吃音の著名人

 吃音の著名人という講座は、僕のほかにも担当した人がいます。
 大阪スタタリングプロジェクトがまだ大阪言友会を名乗っていた頃、会長だった青名秀人さんは、本が大好きで古書店の経営者でもありました。2008年9月19日、青名さんが担当した大阪吃音教室の講座「吃音とともに生きた著名人に学ぶ」を、翌10月号の大阪スタタリングプロジェクトの機関紙「新生」から紹介します。

吃音の著名人をジャンル別に書き出す
 先ず参加者から、この人は吃音だと思う人、あるいは本人が吃音であると宣言している人を順に挙げてもらい、青名さんがジャンル別にその名前をボードに書いた。「ヘェー!あの人が?」「エッ、そうなんや!」「そうだと思っていた」、どもる人間の仲間として、いろんな反応があった。中には違う人もいるかもしれないが、ほぼ当たっていると思う。ボードを再現する。(敬称略)

*政治家:田中角栄、チャーチル
*芸能人:木の実ナナ、三遊亭圓歌、マリリンモンロー、田辺一鶴、マルタ、桂文福、やしきたかじん、ブルースウィリス、スキャットマン・ジョン、花菱アチャコ、桂小米朝、ジュリアロバーツ、ミスタービーン(ローワンアトキンソン)、市川笑也、谷啓、ダークダックスのゲタさん、ケミストリーの一人、稲川淳二、小倉智昭、秋野暢子、片岡仁左衛門
*作家:重松清、ルイスキャロル、イソップ、野坂昭如、真継伸彦、大江健三郎、サマーセットモーム、尾崎士郎、村田喜代子、小島信夫、藤沢周平、井上ひさし、金鶴泳、諏訪哲史、岩明均
*学者:姜尚中、ダーウィン、江崎玲於奈、ルソー、西部邁、ニュートン、デモステネス、
*芸術:山下清、羽仁進、篠田正浩、岩合光昭、土門拳
*財界:梁瀬次郎、坪内寿夫、間直之助、佐藤正忠
*スポーツ:宗茂、円谷幸吉、ボブラブ
*その他:中坊公平、平野レミ、扇谷正造、ジョージ6世、モーゼ、徳川家光、徳川秀忠

 ざっと64名、あらゆる分野で活躍している。この中で、吃音ショートコースのゲストとして来ていただいた桂文福、重松清、村田喜代子、羽仁進の4名、私たちと直接に交流があった人としては、田辺一鶴、スキャットマン・ジョン、田中角栄、三遊亭圓歌、マルタ、真継伸彦の6名を挙げることができる。

吃音とどう生きるか
 ボードに名前を書き出した後、日本の吃音の著名人を二つのグループに分かれて、これらの人が次のABCの三つのうちのどれに当てはまるか、又、自分としてはどういうふうに生きたいかを話し合った。

A 吃音と闘った人
B 吃音に影響を受けた人
C 自分の生き方を貫いた人

 あるグループでは、Aとしては田辺一鶴、三遊亭圓歌、小倉智昭らが、Bとしては間直之助が、Cとしては桂文福、木の実ナナらが挙げられた。又、金鶴泳や真継伸彦の作品に現われているように以前は吃音が暗い否定的なイメージだけで書かれていたが、重松清の作品あたりから吃音が肯定的に描かれる時代になったのでは、という意見が出た。そして自分としてはどのような生き方を目指したいかでは、やはりCの意見が目立った。

(大阪スタタリングプロジェクト機関紙「新生」 2008年10月号より)


 この日の講座は、この後、メディアに載っている吃音の著名人の語録を紹介しています。自伝、回顧録、小説などで、自分の吃音について語っていることばを紹介したものです。明日、紹介します。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2020/6/22