再び、読書介助犬
僕が、読書介助犬のことを初めて知ったのが、2016年1月でした。近所にある絵本カフェ「ハーゼ」で教えていただきました。同じく2016年10月に、読書介助犬をテーマに、僕はブログを書いています。
それ以後、いろいろな講演会で、僕は、参加者に「読書介助犬って、知ってますか?」と問いかけてきました。ほとんどの方が知らないと答えます。「どんなことをすると思いますか?」と尋ねると、考え込んで、「ページをめくってくれる」とか「いい本を運んできてくれる」とかの意見が出ます。それは、どこの講演会で聞いても同じことでした。「ページをめくってくれるなんて、あり得ないでしょう」と笑いながら言うと、答えた方も笑いながら、うなずきます。正解を話すと、皆さん、なるほどと納得してくれます。
そんな読書介助犬のことが、先日の毎日新聞(2020.2.24)に掲載されていました。
見出しは、「音読 犬に読み聞かせて克服」とあります。冒頭には、「犬に本を読み聞かせて苦手を克服−。福祉・教育の先進国である北欧フィンランドでは、吃音や恥ずかしさなどから音読が苦手な子をサポートする『読書介助犬』が各地の図書館で活躍している」と紹介されています。
また、毎日新聞の掲載当日の「とくダネ!」で、小倉智昭さんが取り上げていたと、仲間から連絡がありました。小さいころからどもっていた小倉さん、今もどもりますが、小さい頃は音読が苦手だったそうです。よく犬に向かって話しかけたり、本を読んだりしていたと、自分の体験と重ね合わせて、読書介助犬のことを話していたそうです。
僕が読書介助犬を教えていただき、その後読んだ本が『読書介助犬 オリビア』(講談社青い鳥文庫)でした。本が嫌いになった子どもへの援助で、吃音については出てこなかったように記憶しているのですが、フィンランドとアメリカの違いでしょうか。
日本での読書介助犬の広がりはまだまだのようです。吃音に限って言えば、どもって読んだことや初めの音が出ないとき、指摘されたり、叱責されたり、言い直しをさせられたりすることなく、ただ黙って聞いてくれると、安心して読むことができます。読書介助犬に頼らずとも、親や教師にもできることです。どもる子どもの周りのひとりひとりが、読書介助犬的かかわりができたらと願います。
次回は幼児吃音の取り組み、リッカムプグラムについても書こうと思います。
日本吃音臨床研究会会長 伊藤伸二 2020/03/08
2016年10月25日のブログを再掲します。
僕が、読書介助犬のことを初めて知ったのが、2016年1月でした。近所にある絵本カフェ「ハーゼ」で教えていただきました。同じく2016年10月に、読書介助犬をテーマに、僕はブログを書いています。
それ以後、いろいろな講演会で、僕は、参加者に「読書介助犬って、知ってますか?」と問いかけてきました。ほとんどの方が知らないと答えます。「どんなことをすると思いますか?」と尋ねると、考え込んで、「ページをめくってくれる」とか「いい本を運んできてくれる」とかの意見が出ます。それは、どこの講演会で聞いても同じことでした。「ページをめくってくれるなんて、あり得ないでしょう」と笑いながら言うと、答えた方も笑いながら、うなずきます。正解を話すと、皆さん、なるほどと納得してくれます。
そんな読書介助犬のことが、先日の毎日新聞(2020.2.24)に掲載されていました。
見出しは、「音読 犬に読み聞かせて克服」とあります。冒頭には、「犬に本を読み聞かせて苦手を克服−。福祉・教育の先進国である北欧フィンランドでは、吃音や恥ずかしさなどから音読が苦手な子をサポートする『読書介助犬』が各地の図書館で活躍している」と紹介されています。
また、毎日新聞の掲載当日の「とくダネ!」で、小倉智昭さんが取り上げていたと、仲間から連絡がありました。小さいころからどもっていた小倉さん、今もどもりますが、小さい頃は音読が苦手だったそうです。よく犬に向かって話しかけたり、本を読んだりしていたと、自分の体験と重ね合わせて、読書介助犬のことを話していたそうです。
僕が読書介助犬を教えていただき、その後読んだ本が『読書介助犬 オリビア』(講談社青い鳥文庫)でした。本が嫌いになった子どもへの援助で、吃音については出てこなかったように記憶しているのですが、フィンランドとアメリカの違いでしょうか。
日本での読書介助犬の広がりはまだまだのようです。吃音に限って言えば、どもって読んだことや初めの音が出ないとき、指摘されたり、叱責されたり、言い直しをさせられたりすることなく、ただ黙って聞いてくれると、安心して読むことができます。読書介助犬に頼らずとも、親や教師にもできることです。どもる子どもの周りのひとりひとりが、読書介助犬的かかわりができたらと願います。
次回は幼児吃音の取り組み、リッカムプグラムについても書こうと思います。
日本吃音臨床研究会会長 伊藤伸二 2020/03/08
2016年10月25日のブログを再掲します。
読書介助犬 どもる子どもは喜ぶだろう 音読が不安で、怖くて不登校になった僕
