21年の吃音ショートコースの歴史に幕を下ろしました

 今回のショートコースに流れていたものは、これまでの20回の吃音ショートコースを振り返るということでした。参加者がそれぞれ記憶を辿り、講師のことば、学んだことのキーワード、出会った人のことば、その回のテーマで大切なことなど思い出しながら、ホワイトボードに書き並べていきました。

ショートコース1
 発言のたびに、ああ、そうだった、そんなこともあった、と、そのときどきの人の顔やエピソードが浮かんできました。参加したときの自分のからだや心理状態によって、受け止め方は様々です。あのことばに救われた、あの人のあの話が心に染みたというものもありました。たくさんのことを学び、たくさんのことを考え、たくさん話し合い、たくさん語り、たくさん聞き合った歴史がありました。そして、それらはすべて、私たちが、どもりながら自分らしく豊かに、幸せに生きていくときの、大きな助けに、大きな力になってくれました。吃音を生きるレジリエンスとして実を結んだといえましょう。

ショートコース3
 桃山学院大学教授、東洋大学教授を経て、現在、おおさか地域生活支援ネットワーク理事長、西宮市権利擁護センター運営委員長の、講師の北野さんは、ご自分の半生を赤裸々に語って下さいました。丁寧に自分の物語を振り返っていただいたことで、参加者もまた自分のこれまでの生き方と重ね合わせて聞くことができました。専門分野であるエンパワーメントのお話も、体験に基づき、具体的で、分かりやすいものでした。私たちは、一人の人間のもつレジリエンスの歴史を聞いたようでした。

 最終日、北野さんと僕との対談の最後に、僕は、このショートコースが生まれた背景と、今回でゲストを招いての吃音ショートコースは終了しようと思うとの話をしました。この吃音ショートコースという場を、新しい学びのできる場、人生を振り返る場、ほっとできる、居心地のいい場と言って下さり、大切に思っていて下さっていることは充分承知しながらの決断でした。20年間、皆さんからいただいた、たくさんの励ましは私たちへの身に余るご褒美でした。ありがとうございました。
ショートコース2

 改めて21年間を振り返ってみると、言語障害の分野にとどまらず、というか純粋に言語障害の分野のゲストは、第1回だけで、後は、本当に広いジャンルの第一人者から直接多くのことを学びました。そして、それらは、年報という冊子や、金子書房から書籍として出版することができ、私たちの大きな財産になっています。

 21年間の吃音ショートコースのテーマと講師を紹介します。
 また、年報の在庫も少しありますので、ご希望の方は、お申し込み下さい。送料を含めて、どれも1冊1000円です。郵便振替用紙での送金でも、代金分の切手を送っていただいても構いません。
☆印がついている年報は、在庫があります。その他のものは売り切れました。

日本吃音臨床研究会
    〒572−0850 寝屋川市打上高塚町1−2−1526
郵便振替用紙  口座番号  00970−1−314142
        加入者名  日本吃音臨床研究会

    これまでの吃音ショートコース  テーマとゲスト
 
 1回  障害の受容  内須川洸・筑波大学名誉教授
               梅田英彦・東京正生学院

 2回  からだ・ことば・こころ  竹内敏晴・演出家

 3回  自己表現−アサーションのすすめ−  平木典子・日本女子大学教授

 4回  表現とことば  谷川俊太郎・詩人
                内敏晴・演出家

 5回  吃音と論理療法  石隈利紀・筑波大学教授
                  村田喜代子・芥川賞作家 

 6回  吃音と人間関係  村瀬旻・慶応義塾大学教授
                  羽仁進・映画監督

 7回 実践的交流分析入門  杉田峰康・福岡県立大学名誉教授

☆8回 演劇に学ぶ自己表現  鴻上尚史・劇作家、演出家

☆9回  建設的な生き方  K・レイノルズ博士・文化人類学者                                               桂文福・落語家

☆10回 トランスパーソナル心理学  生きる意味を考える 
             諸富祥彦・明治大学教授

 11回 笑いの人間学  松元ヒロ・笑いの芸人
                 井上宏・日本笑い学会会長 

 12回 こころの自然治癒力
      認知療法・認知行動療法     大野裕・慶應大学教授
                           重松清・直木賞作家

☆13回 カール・ロジャーズの パーソンセンタード・アプローチ入門
                          村山正治・九州大学教授
     

☆14回 どもる子どもとどもる人のことばのレッスン  竹内敏晴・演出家

☆15回 アドラー心理学入門  岸見一郎

☆16回 サイコドラマ入門  増野肇・ルーテル学院大学大学院教授

 17回 当事者研究  向谷地生良・北海道医療大学教授、浦河べてるの家理事

☆18回 ゲシュタルトセラピー  倉戸ヨシヤ・福島学院大学教授

 19回 内観療法  三木善彦・大阪大学名誉教授

 20回 ナラティヴ・セラピー  国重浩一・ニュージーランドカウンセラー協会会員

 21回 エンパワーメント  北野誠一・おおさか地域生活支援ネットワーク理事長

 なお、3回、5回、12回、17回は、金子書房から書籍として出版されています。書店でも購入できますが、日本吃音臨床研究会にお申し込みいただければ、送料は当方負担で、他の資料も添えてお送りします。

第3回…話すことが苦手な人のアサーション〜どもる人とのワークショップの記録〜
       平木典子・伊藤伸二共著    1890円
第5回…やわらかに生きる〜論理療法と吃音に学ぶ
       石隈利紀・伊藤伸二共著    1890円
第12回…ストレスや苦手とつきあうための認知療法・認知行動療法〜吃音とのつきあいを通して〜
       大野裕・伊藤伸二共著     2100円
第17回…吃音の当事者研究〜どもる人たちが「べてるの家」と出会った〜
       向谷地生良・伊藤伸二共著   2100円

日本吃音臨床研究会 会長 伊藤伸二  2015/11/27