小学校5・6年生の話し合い  子どもたちの持つ力はすごい

話し合い5・6年

  話し合い 小5・6年生

 複数回、サマーキャンプに参加したことのある子どもと初参加の子どもがちょうどいいバランスで混じり合った5・6年生グループ。担当した千葉市立院内小学校ことばの教室の渡邉美穂さんは、話し合いの印象をこんなふうに書いています。
 
 私の担当した5・6年グループでは「ぼくたちは、5年も参加したベテランだから何でも質問して」と初参加者の子に話していました。決して偉そうに言ったわけではなく、自分たちの話ではなく、まずあなたの話したいことを聞いて一緒に考えようとしていたのです。
 初参加の子が「どうしてそんなしゃべり方なの?」ってきかれて困ったと言うと「じゃあ、どんなことを言い返せばいいか一人ずつやってみよう」と率先して取り組みました。そのベテランの子たちは、自分たちがしてもらったことを思い出しながら取り組んでくれたんですね。レジリエンスでいう、メンターです。


 記録を読んでみると、子どもたちの生き生きとした話し合いの様子が分かります。
子どもたちの声を紹介します。長い話し合いのごく一部で、話の順序は少し変えています。

 <なぜ、そんな話し方をするのか? と言われたら>

初めて参加した一人が、「なんでそんな話し方なの?」と聞かれたとき、「ずっとこういう話し方なんだ」と言った。相手は、納得してくれたみたいだったけど、また同じような質問があったときはどうしようかと、みんなに話題を提供しました。
 「じゃあ、みんなで対策を考えよう」複数回参加している子の呼びかけで、参加しているひとりひとりが、自分の経験や、経験してないけれど考えたことなど、次々に発言が続きました。ロールプレイが始まりました。

・なんでそんな話し方なの?と聞かれたとき、話題を変えるようにしている。
・質問されたら、「あなたはどう思う?」と聞き返して、さらに聞かれたら、「分からない」と言う。
・なぜかを説明できないんだから、「分からない」でいいんじゃないか。
・研究の結果を勉強して、「○○先生が研究したけど、無理だったんです」と言ったらいいんじゃないか。きっと説得力があると思う。
・「分からない。僕に聞いても分からない」と言う。相手が聞くことを諦めてくれるように言う。
・「じゃあ、あなたが研究して」と言ってみようか。
・「僕はこんなふうにつまるけれど、みんなに一生懸命話してる。、こうなるから、仲良くして下さい」と言ってみようか。
・世界中で、研究してるけど、分からないらしいよ。
・いろいろあるの。子どもの事情。
・こんなしゃべり方なんや。生まれつき。ごめんな。(アハハハと笑う)

 <どもる自分のことを説明するときは>

・吃音を説明するとき、障害という病名みたいなことばになってる感じだから、どう説明したらいいか困っている。
・吃音っていっても分かってくれない。
・このしゃべり方、このオレの話し方、それが吃音だって言えば、自分で説明してないけど、分かるかも。
・「こういうしゃべり方だから、分かって」と言ったらいいんじゃないとお母さんが言った。
・このサマーキャンプではないキャンプに参加したとき、「早く言って」と言われた。この人たちとはもう二度と会わないのだから、丁寧に説明する必要はないと思った。重要な人物とそうではない軽い人物と、説明することばは違っていいと思う。使い捨てみたいなことば、ないかな。
・全校生徒の前で、自分の吃音のことを話したサマキャン卒業生がいたけど、その人の真似をして、中学校でやってみようかと思ってる。ひとまとめに言っておいたら楽かな。

 <子どもたちのレジリエンス>

・自己紹介でどもったら、いろいろ言われた。いやだったけど、後で、「大変なんやな」と言われた。「病気みたい、なんや」と言ったら「大変やな」と言ってもらって、うれしかった。
・クラス替えがあるということは、自分のことを知ってる人が増えるということ。だから、いいことなんだ。
・1年生のとき、からかわれたことがあってまねされて嫌な気持ちになった。でも、今になってみたら、そのことも大したことないなあと思えるようになった。
・自分の名前の初めの音が言えなくてごまかした。その子は、僕の吃音のことを知ってる子だったんだけど、誤解されたみたい。ごまかすのは、逆効果なんだと思った。
・自分のことを自分でクラスのみんなに言えた。去年はできなかったけど、僕には成長する力があったんだ。その元は、みんなからの励ましと、こうしたいという自分の願望があったからだと思う。
・まねされて嫌だったけど、先生が注意してくれた収まった。まねした子は髪の毛がない子だったんだけど、先生は「それと同じだよ」と言っていた。収まったけど、なんか…
・一緒にしてもいいところと、してほしくないところとがある。そのとき、なんか嫌だったんだよね。気持ちの部分は一緒かもしれないけど。
・音読のとき、先生がパスしてもいいと言ってくれる。でも、読み方が分からないと思われるのは嫌だから、読んで、すごくどもったけど、よかった。

 <最後に感想を>

・いっぱい話せたし、聞けたし、それぞれの学校の事情も分かってよかった。
・去年のサマーキャンプ後のことが話せてすっきりした。こういう考え方もあるのかと知ることができてよかった。僕は、「病気」とかは使わないけれど、そういうふうな考え方もあるんだと分かってよかった。
・どもるとき、いろんな方法があって、みんながんばっていると思った。
・自分の将来のこと、みんなと考えることができてよかった。
・自分と違う人の意見を聞くことができてよかった。
・みんなの話を聞いて、吃音についてどう対処していったらいいか、自信がついた。
・みんながそれぞれ努力しているのが分かってよかった。自分の意見も聞いてもらえてよかった。みんな、いい5、6年生になったなって思う。

 <ファシリテーターからも一言>

・自分の考えをしっかり持っていてみんなすごい。
・みんな前向きだし、嫌なこともあるけれど、それをちゃんと自分の力で乗り越えているのがすごいと思った。
・積極的に話し合いを盛り上げたり、話を聞いたり、ほんとにいい場だったと思う。