第20回吃音ショートコース

 強い大型台風が日本に直撃。開催が危ぶまれた中で、無事に終えることができました。しかし、沖縄から参加予定の二人は、飛行機が飛ばずに、参加出来ませんでした。「とても残念だ」との電話が会場にかかってきました。台風がきたものの、少しだけ時間がずれたことは幸いでした。最終日には近畿地方に来ることが分かったいたので、スケジュールを大幅に変更しました。

 いつものなら出会いの広場で幕開けし、その日の夜は「発表の広場」です。どもる人、どもる子どもの親、ことばの教室の教師、言語聴覚士がそれぞれの立場で、体験や実践を語ります。そして最後にことば文学賞の作品朗読と、授賞式です。毎回、吃音ショートコースはテーマが違い、さまざまな講師から学んできたのですが、この「発表の広場」は変わりません。人の人生に、思いや,考え、実践にふれるとてもいい時間で、僕の大好きな時間です。

 今回は台風の影響で、最終日列車がストップする可能性があり、大切な「発表の広場」がなくなる子とを覚悟で、テーマである「ナラティヴ・アプローチ」に集中することにしました。ニュージーランドからこの日のために、日程を組んで下さった国重浩一さんのプログラムは絶対に省きたくなかったからです。最終日はいつも、講師の方と僕の3時間の対談です。これははずせません。なので、2日目で対談まですべて、ナラティヴ・アプローチに関係することを集中しました。ナラティヴ・アプローチ的な出会いの広場から、国重さんにお願いしました。

 最終日に振り替えた「発表の広場」の2時間以外の、全てのプログラムを、国重さんにお任せしました。
 20回の吃音ショートコースの歴史の中で、こんなことは初めてです。国重さんにお礼のメールを書きました。今回の吃音ショートコースの雰囲気を伝えているとおもいますので、紹介します。

  国重浩一様

大変にお疲れになったことでしょう。その後のスケジュール、もう台風の影響から離れて、順調にこなされていることと推察しています。他ではめったにない、超ハードなワークシヨップに事前の打ち合わせから、おつき合い下さり、誠にありがとうございました。20回の歴史の中で、すべてのプログラムをお任せできたのは初めてです。
とても安心して、全てをゆだねることができました。そして、参加のみんなも安心してもこの流れに喜んでいました。

 この信頼感、安心感、安定感は、東京でお会いしたときの第一印象、その後の私たちへの誠実な関わり方によるものです。そして、人間へのまなざしや、思想・哲学が共通することが多いとの確信でした。私は、とても気持ちよく、とても楽しく3日間過ごさせていただきました。私と同じような価値観を共有する、どもる本人、ことばの教室の教員、言語聴覚士である、参加者の満足した発言や,笑顔、態度から、私と同じような経験をしたのだと、とても満足で、うれしいことでした。

 いつものなら、最終セッションで必ずひとりひとりが、3日間を振り返り、考えたこと、感じたことを話します。その時間は、みんなの経験したことを丁寧に分かち合う、大切で、私の大好きな時間なのですが、今回は台風の影響でできませんでした。感想を書いて、提出してもらう時間もありませんでした。なので、参加者全員は難しいですが、感想を寄せられたものは後日お送りします。

 私は、ずっと技法ではなく、思想・哲学にこだわってきました。これにはこだわりつつも、「布教」にはわかりやすさ、シンプル、技法も必要です。今後は、それらを考えつつ、「どもりを否定するな」を広めて行きたいと思います。

 どうか、私たちの、孤立はしていても、孤独でない、いい仲間への支援をよろしくお願いします。厚かましく、いろいろとお願いすることが多くなると予感しています。できる範囲で、おつき合い下さいますよう、心からお願いします。お疲れでしょうが、その後のお仕事が順調にすすむことをお祈りします。

心から、心から感謝しています。ありがとうございました。    伊藤伸二

 日本吃音臨床研究会 伊藤伸二 2014/10/15