僕の失敗を生かしてほしい〜新しい価値観との出会い
秋のキャンプロードが始まっています。9月には、台風の影響があった直後の千葉で、第3回の吃音キャンプがありました。予定していた会場の自然の家が停電で使えなくなりましたが、急遽、会場を小学校の校舎に変えて行いました。柔軟な対応が印象的でした。
10月19日は、17回目の岡山吃音キャンプでした。スタッフとして#ことばの教室 の担当者が40人も参加し、総勢100名ほどの人たちが吃音について向き合うキャンプです。子どもたちは、話し合いや、レクレーションなどを通して、仲間の存在を確認できた集まりでした。
11月は、島根、沖縄、群馬とキャンプが続くのですが、その合間の、10月23日、大阪の豊中市の小学校のことばの教室の吃音教室に行ってきました。最寄り駅は、阪急の「岡町」駅。そのひとつ手前が「曽根」でした。「曽根」は、懐かしい地名です。
僕が、三重県津市から家出のようにして近鉄電車で大阪に出てきて、上本町六丁目駅で朝日新聞を買い、そこに出ていた結城さんの新聞配達店に電話をして雇ってもらいました。新聞配達店は、阪急宝塚線の曽根駅のすぐそばでした。1年間、新聞配達をしながら浪人生活をした懐かしい町です。
豊中のことばの教室の先生は、吃音親子サマーキャンプや新・吃音ショートコースにも参加したことがあります。豊中にある3つの小学校のことばの教室と、発達障害を中心にした通級指導教室の担当者も集まり、全市内に呼びかけたそうです。ことばの教室に通っていない、その日が初めてだという親子連れがたくさん参加しました。ぜひ、僕と出会わせたいという担当者の強い願いのもと、実現した集まりでした。90分という短い時間、しかもこういう集まりは初めてだという子どもや親が多かったのですが、子どもと親を分けて別のプログラムを組むことができなかったので、親も子どもも一緒に輪をつくり、全員の前で話しました。小学生1年生が多かったのですが、静かに難しい話をよく聞いてくれたなあと思います。僕自身の吃音に悩んでいた時の、吃音を隠し、話すことから逃げていた失敗体験と、その後に吃音に向き合ってからの話をしました。
「僕の失敗を生かして欲しい」が話の中心です。それに基づいて、親や教師が子どもと接するとき大切にしたいことを話しました。
からかわれたときが嫌だ。どうしたらいいか。
子どもたちから前もって出されていた質問です。よく出る質問です。僕は、具体的に何を言われるのかを子どもたちに聞くと、「真似してくる」とか「笑う」とか、「アイウエオと言ってみろと言われる」などと言います。この日も「真似される」でしたが、どのような場面で、どのように真似されたり、どのようなことばでからかわれるのか、僕は質問します。明確には言えない子どもには、これからは、よく相手を観察しようと言います。からかってくる相手の顔、表情、ことば、様子、態度など、よく観察することです。どもっていることがよく分からないから、言うのなら、どもることの説明をすればいいでしょう。悪質なものなら、周りの大人に助けを借りてストップしなければなりません。なぜそんなことを言われないといけないのか、逆に説明を求めてもいいでしょう。方法はいくつもあるということを伝えました。「観察しよう」と提案するだけで、からかいに対処できるようになった子どもは少なくありません。
このように、事実を把握し、そのことをよく考える力は、これからストレスのますます大きくなる現代社会を生き抜く力になります。自分の人生を自分の力で切り開いていくためにも考える力は大切です。子どもの頃から、考える力を育てることが、ことばの教室でできる最大のことだと、僕は思っています。
終わった翌日、その場で書いた感想を送って下さいました。その一部を紹介します。対話形式ではなく、一方的に、それも初めて聞いた話なのに、このような感想を、すぐに書いた子どもたちの力を感じました。平仮名は読みやすいように漢字に変えました。
1年生から6年生まで12人くらいいたでしょうか。自分以外のどもる子に会ったのも初めてという子もたくさんいました。難しい話をよく聞いてくれたと思います。保護者の感想は、次回に。
