神戸相談会

 毎年4月ごろに開かれている神戸での吃音講演・相談会が、6月28日開かれました。8月1日、2日に東京で開かれる、「第4回 親・教師・言語聴覚士のための吃音講習会」のテーマが「子どものレジリエンスを育てる」で、筑波大学石隈利紀副学長を講師に開かれますが、その準備のために、レジリエンスに関する20冊以上の書籍に目を通してきました。

 レジリエンスを知れば知るほど、僕がこれまでの「吃音と共に生きる」の主張の説明に、ぴったりくるものだと思いました。1965年、どもりを治すために1か月通った東京正生学院で感じた「どもる人の悩み、考え方、人生の生き方の大きな個人差」。その後、吃音は治らない、治せないとして、この個人差に注目しようと言い続けてきたことが、リジリエンスの概念で説明が、見事に付きます。

 交流分析、論理療法、認知行動療法、アサーション、アドラー心理学、当事者研究、ナラティヴアプローチと吃音に役立つものとして学び続けて来たことが、レジリエンスを育てることになっていたのだと確信したとき、よく、まあ、「吃音治すことにこだわらない、吃音とのつきあい方」を考え続けて、さまざまな分野から学んで来たことが、レジリエンスの概念として結びついてことに、大きな喜びを感じました。

 45年ほど、考え、どう説明がつくのかと学び続けて来たことが、今ここに、説明する概念として「レジリエンス」を得たことは、やっと巡り会えたかとの、喜びと、ため息が出る感じです。

 いろんな困難、危機に直面しながら、ある人はそれに飲み込まれ、不本意な人生を余儀なくされる。一方で、悩みながら、困難に直面しながら、サバイバルして生きている。社会・心理的存在の人間の歴史として、実際にこのようなことは、歴史的に証明されているのに、なぜ、今まで、精神医学や、心理学、教育の分野で、これを声明する言語をもたなかったのかと、ため息がでるのです。

 1954年、ハワイのカウアイ島でから研究が始まり
 1982年、「弱き者されどうち負けされざる者−レジリエントな子どもたちと青年たちの長期追跡研究」
 1987年のレジリエンスの基本文献である、「心理社会的レジリエンスと保護のメカニズム」
 2013年、学会誌「レジリエンス」創刊 (仁平義明 作成年表)

 いまやっと、注目され始めたことに、ため息よりは、喜びを強く感じなければならないと思いました。国立特別支援教育研究所、大阪吃音教室につついて、神戸の相談会では、これまで質問から入る講演形式をやめて、90分ほど僕が一方的に「レジリエンス」について話しました。

 話しながら、これまでの僕の人生を振り返り、大勢の子どもやどもる人の人生、体験を紹介しながら、「吃音と共に生きる」を気持ちよく話せ、聞いた人たちも、よく理解できたと言ってくれました。ますます、レジリエンスと吃音との関係に自信を深めました。今日はとりあえずこのへんで。

日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2015/07/01