糖尿病の僕は、食後に、スロージョギングをしています。いつも通る道とは少し違う道を通ってみると、新しい発見があります。普通の家のように見えるけれど、「絵本カフェハーゼ」という看板がかかっていて、中に入ってみると、そこは看板どおり、カフェで、絵本がたくさんおいてありました。
コーヒーを注文して、店の主と話をすると、お連れ合いは、幼児教育専門の先生で、糖尿病だということなど、いくつかの共通点があり、話が弾みました。しかし、その後、いろいろと忙しく、通りかかった時が、店が休みの日だったりして、半年以上行けていなかったのですが、久しぶりに通りかかったので、入りました。
初めて行ったのが今年の1月で、それから9ヶ月も経っています。僕たちのことなどきっと覚えてはおられないと思っていたのに、覚えていて下さり、最初行ったときに会えなかったお連れ合いもおられ、研究している絵本の話や、幼児教育について、また話が弾みました。吃音について取り組みをしていると話すと、「読書介助犬」の話をして下さいました。
盲導犬、介助犬は知っていますが、読書介助犬とは初めて耳にしました。読むのがあまり得意でない子どもが本を読むのを、そばに寄り添いながら、じっと聞いている犬のことらしいです。その温かさや安心感から、子どもは、本を読むのが苦ではなくなったという実践があり、『読書介助犬オリビア』『犬に本を読んであげたことある?』(講談社)の本もあることを知りました。さっそくその本を取り寄せて読みました。おもしろい実践です。
音読には、いい思い出がまったくありません。言い換えのできない国語の本の朗読は、小学校から高校時代までずっと続きました。知らない漢字などひとつもないのに、順番に指名されていくときなど、自分の番が近づいてくると、ほかの人の朗読している声など全く聞こえなくなります。「次、伊藤」と指名されて、どこを読むのか分からなくなってしまい、叱られたことが時々ありました。
高校2年生の時、よく当てる教師がいました。古文の音読が当たる日は、学校を欠席し、ついには、しばらく不登校になりました。これ以上欠席を続けると進級できなくなるというとき、その教師に音読の免除を申し出て受け入れてもらい、やっと卒業できたくらいです。
読書介助犬の活動を知っておられるのは、ドッグセラピーのNPO法人を運営している田中理恵さんという人でした。僕の居住圏に住んでおられることを教えてもらったので、ファックスで、僕が吃音の取り組みをしていると書いて、是非お会いしたいとお願いしました。
そうして、先日、お会いすることができました、田中さんが連れてきてくれたのは、バカラとカレンという、やさしい目をした犬でした。やんちゃらしいバカラが尾を思い切り振って歓迎してくれました。田中さんは、今、高齢者の施設や障害者施設などで、ドッグセラピーをしておられますが、その中で、認知症や知的障害、発達障害など、生きづらさを抱えている人や子どもの支援につながるのではないかと思ったそうです。効果はすぐには表れないけれど、多動の子どもが部屋から出なくなった、犬に触れられなかった子どもがさわれるようになり、一緒に寝そべることもできるようになった、いつも飛び跳ねていた子が飛び跳ねることが少なくなった、犬を見たらパニックになっていたのにそうならなくなった、など少しずつ変化をもたらしているなどの話をして下さいました。
読書介助犬については、アメリカの図書館で実践がすすめられていますが、日本ではあまりありません。この介助犬、どもる子どもに対して、何か役に立ちそうです。どもる僕たちは、どもっていても、どもることや、仮に間違っても指摘することなく、しっかりと聞いてくれれば、とても読みやすくなります。僕が音読が嫌だったのは、どもって読む僕を笑ったり、からかったり、指摘する子がいたからです。
どもりながら読む子どものそばに寄り添い、静かに耳を傾け、ゆっくりと聞いてくれたら、読むことに抵抗のある子どもも安心して読むことができます。好きな犬のからだのぬくもりを感じながら、読むことが苦手でなくなったり、本の好きな子に育てることができるのではないでしょうか。アメリカの図書館のように、読書介助犬がいなくても、この発想は、当然人間に使えます。親やことばの教室の担当者が、犬の代わりをするのです。
読み聞かせというと、親や先生など大人が読んで子どもに聞かせることが多いようですが、反対に、子どもが大人に向かって読むというのもあるだろうと思います。音読練習のために子どもに読ませるのとは全く違うものとして、ことばの教室でのメニューのひとつに挙げてもいいのではないかと思いました。親や教師も読むし、子どもも読む。読んでもらうときは、ただしっかりと聞く。
今、幼児吃音の臨床で、はやり始めた、どもると、言い直しをさせて、流暢性を形成するというリッカムプログラムとは、まったく違うものです。
読書介助犬(リーディング・エデュケーション・アシスタント・ドッグ)の発想を生かしたいものです。
日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2016/10/25