日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2019/10/28
秋のキャンプロードが始まっています。9月には、台風の影響があった直後の千葉で、第3回の吃音キャンプがありました。予定していた会場の自然の家が停電で使えなくなりましたが、急遽、会場を小学校の校舎に変えて行いました。柔軟な対応が印象的でした。
10月19日は、17回目の岡山吃音キャンプでした。スタッフとして#ことばの教室 の担当者が40人も参加し、総勢100名ほどの人たちが吃音について向き合うキャンプです。子どもたちは、話し合いや、レクレーションなどを通して、仲間の存在を確認できた集まりでした。
11月は、島根、沖縄、群馬とキャンプが続くのですが、その合間の、10月23日、大阪の豊中市の小学校のことばの教室の吃音教室に行ってきました。最寄り駅は、阪急の「岡町」駅。そのひとつ手前が「曽根」でした。「曽根」は、懐かしい地名です。
僕が、三重県津市から家出のようにして近鉄電車で大阪に出てきて、上本町六丁目駅で朝日新聞を買い、そこに出ていた結城さんの新聞配達店に電話をして雇ってもらいました。新聞配達店は、阪急宝塚線の曽根駅のすぐそばでした。1年間、新聞配達をしながら浪人生活をした懐かしい町です。

「僕の失敗を生かして欲しい」が話の中心です。それに基づいて、親や教師が子どもと接するとき大切にしたいことを話しました。
からかわれたときが嫌だ。どうしたらいいか。

このように、事実を把握し、そのことをよく考える力は、これからストレスのますます大きくなる現代社会を生き抜く力になります。自分の人生を自分の力で切り開いていくためにも考える力は大切です。子どもの頃から、考える力を育てることが、ことばの教室でできる最大のことだと、僕は思っています。
終わった翌日、その場で書いた感想を送って下さいました。その一部を紹介します。対話形式ではなく、一方的に、それも初めて聞いた話なのに、このような感想を、すぐに書いた子どもたちの力を感じました。平仮名は読みやすいように漢字に変えました。
・学べていなかったことを学べた。伊藤さんが言ったことをしていきたいなと思いました。1年生なのであんまり分からないこともあったけれど、このことをしていけば、生きられると思いました。いろいろと教えてくれてありがとうございました。(小1)
・私は、伊藤さんが最後に言った「吃音は変わっていく」ということばが心にひびきました。(小4)
・自分もたくさん考えていたけれど、伊藤さんの話を聞いて、考えることも、自分の考えも変わりました。話は少し難しかったけれど、分かりやいところもあり、僕も考えやすかったので、これからは、いろいろな人と会話などをたくさんしていこうと思います。今も、ぼくは、学校では、友だちとたくさん話をしているけれど、もっといろいろな人と会話をして、そこからたくさんのことを学び、大人になったときに役立てたいです。つらくなっても、あきらめず、自分がどもる理由を理解して、たくさんの人との関係を大事にしていきたいです。(小5)
・吃音は治らないけれど、どもったりどもらなかったりするということがわかった。思春期に、どもりかたが違ったりすることもわかった。前まで、ぼくのどもりを知らなくて笑っていた友だちも、今はぼくのどもりを知っているから笑ったりしなくなったので、よかった。(小5)
・吃音の人がしゃべっているのを聞いて、聞く側の観点がわかったから、なんかほっとした。自分では、人がどもりながら話すことはおかしいとは思わない。(小5)
・伊藤さんの話を聞いて、考えることが大切と聞いたので、これからは今まで以上に考えることを大切にしようと思いました。(小6)
1年生から6年生まで12人くらいいたでしょうか。自分以外のどもる子に会ったのも初めてという子もたくさんいました。難しい話をよく聞いてくれたと思います。保護者の感想は、次回に。
日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2019/10/28