大阪吃音教室 吃音Q&A

4.12  吃音Q&A 1 4月12日の大阪吃音教室は、4回目の「どもりQ&A」の講座でした。約2時間で、8つの質問に答えましたが、その中の3つを紹介します。これらは、まだアップされていません。アップされる前に、メモを頼りに報告してくれたものを少し紹介します。



1.どもる人が、発表やプレゼンテーションの前にすることって何かありますか。

 準備をして、効果があることと効果がないことがあります。どうしたら、聞いている人に伝わるだろうか、ということに関しては一生懸命準備した方がいいですが、どもらないようにしようという準備は不可能といえます。家の中と人前は違うのだから、家の中でひとりで練習したり準備したりしても、役に立ちません。じゃ、どうするかというと、なりゆきに任せるしかないのです。どもったときはどもったときのこと、しょうがないと思うしかありません。
 発表やプレゼンテーションの本番では、不自然ではない程度に、自分なりに、できるだけゆっくり目に話すことを心がけるといいと思います。そして、どもる覚悟を決めることです。どもったとき、うろたえないで、さわやかに、平気でどもりましょう。ゆっくり話すことは急にはできません。普段から少しゆっくり目に話すことを心がけたらいいろでしょう。それが効果のある準備だといえます。


2.どもる人は面接や受験に不利ですか。
 どもる人本人や関係者は、どもることは面接に不利だと思っているようですが、僕はそうは思いません。不利になるとしたら、どもりを悪いもの、劣ったものと否定的に考え、どもる自分を嫌いだと思っているからだと思います。採用する側からすると、どもることそのものより、どもることによって起こってくる、様々な影響の方が気にかかります。たとえば、電話をしないといけないのにどもるのが嫌で電話しない、報告が必要な時に、報告しない、などです。そのような影響があるのは困るし、それが予想できると、採用に二の足を踏むだろうと思います。困難を抱えていても、それにきちんと向き合い、対処している人なら、問題はありません。
 世界一のセールスマンは、立て板に水のようにすらすらしゃべる人ではなく、とつとつとしているけれど、商品に対する知識は豊富で、誠実な人だといいます。ただ、現実には、どもるという理由で採用しない会社もあるのは確かなので、そういう所は、初めから自分に合わなかったところだと思うしかありません。どもっていてもその人の人柄、能力で採用してくれるところは必ずあります。そうでなければどもる人は就職していないことになってしまいます。でも、現実にはどもる人のほとんどが、様々な仕事に就いています。


3.最近、よく100万人が悩んでいると聞きますが、本当ですか。
 長い間、吃音の発生率は、1%といわれていました。今は、発生率は5%で有病率が1%と言われています。そこから、100万人のどもる人がいて、その全員が悩んでいるとされているようですが、そもそも100万人という数字も正確かどうか、分かりません。仮にどもる人が100万人いたとしても、悩んでいるのが100万人とはとても思えません。そんなに多いのなら、セルフヘルプグループやことばの教室にもっとたくさんの人や子どもが訪れるでしょうし、私の電話相談の電話ももっとたくさんかかってくるでしょう。でも、そんなことはありません。研修会などで、身近にどもる人がいますかと尋ねると、多くの人が「いる」と言います。どんな人かと聞くと、「同僚、社長、上司、同僚の教員や校長、近所の人」などで、ほとんどが、どもりながら、ちゃんと生きていると言います。どもる人は100万人いたとしても、その全てが悩んでいるとは言えません。私の実感としては3割程度だと思います。7割くらいの人は、どもりながら、自分なりに折り合いをつけて生きていると思います。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2019/4/18