沖縄は真夏のようだった

 静岡、岡山、島根、群馬、沖縄と5週連続の吃音親子キャンプが終わりました。それは、どもる子どもと保護者、それを支えることばの教室の教師や言語聴覚士との対話の旅でした。
 今年で、静岡は15回、岡山は14回、群馬は8回、島根は18回目の開催となります。各地で吃音キャンプが続いていくのはなぜでしょう。中心的な担当者が変わっても、それを引き継ぐ人たちがいます。それは、子どもや保護者の変化や成長する姿を短時間に実感でき、その成長が次の年の参加で確認できるからではないでしょうか。キャンプに関わる者として、こんなうれしいことはありません。「また、来年も参加したい」との子どもや保護者の思いを受けて、来年もがんばろうと思うのだろうと思います。

 63名が参加した、第1回吃音親子キャンプinおきなわの最後のセッションでも、参加者が「ぜひ、継続して開催してほしい」と口々に発言していました。そんな思いに答えたくて、各地のキャンプは続いてきたのです。僕も、すべてのキャンプに毎年参加してきたのです。

 「吃音は治せない、治らない」からこそ、考え、取り組まなければならないことは多いです。吃音について学び、取り組み、そして、成長していく子どもたちの姿を見るのはうれしいし、子どもたちと「哲学的対話」ができるのが本当に楽しいのです。
 今年の吃音親子キャンプロードでも、たくさんの魅力的な子どもたちと出会いました。このブログで、子どもたちとの対話の一部ですが、紹介していこうと思います。

 その前に、終わったばかりの沖縄キャンプについて少し報告します。

 5週連続の吃音キャンプロードのしめくくりは、今年初めて開催の沖縄キャンプ。「沖縄でもキャンプができたらいいな」の素朴な思いが、たくさんの人の力で実現につながったものでした。
この沖縄でのキャンプを最初に考えたのは、言語聴覚士の専門学校の平良和さんとの出会いは、5年前の第1回吃音講習会でした。平良さんは、吃音講習会に参加して「これだ!!」と思ったそうです。それからの平良さんの動きは大きく、そして迅速でした。

 沖縄でのキャンプの大きな特徴は、キャンプの企画・運営を、言語聴覚士とことばの教室の担当者が共同で行っているというところです。ほかのキャンプは、ほとんどがことばの教室の担当者が主導で行われています。沖縄のスタッフの中で、滋賀県の吃音親子サマーキャンプに参加したことのある人は3人。みんな、手探りで準備をすすめてきたと言います。

 11月11日(金)、到着便が遅れたため、30分ほど遅れて伊丹から沖縄に向けて出発しました。偶然同じ便だった坂本さんと一緒に那覇空港に到着。迎えに来て下さった名護さんの車で、鹿児島からの溝上さんも含めて自然の家に向けて出発しました。
 キャンプ前日の夜には、吃音勉強会が予定されており、19時からの勉強会に参加したのは、23人でした。キャンプ中に、保護者やスタッフ向けの講演会が組み込まれているので、そこでの話とだぶらないよう、参加者から質問を出してもらい、それに答えるという形で進みました。遺伝するか、構音障害との関係、どもる症状も受け止め方も違う子どもに対する指導方法、吃音とチックの関係、吃音の自覚に乏しい子どもの指導、どもりカルタの実践、「治りますか?」と聞かれたときの答え方など、さまざまな質問が出され、僕は、自分の体験に基づいて話しました。

 シャワーしかない!?
 これが、沖縄の普通のようでした。沖縄も夜になると涼しくなり、湯船につかるという習慣をもつ僕にはシャワーのみでは風をひきそうで入れません。掛け布団はなく、毛布1枚。これはやばいかもと思いましたが、とにかく疲れていたので眠りました。朝起きてみると、ガーン!左あごの上、リンパ腺が腫れているようです。だんだん腫れてきて、熱っぽく、少しあせりました。
 キャンプ初日が始まりました。手作りの横断幕が、参加者を迎えます。中庭の芝生広場で、開会の集いが始まりました。スタッフは、OKK(おきなわ吃音研究会の頭文字をとった)のおそろいのTシャツを着ています。いよいよ、始まるという気持ちになってきました。蝉が鳴いています。沖縄キャンプは、蝉が鳴く中、真夏の熱気の中で始まりました。

日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2016/11/16