口々に「障害ではない」と言った子どもたち

 この秋の、静岡、岡山、島根、群馬で吃音キャンプの報告です。
 この中のひとつのキャンプで、小学6年生、中学生、高校生が参加したグループの話し合いです。90分ほどの時間設定でしたが、話がとても弾み、たのしいものでした。

 小学6年生の男の子が「どもりは障害ですか?」とみんなに質問しました。すると、口々に「障害ではない」と発言し、なぜならと理由も話しました。
 
 「どんなにどもっても、コミュニケーションはできるのだから障害じゃない」
 「言いたいことは、どもって言えるから障害じゃない」

 障害のある人への否定的な感情ではなく、自分自身の今の生活を押さえた上で、どもりながら、時に苦労しながらも、この子どもたちは自分なりに精一杯生きているという自信があるのでしょう。
 吃音は障害でなければ何なのかと話し合いは進んで行きました。「病気」「個性」など、考えられることばを出して、結局「はなしことばの特徴」に落ち着きました。
 ひとしきり「障害」について考えた後、自分が就きたい仕事をひとりひとり話し始めました。

 21歳まで深刻に悩んでいた僕は、将来の仕事などとても考えられませんでした。それが、ひとり一人が現実的な仕事観をもち、将来への楽天的な展望をもっていることに驚きました。静岡、岡山、島根、群馬のことばの教室の先生たちとのつきあいは長く、それぞれのことばの教室が、「吃音を治す・改善する」にこだわらない吃音とのつきあい方を一緒に考えているからでしょう。そして、吃音キャンプに参加をすることで、さらに吃音について向き合い、話し合うチャンスがあるからでしょう。いつも、僕の子ども時代を振り返ると、キャンプに来ているこどもたちは、僕にとって、まぶしい存在です。これらのキャンプに参加する度に、吃音教育の成果を考えます。

 子どもたちと、吃音について語り合う、僕にとって幸せな時間です。

 日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2014/12/19