2018年1月12日 大阪吃音教室 どもりカルタを作ろう


 新年1回目の大阪吃音教室の講座は、今年で12回目となる「どもりカルタを作ろう」。12回目になるにもかかわらず、ネタが尽きることはなく、今年も、新作が出そろいました。毎年毎年違うネタが出てくることには驚きますが、それだけどもりのエピソードが多くあるということなのでしょう。大いに笑い、共感し、新しい発見があったどもりカルタを紹介します。

 参加者は、取材に来て下さった朝日新聞社の記者や初参加の人を含めて、25人。5人ずつ5グループができました。グループごとに、読み札を作り、絵札を描き、読み札をみんなで味わい、最後にグループ対抗でカルタとりをしました。

どもりカルタ 読み札

・あ 歩きながらの 電話は楽だ 固定電話は怖かった
・い 言いかえマスター ここにあり
・う 海の下 本音がたくさん 隠れてる
・え 「エーっと」つけずに しゃべりたい
・お 「お先に」を 言えずに今日も 残業だ
・か 神頼み 毎年拝む 「どもりよ 治れ」
・き 君の声 聞きたいけれど どどどばかり
・く 口ごもり 手足もバタバタ やっと出る
・け けふも また 声にならない 音(おん)が出る
・こ こう言えば 乗り切れるかな この言葉
・さ さんまとタモリ それからどもり みんな違って みんないい
・し 心配は どもることより 二次障害
・す すしやでは 言えないネタが 多すぎる
・せ せかされて 言った答えは わかりません
・そ その言葉 言いたいことより 言えること
・た ただいまと 言えず代わりに 足音立てる
・ち ちょっと待ってね 一呼吸おいたら しゃべれるかも
・つ 通じるかな 不安こらえて 口開く
・て 手をあげて 指されないこと 祈りつつ
・と とりあえず 「えっと」をつけて 切り抜ける
・な 泣きながら 言った言葉は どもらない
・に 日曜日 ぼくのどもりも 休んでよ
・ぬ 抜かされて 何度泣いたか 音読で
・ね 寝言でも どもっているのは プロポーズ
・の ノックして 出て来たとたんに どもり出す
・は 犯人を 知っていても 名前出ず!
・ひ 人に頼れば なんとかなるさ
・ふ 不思議だなあ あなたといると どもらない
・へ へっちゃらさ 意味がわかれば どもっても
・ほ ほら 大丈夫 どもろうよ
・ま 間をあけぬ 俺のしゃべりは マシンガン
・み 店えらび 決め手はいつも 食券制
・む 昔には どもれなかった 人前で
・め メールが 私の 口がわり
・も もう少し 自分の番まで カウントダウン
・や 役に立つ どもりで無口になったけど おかげで今は 聞き上手
・ゆ 友人に どもり打ち明け 親友に
・よ 「よっ」と反動つけて 声を吐き出す いつものあいさつ
・ら らっしゃっせー、りがとうござーす、つかれぇしたー
・り リラックス してる時ほど よくどもる
・る ルールルル リズムに乗って どもってOK!
・れ 連絡も メール使えば なんくるないさ
・ろ 老化をすれど どもりは進歩
・わ 笑いと歌は どもらない

 ホワイトボードに書いた44文字の読み札を読み上げていくたびに、うなずきや笑いや「なんや、それ」というつっこみが入ります。一番沸いたのは、「らっしゃーせー りがとうござーす つかれぇしたー」の読み札でした。あいさつには母音から始まることばが多いと、母音が苦手な人からよく相談を受けます。アナウンサーが話すように、一音一音すべてはっきりと発音する必要はない、最初の一音を抜かしても十分伝わると答えることがあるのですが、まさに、それを読み札に読み込んだ1枚です。今の流行?のコンビニ用語にも似ています。文字で見たら、何ということはないのですが、どうぞ、声に出して読み上げてみて下さい。この札のおもしろさが分かるでしょう。でも、どもらない人には、分からないかもしれませんね。

 気に入った、好きな、心に残った読み札の投票の結果は、次のとおりです。
1位  14票 らっしゃっせー りがとうござーす つかれぇしたー
2位  13票 日曜日 ぼくのどもりも 休んでよ

 初参加の方も朝日新聞の記者も、想像していた吃音教室と全然違うので、驚かれたようです。笑われた、からかわれた、真似をされた、そんな嫌な思い出をもつ人は少なくないのかもしれませんが、そうではない笑いがここにはあります。経験したことをユーモアで包んで再記述したとき、新しい経験として生まれ出てくる、そんな思いが改めてしました。

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二 2018/3/4