毎年、国立特別支援教育研究所で一日吃音の講義をしています。もう25年ほどにはなるのでしょうか。僕のような、ある意味極端な「吃音治す努力を否定」する考えの人間に、話す機会を与えて下さることに、とても感謝しているのです。否定するだけでなく、吃音を治す努力をする変わりの、努力すべきことをきっちりと提案しているからでしょう。100年以上も吃音を治す努力が世界的に失敗してきている現状で、僕の治す努力より、もっとすべき努力がたくさんあるとの主張が、僕としては、ますます重要になってくると考えています。
全国から集まった、ことばの教室などの先生のみなさんも、僕の思いをしっかりと受け止めてくださいました。大学や、言語聴覚士の専門学校の時もそうですが、必ず受講生のみなさんの質問を受けることから講演や、講義を始めます。一方的に僕の思いを伝え、聞きたいことがきけないことを避けるためです。今回も、グループに分かれて、吃音についての質問を考えてもらいました。そのひとつひとつに答えていくのですが、この時間が一番好きです。バラウティーに富んだ質問が出されると、バラエティーに富んだ話になります。結局午前中の90分の2コマが質問に対する僕の答えで終始しました。
さすがに昼からは、僕の話したい「レジリエンス」について話そうとして、時間が残ったらまた質問に答えるので、とりあえず、今、どうしても聞きたい質問だけにして欲しいと講義を再開したのですが、いくつもの質問に答えることになり、一緒に見る予定のビデオをみる時間がとれませんでした。それでも、やはり僕は、この質問に答える時間が大好きです。今回は特に、一般的なことだけでなく、自分が指導している子どものことや、保護者のことの具体的に質問が出されました。
その中で、僕の主張がみなさんに伝わったという確かな実感がありました。
この写真と一緒に次のメッセージはうれしいことでした。
先日は,私たちの研修のために遠方よりおいでいただきましてありがとうございました。
また,吃音やご自身についての質問に,1つ1つ丁寧にお答えいただきましてありがとうございました。
あの日はお話の内容だけでなく,お人柄もあり,みんな弱い自分をさらけ出せた気がしました。笑いあり,涙ありで今も感動の余韻が残っています。
百万石での津軽海峡冬景色もことばに来ている子どもと歌ってみたいと思います。
「あなたはあなたのままでいい あなたはひとりではない あなたには力がある」
このお言葉を胸に,子どもと一緒に悩みながら成長していきたいと思います。
レジリエンスで頑張ります。(担当している子どもに早く会いたくなりました。)

日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2015/6/28