大阪吃音教室での上映会の感想の続きです・

【坂本】80パーセントが遺伝だという遺伝子のおじさんだけはいただけなかったですけども(笑)。マイケルが吃音を通して人と出会っていった話なのかなと思いました。
 ドライブした友達のことが思い出され、同じような仲間に出会い、キャンプに行ったり。「あなたの話し方、私は嫌じゃなかったわ」と言ってくれる連れ合いとも出会った。「ああ、僕の話し方を好いてくれている」「嫌でないと思ってくれている」そういう人と分かり合えたということで、「大阪のグループはつながりを大事にしている」という話ともつながっている。
 彼は吃音を通して、自分と人のつながり、出会いを確認した映画なんだなと思った。親ともそう。おじいさんとももう一回出会いたかったし、出会っている。亡くなった人とも対話をしている話かな、とも思いました。あとは彼のお母さんが「子どもの全体を見てあげるべき」だというのは、親がよく言っていることだと思うんですけど、お母さんの体験から培われた言葉で、お母さんも「全体を見てあなたを愛しているのよ」というメッセージが彼にも伝わったという話かなと思いました。

【村田】車や列車が出てくるシーンが多かった。そのシーンを通じて、考え方が熟成していく過程というのがすごく伝わってくる。どもりとしてのプライド、誇りを得ていく姿が感じられました。

【東野】一番最初、彼が自分の弟に、自分の吃音について聞いたんですよね。それまでは弟にも吃音のことを話をしたこともなかったし、母親とも話してこなかったし、対しても誰に対しても話さなかった。そういう言葉から始まって本人がどんどんと行動していくなかで変わっていきますよね、あれはすごいなと思いました。
今までは吃音ということを自分の中から出さなかったけど、それを人との関わりの中で外在化するというか、形にしていくというのがよくわかりましたね。その中で彼の発言がどんどんと変わっていったりするし、彼は自分の問題として吃音のことを知ろうとして、吃音とは何か彼は突き詰めて考えたかったんだなと、それがよく出ていましたね。

【佐藤】あの中の人で、「最初は吃音で吃音が自分の中の上位で、吃音を通して世界を見ていたけど、そのうちに(自分にとって大切な)他のことの順位が上がってきて、結果的に吃音(の順位)が下がってきた」という話が印象的でした。

【伊藤】映画を撮り始めて、そこから彼がどんどんと考え方が変わり、人と出会っていく、ひとりの成長の物語。所々で、車のシーンとか自転車のシーン、自然も入ってきて、上手に作ってあるなという感じがするね。

【川崎】井上さんが上映前に紹介してくれた相関図の真ん中の、マイケルの写真なんですけど、これは伊藤さんの話を聞いている時のマイケルの表情です。ものすごく真剣に一生懸命聞いているんですよね。僕は横で聞いていましたけど。あの時のマイケルの表情がすごく印象に残っている。

【伊藤】彼は新婚旅行で日本に来てくれてよかったよね。やっぱり日本に来たことも彼にとって大きなことだったのかもしれないね。もし日本に来なかったら、ストーリーとか語り口がちょっと違っているかもしれないね。

【川崎】大いに違っていたと思います。

【伊藤】そういう意味では、ひょっとしたら大阪の吃音教室に来て、影響を受けた可能性があるかもしれないですね。
【川崎】アメリカ人がこの映画を見た時に、大阪のシーンが一番人気があるらしいです。

 感想は次回で終わりです。大阪吃音教室のみんなが、予想外の映画に共感しつつも驚いていました。

日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2016/04/21