第26回吃音親子サマーキャンプ 11
スタッフによる劇上演
吃音親子サマーキャンプは、劇上演のための事前レッスンから始まる、と僕たちはよく言います。今年も、サマーキャンプ本番の約1ヶ月前、7月25・26日に、25人のスタッフが全国から集まりました。以前は、からだとことばのレッスンの竹内敏晴さんが、サマーキャンプの芝居の台本・演出・構成をすべてして下さっていました。この合宿による事前レッスンで、僕たちは竹内さんから、からだとことばのレッスンと、サマーキャンプでする劇を演出・指導していただき、それを子どもたちの前で演じてみせて、その後、子どもたちと劇作りに取り組むのです。
竹内敏晴さんが亡くなられてからは、竹内さんの大阪でのレッスンに参加し、京都大学大学院生の時代から、吃音親子サマーキャンプにずっと参加して下さっていた、渡辺貴裕さん(東京学芸大学大学院准教授)が竹内さんの跡を継ぐ形で、スタッフに劇の指導をしてくれています。
今年の事前レッスンには、大阪近郊の者だけでなく、遠く千葉や神奈川からも参加しました。今年の芝居は、「雪わたり」。2009年、竹内さんが亡くなられた年の演目でした。癌だと分かったのがその年の6月。それから、劇の台本の執筆にとりかかって下さり、6月の末のサマーキャンプのための事前レッスンにも来て下さいました。病の中で、どもる子どもたちへの思いを持ち続けて下さった、まさに最後のレッスンでした。その後、僕の主宰する竹内敏晴大阪定例レッスンを7月に実施し、8月の終わりにサマーキャンプの報告をしました。そして、9月7日に亡くなられたのです。竹内さんの晩年に、深い関わりがもてたことは、僕の喜びでした。この「雪わたり」は、竹内さん最後のレッスンでもあり、掛け合いや歌がたくさん入る、僕たちにとって思い出深い芝居です。






どもる人たちが多いので、当然お芝居もどもりながら、誰が誰に向かって話しているセリフなのかを大切にして演じます。どもるため、せりふのある役割をしてこなかった成人のどもる人は、子どもに戻ったかのように楽しく演じます。声を出す喜び、演じることの楽しさを人一倍感じているのです。
サマーキャンプ1週間前に集まれる者だけが集まり、復習をしました。1ヶ月前の事前レッスンのことを思い出しながらの復習です。これがないと、本番を迎えることができません。
キャンプの当日、1日目のスタッフは大忙しです。芝居に出るスタッフが全員集まってリハーサルができるのは、1日目の夕食をはさむ小一時間だけ。立ち位置、動き、出入り、小道具など、確認しながらの最終練習です。今年も、なんとか、子どもたちに見せられる程度には仕上がりました。

話し合いの後、学習室に全員が集まってきます。子どもたちや親が見守る中、僕たちスタッフによる芝居が始まります。アドリブあり、セリフ忘れあり、でも、楽しさだけはちゃんと伝わったようです。子どもも、親も、真剣にみつめてくれるいいお客さんたちでした。

子どもたちは、芝居を見ながら、あの役をしてみようかな、あれはおもしろそうだなと、関心をもって見ていました。それは、芝居が終わって、明日から芝居の練習をするグループに集まって台本を渡したときの子どもたちの表情から分かります。どもるからといってせりふのある役を外された僕の苦い経験から、芝居には強い思い入れがあります。どもっていても、楽しく演じることができればいい、声を出す楽しさや喜びを感じてほしい、そんな願いを叶えてくれそうなスタッフによる芝居の上演でした。

日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2015/09/24
スタッフによる劇上演
吃音親子サマーキャンプは、劇上演のための事前レッスンから始まる、と僕たちはよく言います。今年も、サマーキャンプ本番の約1ヶ月前、7月25・26日に、25人のスタッフが全国から集まりました。以前は、からだとことばのレッスンの竹内敏晴さんが、サマーキャンプの芝居の台本・演出・構成をすべてして下さっていました。この合宿による事前レッスンで、僕たちは竹内さんから、からだとことばのレッスンと、サマーキャンプでする劇を演出・指導していただき、それを子どもたちの前で演じてみせて、その後、子どもたちと劇作りに取り組むのです。
竹内敏晴さんが亡くなられてからは、竹内さんの大阪でのレッスンに参加し、京都大学大学院生の時代から、吃音親子サマーキャンプにずっと参加して下さっていた、渡辺貴裕さん(東京学芸大学大学院准教授)が竹内さんの跡を継ぐ形で、スタッフに劇の指導をしてくれています。
今年の事前レッスンには、大阪近郊の者だけでなく、遠く千葉や神奈川からも参加しました。今年の芝居は、「雪わたり」。2009年、竹内さんが亡くなられた年の演目でした。癌だと分かったのがその年の6月。それから、劇の台本の執筆にとりかかって下さり、6月の末のサマーキャンプのための事前レッスンにも来て下さいました。病の中で、どもる子どもたちへの思いを持ち続けて下さった、まさに最後のレッスンでした。その後、僕の主宰する竹内敏晴大阪定例レッスンを7月に実施し、8月の終わりにサマーキャンプの報告をしました。そして、9月7日に亡くなられたのです。竹内さんの晩年に、深い関わりがもてたことは、僕の喜びでした。この「雪わたり」は、竹内さん最後のレッスンでもあり、掛け合いや歌がたくさん入る、僕たちにとって思い出深い芝居です。






どもる人たちが多いので、当然お芝居もどもりながら、誰が誰に向かって話しているセリフなのかを大切にして演じます。どもるため、せりふのある役割をしてこなかった成人のどもる人は、子どもに戻ったかのように楽しく演じます。声を出す喜び、演じることの楽しさを人一倍感じているのです。
サマーキャンプ1週間前に集まれる者だけが集まり、復習をしました。1ヶ月前の事前レッスンのことを思い出しながらの復習です。これがないと、本番を迎えることができません。
キャンプの当日、1日目のスタッフは大忙しです。芝居に出るスタッフが全員集まってリハーサルができるのは、1日目の夕食をはさむ小一時間だけ。立ち位置、動き、出入り、小道具など、確認しながらの最終練習です。今年も、なんとか、子どもたちに見せられる程度には仕上がりました。

話し合いの後、学習室に全員が集まってきます。子どもたちや親が見守る中、僕たちスタッフによる芝居が始まります。アドリブあり、セリフ忘れあり、でも、楽しさだけはちゃんと伝わったようです。子どもも、親も、真剣にみつめてくれるいいお客さんたちでした。

子どもたちは、芝居を見ながら、あの役をしてみようかな、あれはおもしろそうだなと、関心をもって見ていました。それは、芝居が終わって、明日から芝居の練習をするグループに集まって台本を渡したときの子どもたちの表情から分かります。どもるからといってせりふのある役を外された僕の苦い経験から、芝居には強い思い入れがあります。どもっていても、楽しく演じることができればいい、声を出す楽しさや喜びを感じてほしい、そんな願いを叶えてくれそうなスタッフによる芝居の上演でした。

日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2015/09/24