子どもたちのどもりカルタ

最後に、栃木県・千葉県・鹿児島県の子どもたちが作ったどもりカルタの読み札が紹介されました。「吃音ワークブック」を作った<吃音を生きる子どもに同行する教師の会>のことばの教室に通う子どもたちが作ったものだです。大阪吃音教室の「どもりカルタ」の講座に合わせて、作ってくれました。作りながら、大阪吃音教室に参加する大人のどもる人たちが、このカルタを見てどう思うだろうか、ぜひ感想を聞かせてほしいと言っていていましたので、全作品をよみあげ、どれがおもしろかったか、投票することにしました。
 子どもたちの作品で、大人の僕たちに人気があったものを紹介します。

・うれしいな りかいしてくれて ありがとう (小学校3年生)
・神様が ぼくをどもる人に選んだよ (小学校1年生)
・けっこんしても ぼくの奥さんはきっと 気にしない(小学校1年生)
・「さっさと言えよ」 言われるほどに 出なくなる(小学校1年生)
・ずるいんだ どもらずしゃべる おとうとが (小学校3年生)
・なんとしても どもりをぜったい なおしたい そういう時も ありました 
(小学校6年生)
・ねえきいて! ぼくの言葉でしゃべるから (小学校3年生)
・むずかしい 漢字で 読めないわけじゃない (小学校1年生)
・ロシアでも ブラジルでも ハワイでも どもる人はきっといる (小学校1年生)

 子どもたちの作った読み札を見て、これ、小学生が作ったんと驚くものもありました。「うん、そうそう」とうなずくもの、「へえーっ、そんなことを考えてるの」と思わずつっこみたくなるもの、「さすが子どもたちがつくったものだ!」と笑いを誘うもの、子どもたちの豊かな発想に、心が和みました。みんなの感想を紹介します。

・子どもらしく、表現が素直。素直にことばを並べている。
・自分が小学生の頃には、こんなふうに表現することはできなかった。
・この子たちは、吃音に困ったり悩んだりした経験を通して、自分を表現する力をつけたのだと思う。
・自分たちのことをちゃんと分かってくれる大人がいると思うから、こんなカルタを作って自分のことを表現できるのだと思う。

 どもりカルタを毎回担当している担当者の感想を紹介します。

 遊び感覚で始めた〈どもりカルタ〉がこんなに広がりと深まりを見せたことに驚いています。どもることには、それだけの力が、エネルギーがあるということでしょう。共感し、新しい発見があり、ユーモアに富んでいる〈どもりカルタ〉がこれから、吃音を生きていくどもるこどもたちやどもる私たちの強い味方になってくれることを期待しています。
 今年で9回目だったと後で聞き、よく続いてきたなあと思います。読み札を作っているときのグループでの活動は、ナラティヴそのものです。ひとつのことばの奥に、背景にあるその人なりの語りに耳を傾ける時間は、味わいのあるいい時間でした。ある人の語りに他の人の語りが重なり合って、深みを増していたように思います。
また、今回、全国のことばの教室に通う子どもたちの作品を見せてもらい、刺激を受けました。子どもたちは、どもる大人である私たちの生き方を見ています。大人っていいなあ、大人になるっていいなあ、子どもたちがそんなふうに思ってくれるような大人でありたいものです。
 来年は、10回目。皆さん、一緒に、すてきなどもりカルタを作ってみませんか。

  吃音を生きる子どもに同行する教師の会では、全国の子どもたちの読み札を集め、それをインターネットで投票し選んだ読み札に、どもる子どもの保護者が絵札を書いた「学習・どもりカルタ」を制作しました。今、全国のことばの教室で使われ、すばらしい実践が続いています。

 『学習どもりカルタ』(解説書つき) 1200円 (送料込み)
 郵便振替でご送金いただければお送りします。口座番号 00970−1−314142 加入者名 日本吃音臨床研究会
 通信欄に「どもりカルタ」希望とお書き下さい。

日本吃音臨床研究会 伊藤伸二2015/02/12