吃音者宣言雑感 その3

 これで最後です。
 また、吃音者宣言に、いろいろな方が感想を寄せて下さっています。それは、今後、ホームページで紹介していきます。日本吃音臨床研究会のホームページにも、ぜひお立ち寄り下さい。


 
吃音に悩み、いかに生きるかに悩む人々にとって、共に「どもり」を考え「生き方」を考える仲間は当然必要となる。できれば専門家ではなく、ただの友人の方がよい。なぜなら専門家が養成されるまで私たちは待つことができないからだ。今すぐに身近な友だちが必要なのである。「仲間と共にある言友会」の存在は、その意味でますます必要となる。
 しかし、このような声もある。
 「あなた方は、この社会をより良いものにしていくために努力するという『吃音者宣言』を出しましたね。それにしては、今のあなた方の活動は何ですか。相変わらず、どもりに終始しているじゃありませんか。社会にはこんな矛盾や差別や不幸がたくさんあります。どもりにとらわれず、それらを解決するためもっとがんばってもらわないと困りますね」
 又、「『吃音者宣言』が出され、言友会はたくましく生きることを宣言した。すると単なる仲間作りだけに終始しているような言友会は解散した方がいいですね」という声を、言友会の会員からも又外部の声としても聞いた。これらの声の通りにすると、各地域の言友会はほとんど解散しなければならなくなってしまうであろう。更にそれらの人に「『吃音者宣言=言友会解散宣言』ではなかったんですか。」とつけ加えられそうだ。
 「吃音者宣言」が出たからといって、言友会の活動がそんなに大きく変化するものではない。背のびをした活動は長続きするものではない。自分たちのできる範囲からでしか動けない。ボチボチと活動を続けるものの、目標は常に明確にしていきたい。
 「吃音者宣言」がでたからといってこれまでと全く異なった目で言友会が又吃音者が見られ、かえって圧力を受けるのではないかというのが当初の危惧であった。

 「吃音者宣言」が出たおかげで、又いろいろな人と出会い、語り合うことができた。見知らぬ吃音者から手紙や電話をいただき、又、直接お会いする機会もあった。今後の言友会のあり方、吃音者のあり方など、示唆に富むご意見もいただいた。
 その中で言友会は今一番困難な状況の中にいることを痛切に感じた。この状況をのり切るにはかなりの紆余曲折が予想される。時には「吃音者宣言」を出した言友会が、こんな状況なのかとおしかりをうける時もあるだろう。しかし、私たちは今、「吃音者宣言」山を登るべき山と定め、その登山口に立った。山の頂上で人が手を振っている。大きい荷物、小さい荷物をそれぞれに背負いながら、吃音者の一団が山を登り始めた。元気に歌を歌って。


そんなに急ぐと 山が逃げるよ
ゆっくり行こう ゆっくり行こう
あせらずに行こう あせらずに行こう

ロ笛吹いて、汗をぬぐえば
くすんだヒュッテの赤い屋根
見なれた道さ 道さ
急ぐこたないさ ないさ ♫

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2019/3/24