若い人の頑張る 大阪吃音教室
2016年度の大阪吃音教室快調にスタートしました。
マイケルの映画の試写会は、43名の参加で幕をあけましたが、その後も順調に盛況です。第二回は僕の「吃音基礎」でした。ただ単に吃音についての知識を伝えるのはおもしろくなくて、「吃音と向き合い、吃音と共に生きるために」何を知っていればいいか、欲しい知識について、グループで話し合い、それをもとに僕が解説したり、みんなで話し合ったりしました。僕が提唱する「吃音哲学」的な話になり、とても刺激的でした。それを仲間がまとめてくれますので、まとまり次第報告します。
今日は、第三回の「自分のどもりの課題を分析する」
すごいですね。大阪吃音教室に来てまだ2年ほどしかたたない、若い人が、この講座を担当しました。日本音声言語医学会の吃音検査法に対抗して、僕たちが作った吃音評価をもとに話し合う、年間の講座の中でも、前期と後期の2回する、大阪吃音教室の最重要な講座です。それを初めて講座を担当する若い人が、自ら名乗りをあげて担当する。とてもうれしいことです。この若い人を応援したい気持ちがみんなにもあったのか、大勢が参加して、もり立てていました。若い力を感じた教室でした。
「初めての担当なので、とても不安で、どきどきしています。まず、自分が初めて講座を担当して時、どうだったか、話していただけませんか」
この第一声からはじまったのには驚きましたが、新鮮でした。指名されたこと、自ら発言する人、それぞれが初めて担当したときのことを話しました。たくさんの資料を読んで、本も読んでしっかりとレジメを作った人、しかけをいろいろと考え、作った人。「そうか、みんなそれぞれにしっかりと準備して望んでいるのか」と、今はもう、出たとこ勝負でほとんど準備をしない僕にとっては、新鮮でした。
この出始めも見事でしたが、その後の展開、構成力もまた見事でした。教室に参加し始めてまだ日は浅いと言いながら、ほとんど皆出席のように毎週参加していることが、いきているのでしょう。
まず、大阪吃音教室の吃音教室の三つの柱を自分が説明せずに、参加者のベテランに指名して説明させるのも、新人らしからぬ展開でした。初めて担当すると、どうしても、自分で説明しなければならないと思うようなのですが、それをしない、余裕のスタートでした。
(1)吃音に関する基礎講座
(2)コミュニケーション能力を高める講座
(3)自分を知り、より良い人間関係を作るための講座
この後、「 自分のどもりの課題は何ですか?(これから取り組みたいこと、研究したいこと)
問いかけられた参加者、ひとりひとりが発言していきます。
・しっかりと考えてものを言う
・吃音で悩んでいることは今はないが、言葉が出なくて不便なことはある
・予期不安。無くなるにこしたことはない
・どもれない
・人前では話せるのに、娘の前で言葉が出ない。その時の娘の反応。リラックスした時にどもることについて
・今は悩んでいないため、特に課題はない
・今は吃音を認めて生きているので(吃音を)悩みとして処理しなくなっている
・どもりつつ人との会話を楽しみたい。でも恐怖心がまだある。恐怖心を小さくしてもっと人との会話を楽しみたい。
・吃音で困ってないけど、最近新しく入社した職場の人が、どもりが治ったという人。私にアドバイスをしてくる。私の話し方をモニターされる。
・自分の吃音の課題はなくなつたが、吃音の世界全体に対して、自分にどんな取り組みができるか。
・たくさんの人前ですぐに言葉が出ないんじゃないかという不安について
・吃音と自分、どうか関わっていくか
・「どもりでいいんだ」と踏み出す勇気。吃音は個性だと思っているのだが
・職場での電話。特に外線。予期不安が強くなり焦ってしまう。
・(吃音の悩みからは解放されたが)自分本位なところ。すぐにいっぱいいっぱいになるところ。
・予期不安
・電話の第一声が出るかどうか不安で恐い。電話対応がとにかく不安
・どもりで悩むことはなくなったが、どもり始めた頃の不安や恐れが今も残っている。消さないといけないものでもないし、これからも不安や恐れを持って生きていけばいいと思っている。
・どもりとの距離感について
・どもりで悩むことはほとんどなくなったが、悩んでいた頃からの課題だった「人間関係の課題」「非論理的思考や認知の歪み」「頭の中で繰り広げてしまう会話」「人にどう思われるか気にする」は依然としてある。マイルドにしていきたい。
・子どもの夢を壊さないこと。どもりで悩んできた僕がどもる子どもに何をしていけるか。子どもたちの未来のために僕たちの吃音の体験を、取り組みをどう伝えて行くか考えたい。
この報告は続きます。
日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2016/04/29