高校生の話し合い

 話し合い高校生


 今年の高校生は、当日の急なキャンセルがあって、8人でした。卒業を迎える高校3年生が3人。高校2年生が2人。高校1年生が3人という内訳です。参加歴は比較的長い子が多く、みんな、サマーキャンプには来るのが当たり前になっているということでした。普段の生活の中では、吃音について話すことがあまりないので、ここでは吃音に関することを話したいと思っていて、話し合いも、それぞれが話したいことを話していく感じで自然にスタートし、自然に深まっていきました。

 今年卒業する高校3年生の一人は、小学2年生から連続して11回参加しています。自分が将来どうありたいのか、未来像がなかなか描けなくて、みんなはどうなのか、将来なりたい仕事や将来の自分の姿を思い描くことができるのかと問いかけました。明確な将来像を持っている子もいれば、まだまだ漠然としている子もいて、それぞれが今の自分の思いを語っていきました。サマーキャンプに参加したことで将来の自分が明確になった一人を紹介します。彼も高校3年生です。

・中学2年生から、STを志望している。それは、このサマキャンに参加して、吃音のことを話し合ったり、ことばの教室の先生や言語聴覚士の人と出会ったことがきっかけだ。面接は怖いけれど、どもるどもらないということではなく、面接の内容で判断するから大丈夫と言われたので、少し安心している。自分が吃音なので、言いたいことが言えない人の気持ちが分かるということと、自分にしかないものを武器にできると思ったからだ。

 話し合いが進む中で、「吃音をなんとか治したい、改善したい」との話がほとんどでてきません。そこでスタッフから、「なぜみんなは吃音は治さなくていいと思えるの」との問いかけがされ、高校生たちはこう答えていました。

・どもりが完全に治った例はないから。
・どもりを治そうとすると自分が苦しむなど振り回されるから、それならつきあっていく方がいいから。
・もうずっとどもっているのだから。
・治すことにエネルギーを使うよりも、どう対処していくか、どうつきあっていくかを考えることにエネルギーを使いたいから。

 将来の姿が見えないと話を出した一人が、言語聴覚士志望にしようかなと、2日目の朝、言い出しました。同じ高校3年生の話が刺激になったようです。

 2回目の話し合いは、初めての試みですが、高校3年生が主導していきました。これまでは、ファシリテーターとして入っていたスタッフが口火を切り、進めてきた話し合いを自分たちで司会・進行していきました。これは、いつでもできることではありません。長くキャンプに参加し、話し合いを重ねてきて、多方面から吃音について考えることができるようになってきた高校3年生だから、任せたのです。もちろん、スタッフはそのまま一参加者として話し合いに参加しました。部活での自己紹介、先輩や後輩とのつきあい方など、身近な部活での話が続きました。みんなに共通している話題なので、具体的に、いろいろな体験談が出て、参考になったようでした。近い将来の大学生になってからのバイトの話も出ました。
 この試みは、おおむね好評でした。司会・進行にあたった高校3年生の3人は、難しさも感じながら、しっかり話を聞き、みんなの意見を引きだそうとしました。参加していた他の高校生にとっては、3年生の3人はとても頼もしくうつったようです。メンターとしての役割をきっちり果たしてくれました。

   日本吃音臨床研究会  伊藤伸二  2015/09/22