第26回吃音親子サマーキャンプ〜吃音と共に歩む人生の旅立ち〜

 親も子どもにとっても特別な卒業式

 吃音親子サマーキャンプに参加できるのは、高校3年生まで。高校3年の最後の夏、子どもたちはサマーキャンプを卒業していきます。
 初めて、サマーキャンプで卒業式をしたのは、2003年、第14回のキャンプ、長尾政毅君が高校3年生のときでした。キャンプが始まる前までは全く考えてもいなかったのですが、小学校4年生から続けて参加してきた長尾君は、サマキャンの申し子のような存在で、僕たちは、彼の成長を間近で見てきました。もうこれで最後だと思った2日目の夜、急に思い立って、最終日に卒業式をしようと思いました。

 青色の画用紙に手書きの文字で、贈ることばを書きました。芝居の上演が終わった後、それを読み上げ、みんなで卒業を祝いました。長尾君も泣き、僕も涙をこらえることができませんでした。これが吃音サマーキャンプの涙の卒業式のはじまりです。

 それから、毎年のように、高校3年生が参加していて、卒業式をしています。青色の画用紙ではなく、ちゃんとした賞状を用意しています。手書きの文字は変わっていませんが。

 高校3年生だから卒業式をするということではなく、最低3年はキャンプに参加していることが条件です。だから、サマーキャンプを知ったのが高校2年生で2回しか参加できなかった子には、卒業証書を渡すことができませんでした。高校3年生のときに参加していなかったため、5年も参加しながら、卒業証書をもらえなかった子もいます。スタッフの中には、サマキャン卒業生がたくさんいますが、「卒業証書をもらっていないサマキャン卒業生です」なんて自己紹介する人もいるくらいです。
卒業式1
卒業式2
卒業式3

 今年は、3人の卒業生がいました。卒業証書を読み、手渡し、本人から、そして一緒に来ている保護者から、あいさつをしてもらいました。サマーキャンプを振り返り、連れてきてくれた親に感謝のことばを言う子、来年はスタッフとして参加したいと決意を言う子、自分の成長を話す子など、ひとりひとりが自分のことばで語ります。140人の参加者の前で、どもりながら、泣きながら、気持ちにぴったりのことばを選びながら、話す姿は、小さい頃からを知っている僕たちにとっては、まぶしく、頼もしい存在です。一緒に参加している親も、自分にとってのサマーキャンプを振り返ります。夏の恒例の家族旅行になった親子もいました。挨拶のことばに代えて、応援団長になったように大声で、我が子へのエールを贈ったお父さんもいました。

卒業式4
卒業式5
卒業式6
 この卒業式、それなりに長い時間になりますが、小さい子どもたちも静かに真剣に聞いています。全体の雰囲気が小さい子どもたちへも影響しているのでしょう。そして、子どもたちの心の中には、何年か後の卒業式に臨む自分の姿も目に浮かんでいるようです。それは、保護者の方も同じようで、うちの子が卒業するまでサマキャンを続けて下さいねとよく言われます。

 健康に気をつけて、命の続く限り、続けていこうと、僕も決意を新たにする、吃音親子サマーキャンプの卒業式です。

卒業式7
 ブログで、今年のサマーキャンプを振り返ってきました。これで、一旦、サマーキャンプの報告を終わります。写真の中の弾けるような子どもや親、スタッフの笑顔が、このサマーキャンプの魅力を物語ってくれていると思います。
 また、来年、なつかしい顔、初めての顔、久しぶりの顔と、出会えますように。荒神山で、すてきな時間を一緒に過ごしましょう。

 明日から、1週間ほど、旅に出ます。ブログの更新ができませんが、また帰ってきてから、ぼちぼち続けていきたいと思っています。よろしくお願いします。

日本吃音臨床研究会 伊藤伸二  2015/10/6